アルムナイ採用4割の時代──「辞めた人」にも魅力的でいられたか
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アルムナイ採用4割の時代──「辞めた人」にも魅力的でいられたか

Branding, 2026.05.27 By 中村 尚人

「一度辞めた人が、また戻ってくる」── 数年前なら少し珍しい話だったかもしれません。それがいま、J:COMが2026年4月からアルムナイ採用制度の本格運用を始め、マツダも2024年末から本格化させるなど、大企業から少しずつ「制度」として広がりはじめています。

矢野経済研究所の調査では、アルムナイ採用の実施経験がある企業は38.8%。市場規模は2024年度の50億円から、2026年度は130億円規模へ伸びると予測されています。

中小企業にとって、いきなり制度化はハードルが高いかもしれません。でも、辞めた人との関係をどう残すかという問いは、いまの採用市場では避けて通れないテーマになってきている気がしています。今日は、その入り口を一緒に考えてみたいと思います。

アルムナイ採用は、もう「一部の大手の話」ではない

KEY DATA
アルムナイ採用 実施経験
38.8%
リファラル採用は50.1%(矢野経済研究所2025)
支援サービス市場規模(2026年度予測)
130億円
2024年度50.7億→2028年度300億予測

数字を並べてみると、アルムナイ採用はもう「一部の大手企業の話題」ではなくなってきていることがわかります。4社に1社以上が経験あり、市場規模は2年で2.7倍。背景には、中途採用市場の競争激化と「知っている人を採りたい」という企業側の現実があると感じています。

ただ、これは「辞めた人を呼び戻せば、人が足りる」というシンプルな話ではないですよね。むしろ、退職した後も「この会社、悪くなかったな」と思ってもらえているかどうか──そこが問われている気がしています。

J:COMもマツダも──「出戻り」を制度化する流れ

TIMELINE
2024.12
 
マツダがアルムナイ採用を本格開始
退職者の再雇用を制度として整え、外部経験を還元する流れを明示。
 
2025.01
 
市場規模が2年で2.7倍に
矢野経済研究所が「リファラル・アルムナイ採用支援サービス」の急成長を発表。
 
2026.04
 
J:COMがアルムナイ採用制度を新設、本格運用開始
家庭事由対象の「ウェルカムバック制度」とは別建てで、外部経験者の即戦力獲得を明確化。

こうやって並べてみると、ここ1〜2年で「退職者は終わったご縁」という前提が静かに崩れてきているのが見えてきます。マツダもJ:COMも、既存の家庭事由による復職制度とは別に、外部経験を積んだ人を改めて迎える枠を設けているのが印象的でした。

一方で、中小企業の人事担当者の方からは「制度をつくるほどの規模はないし、辞めた人とどう連絡を取ればいいのかもわからない」という声もよく聞きます。私たちCoachersも、自社の元メンバーと今でも食事をする機会がありますが、それを「制度」と呼ぶには遠い距離感です。今日のテーマは、そのあたりにも触れてみたいと思います。

「辞めた人にも、魅力的でいられたか?」── HRブランディングからの問い直し

退職により業務・経営への影響が最も大きい属性は、勤続5年以上の中堅社員。
— マイナビ「中途採用状況調査2026年版」

この結果を見て、はっとしました。一番痛いのは新人離職ではなくて、「中堅が抜けたあと」なんですよね。そして、その中堅層こそが、数年後にアルムナイ候補になりうる人たちでもあります。

採用ブランディングというと、どうしても「これから入る人にどう見られるか」に意識が向きがちです。でも本当は、「辞めていく人にどう見送られるか」も、同じくらい大事な接点なのかもしれません。退職時に冷たく送り出した相手は、たぶん戻ってきません。逆に、辞めるときに「いい会社だったな」と思ってもらえたかどうかが、3年後・5年後の応募に効いてくる気がしています。

中小企業が始めるなら、いきなり制度化より「関係を切らない」4ステップ

STAGE FLOW
STAGE 1退職する瞬間の対話を変える
退職面談を「引き止め」ではなく「お礼と棚卸し」の場に。退職理由を責めず、本人のキャリアを応援するスタンスを伝える。最後の1on1の質が、その後の関係を左右します。
 
STAGE 2卒業生との「ゆるい接点」を残す
いきなりアルムナイ会を企画しなくてOK。SNSでつながっておく、年1回ニュースレターを送る、社内イベントに招くなど、月1時間以内でできる範囲から始めます。
 
STAGE 3採用サイトに「再応募の窓口」を明示する
「過去に当社で働いていた方へ」というメッセージを採用サイトの片隅に置くだけでも、応募障壁はぐっと下がります。専用フォームでなくても、通常エントリーに区分を一つ足す程度から。
 
STAGE 4選考フロー・処遇ルールを整える
アルムナイからの応募が増えてきたら、初めて「制度」を検討。書類選考の簡略化、前職在籍年数の扱い、給与レンジの基準などを、不公平感が出ないようルール化します。

最初から「アルムナイ制度をつくる」と気負わなくても大丈夫だと思います。STAGE 1〜3は、明日からでも始められる小さな所作の積み重ねです。制度より先に、「関係を切らない」という意思決定が要るだけ。そこから自然に応募が増えてきて、ようやくSTAGE 4の制度化が現実味を帯びてくる──そんな順序が、中小企業には合っているのかもしれません。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

アルムナイ採用が「市場規模300億円へ」と言われる流れの中で、わたしたちが一番気になっているのは、入口の派手さではなくて、退職時の小さな所作です。最後に交わした言葉、最後に渡した書類、最後に送った一言。そのひとつひとつが、3年後・5年後の応募率を静かに決めている気がしています。

HRブランディングは、これから入る人にどう見えるかだけでなく、辞めていく人にどう映ったかも含めて積み上がっていくものだと感じます。たとえば採用サイトの片隅に「過去に当社で働いていた方へ」という一文を置くだけでも、見えない発信になります。中小企業ほど、退職者の口コミの影響は大きいと感じる場面もあります。

わたしたちCoachersも、辞めたメンバーと今でも食事をしたり、外から仕事を一緒にしたりすることがあります。それが「制度」と呼べるほど整っているわけではないけれど、関係を切らないという姿勢だけは大事にしてきました。皆さんの会社では、退職した方とどんな距離感を保たれていますか? その距離感が、たぶん、いちばんのアルムナイ採用の土台になっていく気がしています。

ACTIONS
退職面談の「最後の30分」を見直してみる
引き止めや事務手続きで終わらせず、棚卸しと感謝を伝える時間に。次のキャリアを応援する一言があるかどうかが、3年後の応募率を変えていく気がします。
 
採用サイトに「再応募の窓口」を一文だけ置いてみる
「過去に当社で働いていた方へ」というメッセージを、応募導線の片隅に。専用フォームを作らなくても、まずは”歓迎しているという発信”だけで十分かもしれません。
 
直近3年の退職者リストを”ご縁台帳”として眺める
いま誰がどこで働いているか、SNSで近況がわかる人は誰か。年に一度のご挨拶を送れる相手が何人いるか。ここを把握するところから、アルムナイ採用は静かに始まる気がしています。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役/ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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