求人件数190.7%増でも応募は別物──業種で二極化する中途採用の「見せ方」
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求人件数190.7%増でも応募は別物──業種で二極化する中途採用の「見せ方」

Branding, 2026.06.05 By 中村 尚人

「求人を出せば、応募はある程度来る」── そんな感覚で母集団を見ていた時期が、わたしたちにもありました。でも最近、その前提が業種によってずいぶん違うのではないか、と感じる場面が増えてきた気がしています。

マイナビの最新レポートを見ると、求人件数は前年同月比で190.7%も伸びた業種がある一方、応募数の動きはまったく別のリズムで動いていました。「全体で何%」では見えない、業種ごとの温度差です。

求人件数と応募数が、同じ方向に動いていない。これは採用担当として、どう受け止めればいいのでしょうか。今日は数字を一緒に眺めながら、「自社はいまどの土俵にいるのか」を考えてみたいと思います。

「増えた業種」と「集まった業種」がズレている

マイナビ「2026年4月度 正社員の求人件数・応募数推移レポート」によると、求人件数と応募数は、どちらも業種ごとにまったく違う伸び方をしていました。下の比較は、その「ズレ」がよく分かる2つの切り口です。

COMPARISON
求人件数がいちばん伸びた
金融・保険(前年同月比 190.7%)
採りたい企業が急増している領域。ただし「出している会社」も同時に増えるため、候補者の取り合いも激しくなりやすい面があります。
応募数がいちばん伸びた
公的機関・その他(前年同月比 164.6%)
求人を出している側と、応募が集まる側は必ずしも一致しません。「採りたい熱量」と「応募が来る場所」がズレているのが、いまの市場の特徴かもしれません。

直近の動き(前月比)で見ても、「運輸・交通・物流・倉庫」は求人件数が105.7%、応募数が131.9%と、求人より応募の伸びが大きく出ていました。つまり同じ業種でも、月によって「出す側」と「集まる側」のバランスは揺れ続けています。「うちの業種は応募が来にくい」と一括りにする前に、足元の数字を見る価値はありそうです。

前年比で見ると、市場の「温度差」がはっきりする

同じ「採用市場」と一言で言っても、数字を前年と比べると、業種ごとの体感はかなり違ってきます。代表的な3つを並べてみました。

TREND
金融・保険「求人件数」
190.7%
▲ 大幅増
前年同月比
公的機関・その他「応募数」
164.6%
▲ 大幅増
前年同月比
運輸・物流「応募数」
131.9%
▲ 前月比増
前月比

数字の幅を見ていると、「採用がうまくいかない=自社の力不足」と決めつけるのは、少し早いのかもしれない、と感じます。そもそも自社が立っている業種が、いま追い風なのか向かい風なのか。その前提を押さえてから打ち手を考えるだけでも、力の入れどころが変わってくる気がしています。

「件数 × 応募」の4象限で、自社の立ち位置を捉える

業種ごとの具体名はさておき、自社の求人を「求人件数(=競合の出稿量)」と「応募数(=集まりやすさ)」の2軸で置いてみると、いま注力すべきポイントが見えやすくなります。あくまで考え方の枠ですが、一緒に当てはめてみませんか。

MATRIX
競合少 × 応募多い
追い風ゾーン
いま採れているうちに、見極めと定着の設計に投資しておきたい局面。
競合多い × 応募少ない
見せ方が効くゾーン
出稿量で押し負けやすい局面。求人原稿・採用サイトの「伝わり方」で差がつきやすい注目象限。
競合少 × 応募少ない
掘り起こしゾーン
そもそも母集団が薄い局面。手法の追加やターゲットの再定義から検討したいところ。
競合多い × 応募多い
スピード勝負ゾーン
人は動くが取り合いも激しい局面。選考の速さと初回接点の印象が分かれ目に。

もし自社が「見せ方が効くゾーン」にいるとしたら、媒体を増やすより先に、いまの求人原稿が”自社の魅力”をちゃんと言語化できているかを見直すほうが、費用対効果は高いかもしれません。同じ求人枠でも、伝わり方ひとつで応募の集まりは変わってくる── そんな実感があります。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

求人件数と応募数がこれだけ業種でバラつくと、「全体平均」を眺めても自社の打ち手はなかなか見えてきません。大事なのは、自社がどの土俵に立っていて、その土俵では何が効くのかを、まず正しく捉えることだと感じています。

わたしたちCoachersは、これをHRブランディングの問題だと捉えています。応募が集まりにくい局面ほど、「条件」ではなく「この会社で働く意味」が候補者の判断を左右します。求人広告の原稿を一段見直すだけでも、同じ予算で伝わる情報量はずいぶん変わってくるはずです。

市場の風向きは自分たちでは変えられません。でも、「どう見せるか」は今日からでも整えられます。風が向かい風なら、なおさら見せ方で踏ん張る ── そう考えると、できることは案外多い気がしています。

ACTIONS
自社業種の「前年比」を一度確認する
求人件数・応募数の推移レポートで、自社が追い風か向かい風かをまず把握。打ち手の力の入れどころが変わります。
 
4象限で自社の立ち位置を置いてみる
「競合の出稿量 × 応募の集まりやすさ」で整理すると、媒体追加か原稿改善か、優先順位が見えてきます。
 
求人原稿の「働く意味」を1行書き足す
条件面だけでなく、自社ならではの魅力を一文。応募が来にくい局面ほど、この一行が効いてきます。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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