9割が活用、でも「判断」は5%──経団連レポートに見るHR×AIの境界線
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9割が活用、でも「判断」は5%──経団連レポートに見るHR×AIの境界線

Branding, 2026.05.10 By 中村 尚人

経団連が2026年4月に公表した「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」を読みました。会員企業75社のうち、9割超が何らかの形でAIを活用している――。ここまではニュースで目にした方も多いかもしれません。

けれど報告書を一枚めくると、別の数字が見えてきます。同じ「HR領域」のなかでも、評価や報酬の決定といった”判断”のAIに踏み込んでいる企業はぐっと少ない。OECDの国際比較では、日本で評価・報酬決定にアルゴリズムを使っている割合は5%にとどまっています。

9割が踏み出していて、5%しか踏み込んでいない――この境界線の上で、私たちはいま何を考えればよいのでしょうか。中堅・中小の採用担当の方と一緒に、レポートの中身を整理してみたいと思います。

9割超──HR×AIは”特別なこと”ではなくなった

KEY METRIC
93%
9割超が活用
何らかの形でAIを活用している企業の比率
経団連の会員企業75社への調査。「複数の業務プロセスで広く活用」が46%、「一部部署・業務に限定」24%、「生成AIツール利用を会社として許可」23%。”使うかどうか”の議論はもう終わっている、というのが報告書のトーンです。

大企業中心の調査ではあるものの、これだけの母集団で9割超という数字は、HR領域でも”AIを使っているかどうか”を問う段階は過ぎたことを示しています。これからの問いは、どの業務に、どこまで任せるか。それを社内でどう設計するか。中堅・中小だからといって、議論のテーマ自体は変わらない気がしています。

領域別に見ると、進んでいる場所と踏み込んでいない場所がある

IMPACT MAP
採用33%
労務管理29%
エンゲージメントサーベイ28%
人材育成27%
人材配置17%
人事評価17%
報酬7%

トップに立つのが「採用」というのは少し意外かもしれません。応募者のスクリーニング(15社)、面接サポート(13社)、求人票作成(6社)など、「準備」や「下処理」のところからAIが入っているのが特徴です。労務管理は労務相談の一次対応をチャットボットで担うパターンが中心で、こちらも”質問に答える”レベルの活用が多い印象です。

一方で、「人材配置」「人事評価」と進むほど数字は下がり、「報酬」までいくと7%。“人を判断する”領域に近づくほどAIは慎重に扱われている──そんな緩やかなグラデーションが見えてきます。

なぜ「判断」のAIは広がりきらないのか?

FAQ
Q
評価や報酬決定でAIを使う企業はなぜ少ないのですか?
A
日本ではジョブ型雇用の蓄積が浅く、評価や報酬を決めるためのデータ基盤が整っていない企業が多いことが背景にあるとされています。OECDの2025年調査では、労働者の報酬決定にアルゴリズム管理ツールを使っている割合は米国83%、EU13%、日本5%。差はかなり大きいです。
Q
判断もAIに任せる方向に進むべきですか?
A
経団連は報告書で「AIは意思決定のサポート機能」と明確に位置づけています。①入力設計を人が行う → ②AIが処理する → ③最終的な意思決定は人が行う、という3ステップを原則として示しており、この姿勢は中小企業にもそのまま参考にできそうです。
Q
推進体制はどのように整えればよいですか?
A
75社のうちCAIO等の役員ポジションを置いているのが35%、部長クラスを置いているのが20%。合計55%が何らかの推進担当を設置していますが、残り45%は未設置です。「誰が責任をもってAIを社内に広げるか」を最初に決めるところから始める企業も多そうです。

数字を眺めていて感じたのは、「AIを入れるか入れないか」より、「どこからは人が判断するか」を言語化する作業がいまの肝なのかもしれない、ということです。9割と5%のあいだに線を引いているのは、技術ではなく、私たちが何を”人の仕事”だと思っているか、なのかもしれません。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

採用領域でのAI活用が一番進んでいた、という結果は、わたしたちCoachersのような小さなチームから見ても腑に落ちる気がしています。求人票のたたき台、応募者のスクリーニング、面接の議事録──「下処理」の領域は、AIが入ることで担当者の時間と気力に余白が生まれるところでもあります。

一方で、応募者の方からすると「自分はAIに評価されるのか、人に見てもらえるのか」という気持ちは、想像以上に大きいようにも感じます。AIが入っている前提のうえで、HRブランディングとして「最終的な判断は人がしている」「AIは下処理に使っている」を、応募者に伝わるかたちで設計することが、これからの選ばれる会社の条件になっていきそうです。

「AIを入れるかどうか」ではなく「どこにAIを入れて、どこは人が向き合うか」を、自分たちの言葉で語れる会社。──そういう会社を、一緒につくっていきたいと感じています。

今日からできる、3つのアクション

ACTIONS
自社のHR業務を「下処理」「サポート」「判断」の3層に分けてみる
求人票作成・スクリーニング・要約は下処理。配置案や面接の論点出しはサポート。最終的な合否や評価は判断。3層に分けるだけで、AIに任せられる範囲がはっきり見えてきます。
「人 → AI → 人」の3ステップを、採用フローに当てはめて言語化する
入力(募集設計・要件定義)は人、処理(下書き・候補抽出)はAI、最終判断は人。経団連が示している原則は、規模に関係なく持ち込みやすい考え方です。
「AIをどこに使い、どこは人が見るか」を応募者に伝わる言葉にしておく
採用サイトのFAQや募集ページに、AI活用範囲と人が判断する範囲を一文添えるだけでも、応募者の安心感は変わります。透明性そのものがHRブランディングになっていく時代です。
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採用活動チェックシート
5領域 × 25問で、採用の盲点を5分で可視化。中小企業の人事担当者向けに、設計/集客/サイト/選考/定着の5カテゴリでまとめた自己診断シートです。AI活用の前段階として、いまの採用フローを”見える化”するところから始めてみませんか。わかる質問はスキップOK。気軽にどうぞ。
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