紹介者の金銭目的は11%──「お金で回すリファラル」という誤解を解く
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紹介者の金銭目的は11%──「お金で回すリファラル」という誤解を解く

Branding, 2026.06.06 By 中村 尚人

「うちもリファラル採用を増やしたい。でも、紹介してくれた社員にいくら払えばいいんだろう」——制度設計の話になると、まず報酬額の話から始まること、ありませんか。

ところが、利用企業800社・約60万人の活動データを分析したある調査では、紹介の動機を「ボーナス収入のため」と答えた社員はわずか11%。そして掲載求人の58%には、そもそもインセンティブが設定されていませんでした。

お金で回す仕組みではないとしたら、リファラル採用は何で動いているのでしょうか。今日は「戦わない採用」と呼ばれるこの手法の実態を、データから一緒にほどいてみたいと思います。

「高い報酬を出せば集まる」は、思っているほど当たっていない

MYTH vs FACT
MYTH
紹介報酬を高くするほど、社員はたくさん友人を紹介してくれる。だからリファラル採用はまず報酬額の設計から。
FACT
金銭目的の紹介者は全体の11%。報酬額を上げると母集団は一時的に増えても、「良くない人材」や「見知らぬ人」の紹介が混ざりやすくなり、被紹介者の質はむしろ下がる傾向があると報告されています。
 

調査によると、多くの紹介者が動機として挙げたのは「友人へのホスピタリティ」や「会社への当事者意識・帰属意識」でした。つまり報酬は、紹介という行動を生み出すエンジンではなく、「いま自社が募集している」という事実を社員に思い出してもらうきっかけに近いものなのかもしれません。

ここが、リファラル採用を「お金の話」として設計し始めると、なかなか伸びない理由のひとつだと感じています。高額化すればするほどコストは膨らみ、質は下がる。出発点を少しずらすだけで、見える景色が変わってきそうです。

そもそも、半数以上の求人は「報酬なし」で回っている

KEY METRIC
58%
報酬なし
掲載求人の58%は、紹介インセンティブが未設定
それでもリファラル経由の採用は成立しています。報酬がなくても紹介が生まれるのは、「友人を助けたい」「いい会社だと知ってほしい」という気持ちが先に動くから。お金がなくても回るからこそ、何で回っているのかを見極めることが大切になりそうです。

では、報酬の代わりに何が紹介を後押しするのでしょうか。調査で見えてきたのは、意外にも「人事からの声かけの頻度」でした。週に1回、人事から社員へメール配信をしている企業は、コミュニケーションが月1回未満の企業と比べて、応募獲得数に4.8倍の差が生まれていたといいます。

紹介のきっかけになったコミュニティを見ると、前職の同僚・先輩・後輩が33.3%、ビジネスを通じた知り合いが23.1%、学生時代の友人・知人が22.6%と、特定の人脈に偏っていません。「友人がいないから協力できない」と感じる社員は多いのですが、実際にはどんな社員にも紹介のきっかけは眠っている。それを思い出してもらう接点を、どれだけ用意できるかが分かれ目になりそうです。

報酬以外で「紹介が生まれる」状態をつくる4ステップ

STAGE FLOW
STAGE 1「いま募集している」を定期的に思い出してもらう
月1回のお知らせを週1回に。求人が出たタイミングだけでなく、定期便として「どんな人を探しているか」を軽く流すだけでも、社員の頭の片隅に募集事実が残ります。応募数に4.8倍差がついた要因はここでした。
 
STAGE 2社員が「語れる素材」を渡す
自社の魅力を友人に伝えるのが苦手な社員は37%。人事制度やキャリアパス、事業の方向性、先輩社員の入社理由などを1枚にまとめ、社員が自分で説明しなくても友人に見せられる状態をつくります。
 
STAGE 3報酬は「動機づけ」ではなく「きっかけ」に位置づける
報酬を設けるなら、高額化で釣るのではなく募集の認知を広げる小さな仕掛けとして。金額を上げるより、紹介された人が選考で大切に扱われる体験のほうが、次の紹介を呼びます。
 
STAGE 4紹介者と入社者の声を、また素材に還す
「なぜ紹介したか」「入ってみてどうか」をインタビューし、STAGE 2の素材に組み込みます。リアルな声が次の紹介者の背中を押し、紹介が紹介を生む循環がゆっくり立ち上がっていきます。

どのステップにも共通しているのは、「社員が自社のことを語れるかどうか」という一点です。報酬の設計に時間をかける前に、社員が友人に見せられる自社の情報がそろっているか。ここを整えるだけでも、紹介の生まれやすさは変わってくるように感じています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

リファラル採用が報酬で動いていないという事実は、わたしたちCoachersにとっても示唆的でした。社員が友人に「いい会社だよ」と言えるのは、その人の中に自社の魅力が言語化されているからです。逆に言えば、魅力が社内で共有されていない会社は、いくら報酬を積んでも紹介が生まれにくい、ということかもしれません。

これは、外向きの採用広報と地続きの話だと感じています。「自社の魅力を37%の社員が語れない」という状態は、求人原稿や採用サイトに載せるべき言葉が、まだ社内で見つかっていないサインとも読めます。HRブランディングの視点で見ると、リファラルの素材づくりと採用広報の言語化は、本来ひとつの作業です。

紹介者・入社者の声を集めて素材に還す——というステップは、そのまま採用サイトのコンテンツにもなります。リファラルのために整えた言葉が、他の入口でも効いてくる。どのチャネルから手をつけても採用課題は地続きだと、あらためて感じる調査結果でした。

ACTIONS
「募集中の職種」を月1回でいいので社内に流してみる
まずは頻度から。立派な制度より、思い出してもらう接点の定期化が先。今ある求人をそのまま社内チャットに共有するだけでも一歩です。
 
社員が友人に「見せられる」1枚を用意する
事業・人・制度を簡潔にまとめた資料を1枚。社員が自分で説明しなくても済むようにすると、紹介のハードルが下がります。
 
紹介報酬の額より「紹介された人の体験」を見直す
紹介で来た候補者が丁寧に扱われたか。その体験が次の紹介を呼びます。金額の前に選考フローを点検してみませんか。
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Coachersは、求人広告・採用サイト・紹介資料の制作を通じて、自社の魅力を言語化するお手伝いをしているHRブランディングのチームです。リファラルの素材づくりから採用広報まで、入口を問わず一緒に考えます。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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