「管理職は罰ゲーム」と感じる働き手は56.7%──責任だけ増える構造と採用での伝え方
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「管理職は罰ゲーム」と感じる働き手は56.7%──責任だけ増える構造と採用での伝え方

Branding, 2026.04.23 By 中村 尚人

「次の管理職候補、そろそろ本人に声をかけてみようか」──そう話し合いながら、ふと”受けてくれるだろうか”と迷う瞬間はありませんか。

パーソル総合研究所は、2025〜2026年の人事トレンドワードの一つに「管理職の罰ゲーム化」を選出しました。別の調査では、管理職を「罰ゲーム化している」と感じる層が56.7%にのぼるという数字も出てきています。

この変化は、社内の昇進・配置だけでなく、中途採用の入口──つまり「管理職ポジションをどう伝えるか」にも直結するテーマかもしれません。今日は、忙しい採用担当の皆さんと一緒に、少しだけ立ち止まって考えてみたいと思います。

「管理職の罰ゲーム化」とは何を指しているのか

「管理職は罰ゲーム」「昇進は罰ゲーム」——ここ数年、働く人のあいだで自然に使われるようになった言い方です。冗談めかしていますが、指しているものはかなり具体的だと思います。昇進によって背負うものは確実に増えるのに、見返りとして受け取るものがそれに追いついていない状態。それが罰ゲーム化と呼ばれているものの中身です。

なぜそうなったのか。わたしたちは、次の3つが重なった結果だと考えています。

STRUCTURE / 罰ゲーム化を生む3つの重なり
1. 責任だけが増え、権限は上に残ったまま
部下の育成、労務管理、ハラスメント対応、コンプライアンス。管理職に求められる範囲は広がり続けている一方で、人員や予算の決裁権は上位職に置かれたまま、という会社は少なくありません。責任と権限のずれは、そのまま無力感になります。
2. プレイヤー業務が減らない
人手が足りない現場ほど、管理職になっても自分の担当業務が残ります。マネジメントは「上乗せ」になり、労働時間は伸びる。それでも残業代の対象から外れる立場になると、時間あたりで見た待遇はむしろ下がることさえあります。
3. 見返りが金銭にも成長実感にも変換されない
昇進による手当の増分が、増えた負荷に見合っていない。加えて、専門性を高める道が別に用意されていれば、管理職を選ぶ必然性も薄れます。「昇進=キャリアの前進」という前提そのものが揺らいでいます。

※この3分類は公表統計ではなく、Coachersが採用支援の現場で伺ってきた内容を整理したものです。

大事なのは、これが個人の意欲の問題ではなく、席の設計の問題だということです。「最近の人は管理職になりたがらない」と語られがちですが、同じ人でも、権限と見返りが伴う席なら手を挙げます。管理職の採用がうまくいかないとき、まず見直したいのは候補者の意欲ではなく、用意している席のほうです。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

管理職ポジションの求人票を読む側になってみると、知りたいことははっきりしています。何人を見るのか、予算はいくらまで自分で決められるのか、採用や評価にどこまで関われるのか、そしていま就いている人は何時に帰っているのか。

ところが求人票に並ぶのは「マネジメント業務全般」「メンバーの育成」といった言葉であることが多い。これでは、罰ゲーム側の席なのかどうかが判断できません。決裁できる金額と、直属の人数と、その席の残業実態。この3つを書くだけで、候補者から見た解像度はまったく変わります。書けないとしたら、それ自体が席を整え直すサインなのだと思います。

※採用支援の現場での実感にもとづく描写です。

いま起きている「管理職離れ」の輪郭

KEY METRIC
56.7%
罰ゲーム実感
「管理職=罰ゲーム」と感じる層
エフアンドエムネットが300名を対象に実施した調査結果。半数超が実感しているという数字です。パーソル総合研究所も2025〜2026年の人事トレンドワードに「管理職の罰ゲーム化」を選定しており、社内の昇進だけでなく、中途採用のマネジメント職訴求にも影響を及ぼし始めています。

エフアンドエムネットが300名を対象に実施した調査では、「管理職が”罰ゲーム化”していると感じる」と答えた層が56.7%。昇進忌避や”静かなる退職”と連鎖する現象として報告されています。さらにパーソル総合研究所は、2025〜2026年の人事トレンドワードとして「管理職の罰ゲーム化」を選定し、”責任は重いが権限と裁量は限られている”という構造問題に光を当てています。

この数字は、社内の昇進だけの話ではなさそうです。中途採用でマネジメントポジションを募集しても、「手を挙げてくれる人が思ったより少ない」「年収を上げても応募が増えない」といった声が、わたしたちCoachersの相談現場でも少しずつ増えてきている気がしています。

昔の管理職、いまの管理職──立ち位置はどう変わったか

COMPARISON
BEFORE
かつての管理職像
昇進はキャリアのゴール。部門を代表し、裁量で意思決定できる立場。給与と権威が役割とセットになっていて、「目指したくなる場所」だった。
AFTER
いまの管理職像
プレイングマネージャーが主流。現場業務+マネジメント+DX推進+コンプラ対応まで。権限は限定的、説明責任は増大し、報酬は役割ほどには上がらないケースも。

