30代の “組織資源” は20代より低い──1万人調査が映す中間層の孤立と採用への影響
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30代の “組織資源” は20代より低い──1万人調査が映す中間層の孤立と採用への影響

Branding, 2026.05.16 By 中村 尚人

「最近、30代の社員と何を話したか思い出せない」――そんな感覚、ありませんか。一番のミドル層なのに、20代ほど手をかけられず、管理職ほど裁量も渡されていない。会社の中で、いちばん”見えにくい層”になっている気がします。

アジャイルHRが発表した第4回1万人エンゲージメント調査では、30代の「会社レベルの資源」スコアが20代より0.44pt低いという結果が出ています。20代より上の世代のほうが、組織からの支えを感じられていない――これは少し意外な数字かもしれません。

採用と定着は地続きです。30代がじわじわ抜けていく会社は、結局そのぶんを中途採用で埋め続けることになります。今日は、わたしたちCoachersも一緒に考えてみたい「中間層の孤立」と、採用ブランディングの結びつきについて整理してみたいと思います。

世代別に見ると、30代が一番”組織からの支え”を感じづらい

COMPARISON
20代以下
会社レベルの資源:2.76
新人〜若手として、研修・OJT・1on1など”会社からの投資”を一番受けやすい層。組織との接点を多く感じられている。
30代
会社レベルの資源:2.32
20代との差は−0.44pt。管理職前で役職・権限・裁量が乏しく、研修対象からも外れがち。”構造的に挟まれた”層。
40代以上(管理職層含む)
権限と接点が回復
役職や経営との距離が近づき、判断する場面や情報量が増える。組織との接続感も30代より戻ってくる傾向。

「会社レベルの資源」とは、研修機会・情報共有・経営との接点・サポート体制など、組織から得られる支援を従業員がどう感じているかを示すスコアです。アジャイルHRと東京大学の共同研究によるエンゲージメントサーベイで、2026年の1万人調査では20代以下=2.76、30代=2.32と、約0.44ptの差が出ました。

20代は新人としての教育投資、40代以上は役職や決裁ラインへの参画と、どちらも会社との”接点”を感じる機会があります。一方で30代は、新人ではないが管理職でもない――いわば会社の真ん中にいるのに、会社との接続が一番細くなる時期。多くの企業で起きがちな構造です。

30代の「成長機会」は、2024年をピークに下がり続けている

TIMELINE
2023年
 
成長機会スコア 2.59
コロナ明けで研修・キャリア面談が一巡し始めたタイミング。
 
2024年
 
成長機会スコア 2.67(ピーク)
人的資本開示の流れで、リスキリング・越境学習などの施策が広がった年。
 
2025年
 
成長機会スコア 2.59(−0.08pt)
人手不足の長期化で、目の前の業務優先・育成は後回しになった企業も。
 
2026年
 
成長機会スコア 2.51(−0.16pt)
2年連続のダウン。”伸びしろがある実感”を持てない30代が増えている可能性。

同じ調査では、30代の「成長機会」スコアの推移も公開されています。2024年の2.67をピークに、2025年=2.59、2026年=2.51と2年連続で下がっています。会社の中で”これから何ができるようになるか”の手触りが、少しずつ薄くなっているように見えます。

30代は、転職市場でも一番需要が高い層です。「いまの会社で次の一歩が見えない」と感じたとき、そのまま転職活動に切り替えるのが一番自然な世代でもあります。結果として、採用担当のもとには30代の中途求人ばかりが積み上がる――そんな状況、心当たりがある方もいるかもしれません。

“いま30代社員の頭の中で起きていること”を想像してみる

PERSONA
M
Mさん(34歳・営業/勤続8年)
中堅層のリアルなペルソナ
数字は安定して出している。後輩の指導も任されている。でも、研修は2年前のリーダー研修以来。1on1は形骸化していて、上司との会話は「進捗どう?」がほとんど。会社の中期計画は読んだけれど、自分の役割がどこにあるのかは正直よく分からない。転職サイトに登録したのは、不満があるからではなく、“今のままで5年後の自分が想像できなかった”からだった。

Mさんのような人は、目に見える形で不満を口にすることが少ない層です。実績もあり、年次も上がっているので、上司から見れば「ちゃんとやってくれている人」。だからこそ、組織からの能動的な働きかけが減っていく。気づいたときには転職エージェントとの面談が入っている――そういう構造です。

採用の現場から見ると、ここでもう一つ大事な視点があります。転職市場に出てきた30代は、まさに同じことを次の会社にも警戒しているということ。「入社しても、また同じように”見えない層”になるのではないか」――この不安に応えられるかどうかが、応募・面談・内定承諾のすべての場面で問われます。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

わたしたちCoachersも、お客様の採用支援をしていて「30代がうまく採れない・続かない」というご相談を本当によくいただきます。多くの場合、原因は給与でも知名度でもなく、“入社後の景色が想像できない”ことにあるように感じています。

採用サイトの情報設計という視点で見ると、若手向けの研修や役員のインタビューはよく載っていても、「30代の社員がいま何をしていて、どこに向かっているか」が抜けている会社は少なくありません。そこを丁寧に言語化することは、定着している30代社員にとっても、自分の位置を確認できるHRブランディングの素材になり得ます。

採用と定着は、別々の活動ではなく、「30代に会社が何を返せるか」を社内外に同時に発信する一つの活動として捉えなおせるかもしれません。一緒に整理してみたいテーマです。

ACTIONS
「30代社員の名前」をホワイトボードに書き出してみる
この半年で、その人と”業務以外の話”をしたのはいつだったか。1on1は形だけになっていないか。書き出すだけで、構造的に放置している層が見えてくることがあります。
 
採用ページに「30代社員」の一日や5年後を載せる
役員と新人の声だけでなく、ど真ん中の中堅社員の日常と展望を可視化する。社内の30代社員が「自分も見られている」と感じる副産物もあるかもしれません。
 
面接で「入社3〜5年後に何ができるか」を一緒に描く時間を取る
条件提示だけで終わらせず、応募者がいまの会社で抱えている”見えなさ”に応える時間に変えてみる。中途の30代候補者の不安に、面接の中で答えるイメージです。
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採用活動チェックシート
5領域 × 25問で、採用の盲点を5分で可視化。中小企業の人事担当者向けに、設計/集客/サイト/選考/定着の5カテゴリでまとめた自己診断シートです。「30代社員のキャリアが見える形になっているか」も含めて、わかる質問はスキップOKで気軽にどうぞ。
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「30代社員のキャリアの絵」、自社の言葉で描けていますか?
採用サイト・求人広告・中途向けの紹介資料――Coachersは、HRブランディングの視点で「中堅層に届くストーリーづくり」を一緒に整理しています。お気軽にご相談ください。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役/ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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