転職理由TOPは給与、でも上がるのは4割──中小が勝負する給与以外の3レイヤー
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転職理由TOPは給与、でも上がるのは4割──中小が勝負する給与以外の3レイヤー

Branding, 2026.06.03 By 中村 尚人

マイナビが2026年6月2日に発表した「中途採用・転職 総括レポート2026年版」を眺めていて、ひとつの数字に目が止まりました。転職後に年収が上がった人は39.7%。一方で、転職活動を始めた理由のトップも、入社を決めた理由のトップも「給与」でした。

「給与で動く時代」と言われながら、実際に年収が上がるのは10人中4人だけ。残りの6人は、横ばいか下がった転職を、それでも選んでいることになります。

この6人の背中を押しているのは何なのか。中小企業の採用担当として、わたしたちはここを考え直したい気がしています。今日は、給与以外で勝負するための3つのレイヤーを、一緒に整理してみたいと思います。

2025年の転職市場、動いていたのは誰か

まずは全体像から。総括レポートが示す2025年の中途市場は、企業も求職者もよく動いていました。

KEY DATA
正社員の転職率(20-50代)
7.6%
前年比+0.4pt・過去最高水準
中途採用の印象「厳しかった」
8
採用基準を上げた企業も多い
転職者の平均行動量
応募13.6 / 面接3.8 / 内定2.3
1人の候補者は10社以上を比較している

企業の91.1%が中途採用に積極的な一方、現場の感触は8割が「厳しかった」。求人は増え、求職者も動いているのに採れない、というすれ違いが起きていました。理由のひとつは、企業側が採用基準を前年より厳しくしていること。「量」より「質」を求める動きが、ここにも出ています。

そしてもうひとつ、見ておきたい数字があります。応募13.6・面接3.8・内定2.3。応募から面接に進めるのは約28%、応募から内定までたどり着くのは17%程度。逆から見ると、候補者は1人で平均13社の選考体験を持っており、わたしたちの会社はそのうちのひとつ、ということになります。

転職理由TOPは給与。でも上がるのは4割

転職活動を始めた理由のトップも、入社を決めた理由のトップも「給与」。物価高もあって、給与のウェイトはたしかに上がっています。けれど、結果として年収が上がった人の割合は──。

KEY METRIC
39.7%
年収UP
転職後に年収が上がった割合
前職514.5万円 → 現職533.7万円。平均で19.2万円増ですが、上がったのは10人中4人。残り6人は横ばいまたはダウン。それでも入社を決めている人が、半分以上いることになります。

「給与が高い」は、たしかに口を開いたときに出てくる第一声です。ですが、データの裏側を見ると、年収が上がらなくても入社を決めている人が6割以上。とすると、求職者の言う「給与」は、額面だけを指しているわけではなさそうです。「いまの給与で報われている気がしない」「この先も上がる気がしない」という納得感の話が、混ざっているように見えます。

この読み解きが正しいとすれば、中小企業のわたしたちが取り組めることは増えます。額面で大手と勝負しなくても、「ここで働くと納得できる」と感じてもらう設計はできるかもしれません。次のセクションで、その3つのレイヤーを整理してみます。

給与だけでは届かない──「給与以外」の3レイヤー

「給与以外の魅力」は、抽象的に語ると福利厚生の話で終わってしまいがちです。ここでは、求職者が比較検討の中で実際に重みを置くであろう順番で、3つのレイヤーに分けて考えてみます。

STAGE FLOW
LAYER 1「ここで何をするか」の解像度
職種名と仕事内容を、社内で当たり前に使う言葉ではなく、候補者の視点で書き直してみる。1日の流れ・関わる人・1年後にできるようになっていること、までを具体に。求人広告と採用サイトで、ここがいちばん読まれます。
 
LAYER 2「誰と働くか」の手触り
転職理由の3位は「人間関係」。逆に言えば、人間関係の安心は強い決め手になります。配属先の上司・同僚の顔と一言、チームの雰囲気、意思決定のされ方を、社員インタビューや動画で見せられているかを点検してみる。
 
LAYER 3「この先どうなるか」の見取り図
年収が上がらなくても入社する人が多数派ということは、その先のキャリア・成長・任され方への期待が動機になっています。3年後・5年後のロールモデル、評価がどう昇給につながるか、社内で挑戦できる範囲を、抽象論ではなく事例で見せたいところです。

3つのレイヤーは、どれかひとつだけ強化してもうまく届きません。逆に、3つを同じトーンで揃えられると、求人広告から面接、内定後フォローまで、候補者の中で「ここは整っている会社だ」という一貫した印象になっていきます。「給与以外で勝負する」とは、実はこの一貫性をつくる作業だと感じています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

「給与」は採用面談での最初の話題になりやすく、社内でも「結局は給与」という結論にたどり着きがちです。けれど、転職後に年収が上がる人が4割という数字を見ると、求職者が口にする「給与」と、最終的に天秤にかけているものは、必ずしも同じではないように感じます。

「ここで働くと、何が手に入るのか」を最後まで言語化しきれないまま入稿してしまう経験があります。HRブランディングは、その言語化の作業そのものだと思っています。給与の数字を変えるのは難しくても、「どう書くか」「どう見せるか」は今日から見直せます。

特に中小企業のばあい、3つのレイヤーが揃った瞬間に、候補者の中で他社と並ぶラインに乗ります。最初の一歩は、いま使っている求人原稿を、上の3レイヤーで読み返してみるところからかもしれません。

ACTIONS
いまの求人原稿を「3レイヤー」で読み返してみる
仕事内容/人/キャリアの3つが、それぞれ独立して書かれているか。同じ印象に揃っているかを、付箋でチェックするだけでも気づきがあります。
 
直近の内定承諾者に「決め手」を聞いてみる
本人の言葉で「なぜここを選んだか」を1〜2文残してもらうと、3レイヤーのどこが効いたかが具体的にわかります。次の原稿の素材になります。
 
採用サイトのトップに「Layer 3(その先)」を1枚足す
3年後のロールモデル、社内異動の事例、昇給テーブルなど、入社後の景色が見えるパーツが1つあるだけで、給与以外の比較材料が増えます。
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CoachersはHRブランディングのベンチャーとして、求人広告・採用サイト・採用動画を通じて「ここで働くと何が手に入るか」を一貫して見せる設計を支援しています。3レイヤーで一度棚卸ししてみたい、というお声、お気軽にどうぞ。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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