学歴フィルター44%・SNS調査21.8%──応募者から見た採用選考、3つの問い直し
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学歴フィルター44%・SNS調査21.8%──応募者から見た採用選考、3つの問い直し

Branding, 2026.06.01 By 中村 尚人

「うちの選考、応募者からはどう見えているんだろう」──そう立ち止まる瞬間はあるでしょうか。

連合(日本労働組合総連合会)が2026年5月21日に発表した「就職差別に関する調査2026」では、学歴フィルターを感じた応募者が44.3%、SNSアカウントを実際に調査された経験が21.8%(前年比+11.1pt)と、私たち企業側が思っている以上に「選考は見られている」現実が浮かんできました。

今日は、応募者の本音データを手がかりに、いまの自社の選考設計を一緒に問い直してみたいと思います。

応募者の体験は、思っているより「見られている」

調査は直近3年以内に新卒または中途採用試験を受けた15〜29歳の男女1,000名を対象に、2026年4月10日〜15日にかけて実施されました。最初に押さえておきたいのは、応募者側から見た4つの数字です。

KEY DATA
学歴フィルターを感じた
44.3%
前年比 +3.9pt
男女差別を感じた
36%
男性は +7.3pt 上昇
SNSアカウントを実際に調査された
21.8%
前年比 +11.1pt
AI面接を受けた経験あり
20.6%
公平性は賛否拮抗

特に上昇幅が大きいのが、SNSアカウント調査経験の+11.1ptと、学歴フィルター実感のなかでも中学校卒・高校卒で+8pt以上という数字。「うちは差別なんてしていない」と思っていても、応募者側のセンサーは年々鋭くなっている、と捉えたほうがよさそうです。

応募書類で「まだ聞いている」項目を可視化する

同調査では、応募書類やエントリーシートで「記入を求められた内容」も聞いています。並べると、性別や本籍地など、本来は適性や能力と関係しない情報が、いまも一定の割合で残っていることが見えてきます。

IMPACT MAP
性別74.2%
 
本籍地・出生地に関すること45.6%
 
家族に関すること38.6%
 
生活環境・家庭環境28.3%
 
労働組合・社会運動に関すること25.1%
 
思想に関すること22.4%
 

前回調査と比べると、住宅状況・支持政党・宗教といった項目で7ポイント以上の上昇が見られたとのこと。古いテンプレートをそのまま使い続けている応募書類があれば、まずは「これは本当に評価に必要な情報か?」という1つの問いをかけてみるところから始められそうです。

「聞いてはいけない」と「聞かれた」のギャップ

面接の場面では、応募者の意識と企業の現場の間にギャップが生まれています。応募者が「面接官に聞かれたくない」と感じる質問と、実際に聞かれた質問──同じテーマでも、その距離はけっこう大きいことが分かりました。

MYTH vs FACT
MYTH
「家族のことを聞くくらい、雑談の延長で構わないだろう」
FACT
応募者の35.1%が「家族に関する質問は聞いてはいけない」と認識。一方で、面接で実際に聞かれた人は36.9%
 
MYTH
「結婚や出産の予定を聞くのは、配属を考えるうえで親切」
FACT
面接で「結婚後・出産後の継続就労希望」を聞かれた人は22.7%、「結婚の予定」は19.9%。性的指向・性自認の確認も15〜16%に達する。
 
MYTH
「他社の選考状況を聞くのは志望度の確認として当然」
FACT
「企業に示す必要がない」と感じる項目のトップが他社の選考状況(35%)。続いて趣味・特技16.1%、顔写真14.7%。
 

注目したいのは、応募者の側も「すべての雑談がNG」と言っているわけではないということ。違和感の本質は、評価との関係性が見えないまま私的領域に踏み込まれることに近いように感じます。だからこそ「なぜこれを聞くのか」を一言添えるだけでも、面談の温度感は変わるかもしれません。

AI選考とSNS調査──新しい論点も生まれている

AI面接を受けた経験は20.6%と、ここ数年で一気に身近になりました。AI選考が公平性につながるかについては、「つながると思う」39.5%に対して「つながらないと思う」20%。賛成派が優勢ですが、「人間性の評価」「アルゴリズムの偏り」への不安は根強く残っています。

SNSアカウント調査については、通知を受けた経験が20.8%(前年比+9.1pt)、実際に調査された経験が21.8%(前年比+11.1pt)と、わずか1年で大きく伸びました。デジタル化の流れの中で、調査の範囲と運用ルールをどう設計し、応募者にどう伝えるかが、新しい採用倫理の論点になってきています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

この調査を読んで一番考えさせられたのは、「差別的かどうか」よりも、「応募者に納得感を残せているか」という問いの方かもしれない、ということでした。学歴フィルターやSNS調査の数字は、企業側が「差別している」と意識しているかどうかとは別の地点で、応募者の体験として積み上がってしまうものだからです。

私たちが日々関わる中小・中堅企業の現場では、面接のトークスクリプトや応募書類のフォーマットが、何年も同じテンプレートのままになっていることが少なくありません。わたしたちCoachersも、求人広告や採用サイトを一緒につくる過程で、改めて「この項目は何のために聞いているんでしたっけ?」と立ち止まる時間を取るようにしています。HRブランディングは、コピーやデザインの前に、こうした選考体験の問い直しから始まっている気がしています。

2026年は、AI選考もSNS調査も「やっていいかどうか」ではなく「どう運用を伝えるか」がブランドの一部になる年。応募者を信用しきれていないように見える運用は、その時点で「選ばれる会社」から少し距離が遠のいてしまうのかもしれません。

今日からできるアクション

ACTIONS
応募書類の項目を「評価に使うか」で棚卸ししてみる
本籍地・家族構成・顔写真など、実際の合否判断に使っていない項目があれば、思い切って削れるか議論してみましょう。残す項目には「なぜ必要か」を1行添えるだけでも、応募者の見え方は変わります。
 
面接官に「聞いてはいけない質問」リストを5分で共有する
家族・本籍地・思想信条・宗教・支持政党・結婚や出産の予定、性的指向や性自認──このあたりを共通のNGリストとして整理しておくと、現場の善意の雑談から事故が起きにくくなります。
 
AI選考・SNS調査の運用方針を、応募者向けに一文で言語化する
「やっているか/いないか」よりも、「何を見ているか」「どう扱うか」を求人広告や採用サイトに短くでも書いておけるかどうか。透明性は、それ自体が選ばれる理由になっていきそうです。
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Coachersは、求人広告制作と採用サイト・動画づくりを軸に、選考体験までを含めたHRブランディングを支援している会社です。応募書類のフォーマットや面接トークの言語化など、地味だけど効く部分から伴走します。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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