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「待遇では勝てない」それでも選ばれる会社がやっていること

Branding, 2026.04.15 By 中村 尚人

“正直、うちは大手みたいに給料も出せないし、福利厚生もそこまで整っていなくて……”——採用のご相談で、そう打ち明けてくださる担当者の方は少なくありません。わたしたちCoachersも6人の小さなチームなので、その気持ちはよく分かる気がします。

待遇で勝負しようとすると、確かに厳しい。ただ、候補者が入社を決めるときに見ているのは、本当に給与や福利厚生だけなのでしょうか。各種の転職者調査を眺めていると、実はそうでもないらしいことが見えてきます。

今日は「待遇では勝てない」と感じている企業こそ考えたい、戦う土俵を変えるという選択肢について、一緒に整理してみたいと思います。

まず、「待遇で勝てない」を認めるところから

採用がうまくいかないときに、真っ先に候補に挙がるのが「給与を上げる」「福利厚生を足す」といった待遇の見直しかもしれません。もちろん大切な視点ではあるのですが、現実には、経営体力や原資の制約で、すぐに手を打てないことも多いと思います。

そして、仮に多少の改善ができても、大手企業やメガベンチャーと同じ土俵で比較されれば、ほとんどの中小企業は勝てません。これは厳しい現実ですが、認めたほうがむしろ戦略が立てやすくなる気がしています。

「待遇が全て」は本当か?

採用の現場で語られる”常識”の中には、一度立ち止まって検証してみたほうがいいものがあります。このテーマもそのひとつ。

MYTH vs FACT
MYTH
候補者は結局、給与と福利厚生で入社を決めている。

FACT
各種調査では、「仕事内容・やりがい」「社風・人」「成長機会」が給与と並ぶ上位要因。給与だけで決める人はむしろ少数派という結果が繰り返し示されています。

MYTH
条件で劣るなら、せめて求人票で”盛って”印象を上げるべき。

FACT
盛った採用は、入社後のギャップによる早期離職に直結しがち。短期の応募数は増えても、中長期のコストは確実に増えます

MYTH
大手と差別化するには、うちの魅力を”全部盛り”で伝えるしかない。

FACT
万人受けを狙うほどメッセージは薄まり、結局給与比較になります。刺さる層に絞って深く伝えるほうが反応は出やすい傾向です。

待遇で負けていても、別の軸で勝っていれば選んでもらえる余地は十分にあるということ。あとは、その「別の軸」を自社がちゃんと持っているか、そしてそれを候補者に伝えられているか、という話になります。

“万人受け”を捨てて、”刺さる相手”に絞るまでの流れ

待遇で勝てない企業がよくやってしまうのが、「みんなに振り向いてもらおう」とする求人です。その結果、メッセージが薄まり、給与比較だけが残ってしまう。そして負ける——というパターンをよく見かけます。

この流れをひっくり返す手順を、4つのステージで整理してみました。

STAGE FLOW
STAGE 1「待遇以外の魅力」を社内で棚卸しする
STAGE 2その魅力が刺さる「候補者像」を定義する
STAGE 3その層に届くチャネル・言葉に絞って発信する
STAGE 4マッチ度の高い母集団で長期的な採用力に

母集団の”数”は減るかもしれません。でも、マッチ度の高い応募が増えれば選考負担も下がり、内定承諾率も上がり、定着率も改善していくというループに入ります。結果的に、採用全体のコストはむしろ下がっていくケースが多い印象です。

“刺さる相手”の具体例

「じゃあ、刺さる相手って誰?」という話になると、やはり具体的な人物像で考えるのが一番早いと感じます。たとえば、こんな方。

PERSONA
M
Mさん(34歳・大手メーカー営業/勤続10年)
大手で消耗している中堅層
給与・福利厚生は満足。ただ、会議と社内調整に時間を取られ、「自分で決めて動かせる仕事」が少ないことに疲れている。年収が下がっても、裁量と意思決定スピードを取り戻したいと考えている。

PERSONA
K
Kさん(29歳・地方出身/首都圏勤務5年)
UIターン・生活重視層
結婚を機に地元に戻ることを検討中。給与より、通勤時間・家族との時間・地元コミュニティとの距離を優先したい。地元に根ざした会社で、じっくり腰を据えて働ける場所を探している。

PERSONA
Y
Yさん(26歳・ITベンチャー2社目/3年目)
成長・挑戦重視の若手
「早くから任せてもらえる」「事業の意思決定に関われる」を最優先。年収よりも、5年後に何が身についているかを重視している。大手の分業体制では得られない幅広い経験を提示できれば、給与が同水準でも強い魅力を感じるタイプ。

こうした方々は、給与や福利厚生が”絶対基準”ではなく、相対的な要素のひとつとして見ています。待遇で勝てなくても、別の軸で確かな価値を提示できれば、選んでもらえる可能性は十分にあります。

Coachersの考察 ─ 勝てない相場ではなく、選ばれる理由を作る

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

わたしたちCoachersも小さなチームなので、大手と条件で並ぶことはできません。それでも、ありがたいことに「Coachersと一緒に働きたい」と言ってくださる方に出会えてきた気がしています。そこで感じているのは、待遇で勝てないなら、”選ばれる理由”を別のところに作るしかないということです。

仕事のやり方、一緒に働く人、関われるお客様、裁量の範囲、意思決定までの距離。大手にはない、小さな会社ならではの価値は必ずあります。問題は、それが候補者に見えているか。言語化できているか。HRブランディングというのは、その「選ばれる理由」を自覚し、言葉にして、伝え続ける取り組みのことではないかと思うのです。

それに、待遇を”盛らない”姿勢も大切かもしれません。見栄を張って採用しても、入社後のギャップで離職につながれば、結局また採用活動に戻ってきてしまう。正直に開示したうえで「それでもここで働きたい」と思ってくれる人を迎えるほうが、長い目で見て採用コストは下がります。短期の数より、中長期のマッチ度。ここを意識するだけで、採用の景色がだいぶ変わってくる気がしています。

今日からできる、無理のない一歩

ACTIONS
STEP 01
「待遇以外の魅力」を棚卸ししてみる
裁量、社風、仕事内容、お客様、経営との距離——自社の「当たり前」の中に、候補者から見ると魅力的なポイントが眠っていることが多いです。

STEP 02
「うちに合う人」の人物像を具体化する
年齢・経験だけでなく、どんな価値観・志向を持った人がフィットするかまで言語化しておくと、求人のメッセージがブレにくくなります。

STEP 03
待遇を”盛らない”勇気を持つ
誇張表現を減らし、正直な現状と、その中で大切にしていることを率直に書く。短期の応募は減っても、入社後のミスマッチは確実に減ります。

STEP 04
“刺さる層”に届くチャネルに絞る
万人受けを狙って大きな媒体に薄く出すより、ターゲットと接点のあるチャネルやリファラル・SNSなどに集中するほうが反応は出やすいです。

まずは”自社の現在地”を一緒に確認してみませんか

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REFERENCES
  • 本記事のデータ・傾向は、マイナビ・doda・リクルート等の各種転職者調査および採用現場でのヒアリング内容を踏まえて編集部で整理したものです。数値は傾向値であり、年次・調査主体によって変動します。具体的な数値・出典を記載する場合は、公開前にご確認ください。

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