整理すると、役割は足し算的に増えている一方、権限や報酬の伸びは追いついていない──という構造が浮かび上がります。「昇進=ごほうび」だった頃と比べて、いまの管理職は“おまけのタスクが山積みになった立場”と感じる人が増えても、不思議ではないかもしれません。

この変化は、社内にいる候補者本人だけでなく、外から応募してくださる転職者の目にも同じように映っています。同じ「マネージャー職」というラベルでも、権限・裁量・役割の中身は企業ごとにかなり違うはずで、そこが伝わらないまま募集文だけが流通している状態は、もったいないと感じています。

“罰ゲーム感”はどこから生まれるか──権限×責任で見る4象限

MATRIX
権限 低 × 責任 低
現場メンバー層
業務への集中がしやすい。やりがい設計や成長実感の見せ方が主な論点。
権限 低 × 責任 高
罰ゲームゾーン(いまの中間管理職)
責任が積み上がる一方、裁量は限定。昇進・採用いずれでも”避けたい”と映りやすい象限。
権限 高 × 責任 低
該当は少ないゾーン
理論上は存在するが実務ではレア。役割設計の見直し時に意図的に作るケースも。
権限 高 × 責任 高
経営層・執行役員層
責任は重いが、裁量も大きいのでバランスが取れる。報酬も役割に紐づきやすい。

もし募集中のマネージャー職が「権限 低 × 責任 高」の象限に寄ってしまっているとしたら、候補者の目線では“引き受けるメリットが見えにくいポジション”に映ってしまうかもしれません。逆に、限定的でも良いので”どこまでは自分で決めていい”を言葉にできると、同じ役職でも受け取られ方がずいぶん変わる気がしています。

Coachersが求人原稿や採用サイトを一緒に設計するとき、意外と時間をかけるのがこの「裁量ラインの明文化」パートです。書き手の社内では当たり前すぎて省略されがちな部分ほど、候補者の不安を解く鍵になっている印象があります。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

「管理職のポジションを募集しているのに、応募が伸びない」というご相談を、わたしたちCoachersもよくお伺いします。年収を少し上げても、タイトルを魅力的に言い換えても、反応が変わらない──そんな時、候補者は”役職名”ではなく”役職の中身”を見ているのかもしれない、と感じることがあります。

HRブランディングの観点で言えば、管理職ポジションこそ「責任の重さ」だけでなく「任せる範囲」と「その先にあるやりがい」を言語化する余地が大きい領域です。求人票・採用サイト・紹介資料のどこを見ても”マネジメント全般”としか書かれていないなら、一度ポジションの解像度を上げる機会かもしれません。

今日からできるアクション

ACTIONS
STEP 01
募集中の管理職ポジションを”象限”で棚卸し
権限と責任のバランスを2×2で描いてみる。偏りがあれば、まずそれが課題の地図に。
STEP 02
「裁量ライン」を3行で言語化
何を自分で決められ、何が相談案件か。曖昧さを減らすだけで求人票の説得力が変わります。
STEP 03
現職マネージャーのやりがいを”具体エピソード”で収集
抽象的な魅力ではなく、判断の場面・嬉しかった瞬間を1〜2件ずつ拾い、発信素材に。
STEP 04
面接で”裁量”を一緒に確認する時間をとる
候補者の希望と、実際に渡せる権限の照らし合わせを対話で。入社後のミスマッチ予防にも。
FAQ / よくある質問
Q. 「管理職の罰ゲーム化」とは何ですか?
昇進によって責任と業務量は増えるのに、権限や報酬、成長実感といった見返りが追いついていない状態を指す言い方です。エフアンドエムネット社が300名を対象に行った調査では、管理職を「罰ゲーム」と感じる人が56.7%にのぼりました。
Q. なぜ管理職が罰ゲームと言われるようになったのですか?
大きく3つの要因が重なっています。育成・労務・コンプライアンスなど責任範囲は広がる一方で決裁権は上位職に残っていること、人手不足でプレイヤー業務が減らずマネジメントが上乗せになること、そして増えた負荷に対して手当や成長実感が見合わないことです。
Q. 管理職を採用したいとき、求人票には何を書けばよいですか?
「マネジメント業務全般」といった抽象的な表現ではなく、自分で決裁できる金額の範囲、直属で見る人数、その席に就いている人の実際の働き方の3点を具体的に書くことをおすすめします。候補者が知りたいのは仕事の名前ではなく、その席の実態です。
Q. 管理職になりたい人は本当に減っているのですか?
意欲そのものが失われたというより、条件しだいという見方が現実に近そうです。実際、転職希望者を対象にした調査では、管理職としての中途採用に前向きな人が76.7%にのぼるという結果も出ています。権限と見返りが伴う席であれば、手を挙げる人はいます。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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