「勤務地を選べる」会社が増えている──3社の制度から考える中小の打ち手
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「勤務地を選べる」会社が増えている──3社の制度から考える中小の打ち手

Branding, 2026.05.07 By 中村 尚人

「転勤、ありますか?」──応募者からこの一言が出たとき、どう答えるか。最近、面接の最終盤でこのやり取りが内定承諾を左右する場面が増えてきた気がしています。

2025年10月の改正育児・介護休業法施行を一つの節目に、「働き方を選べる」制度を打ち出す会社の発表が続いています。2026年4月にも複数社が運用を開始しました。

ただ、わたしたちCoachersも「制度を新設するには会社が小さすぎる」という現実は痛いほど分かります。それでも、何かできることはあるはず。同じ目線で一緒に整理してみたいと思います。

背景:法改正で「選べる働き方」がベースラインに

2025年10月に施行された改正育児・介護休業法は、3歳以上・小学校就学前の子を持つ社員に対し、企業が「柔軟な働き方を実現するための措置」を5項目から2つ以上選んで実施することを義務付けました。フレックス、テレワーク、保育施設、養育両立支援休暇、短時間勤務──このうち2つ以上です。

KEY DATA
大手で「柔軟な働き方措置」実施済
77.8%
企業が選ぶべき措置の数
5項目から2つ以上

大手はすでに対応がほぼ標準装備に近い状況。一方で、求職者の側は「制度の有無」よりも「自分のケースで使えるか」を見ています。今回は、勤務地という分かりやすい軸で動いてきた3社の事例を眺めてから、中小企業が今日できることを考えてみます。

「勤務地を選べる」3社の打ち出しを比べてみる

CASES
01
森永乳業(2017年1月)──地域限定正規社員制度を業界に先駆けて導入。育児・介護で転居が困難な社員を主対象に、「事情ベース」で勤務地を限定できる枠組みを整えた、いわば初期世代の取り組み。
02
ダイハツ工業(2020年度)──エリアスタッフ制度を導入。転居を伴う異動がないことを条件に勤務する選択肢を、「働き方の多様化と人材活躍支援」の柱として位置づけた。製造業の中で先行事例。
03
ユアテック(2026年4月)──東北電力グループ。本人希望で勤務範囲を限定する「エリア社員型」と、育児・介護理由で通勤可能事業所を指定する「ライフステージ型」を2類型に分けて整備。「事情ベース」と「希望ベース」を併走させた最新型。

3社を並べてみると、設計の進化が見えてきます。森永乳業のように「事情がある人向け」から始まった制度が、ダイハツでは「働き方の多様化」という前向きな文脈に広がり、ユアテックでは「希望でも事情でも、どちらでも選んでいい」と入口を二つにした。利用しやすさの設計が、年々ていねいになってきている印象を受けます。

中小企業の現実──「制度を作る」の前にできること

ここまで読んで、「うちには無理」と感じる採用担当者の方が多いと思います。実際、6人のCoachersでも同じ感覚です。3社のような制度を整えるには、人事専任者と何ヶ月もの設計期間が必要で、現実的ではない。

ただ、応募者が知りたいのは制度名そのものではない、というのも事実です。むしろ、思い込みのほうが採用機会を狭めているかもしれません。

MYTH vs FACT
MYTH
制度として整えてからじゃないと、応募者には伝えられない。
FACT
「過去にどう個別対応してきたか」を実例で書くだけでも、応募者の不安はぐっと減る。制度名より、エピソードの具体性のほうが届く。
MYTH
小さい会社で柔軟性をうたうと、なんでも頼まれて回らなくなる。
FACT
大手の制度も「対象」「条件」「期間」を明示するのが基本。中小も「どこまで応えられるか」を最初に書けば、ミスマッチは減る。

3社の打ち出しに共通しているのは、「対象者と適用条件をはっきり書いている」点です。ぼかして書くと利用が広がらないし、求職者も逆に不安になります。中小企業がこの真似をするなら、「うちは何に応えられて、何には応えられないか」を一文ずつ書き出すところから始めるのが、結局いちばん近道なのかもしれません。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

3社の事例を並べてみて感じるのは、制度の本質は「使う人がいる」ところまで設計されているか、という点です。森永乳業の事情ベース、ダイハツの多様化、ユアテックの2類型併走。アプローチは違いますが、いずれも「誰がどんなときに使えるか」がはっきりしています。

中小企業がHRブランディングとして打ち出すなら、制度名を真似るより、自社で実際に起きた個別対応のエピソードを集めるほうが効きます。「育児で時短にした人がいる」「介護で勤務地を相談した人がいる」──そうした事実を、応募者が読んで「自分も使えるかも」と思える粒度で書く。それだけで、採用ページの説得力は変わってくる気がしています。

わたしたちCoachersも小さなチームで、制度として完備されているわけではありません。ただ、ひとりひとりの事情に応じてどう動いてきたかを言葉にすることはできる。同じ立場の中小企業の皆さんと、その「言語化」の部分でご一緒できたらと感じています。

ACTIONS
STEP 01
過去3年の「個別対応」を棚卸しする
育児・介護・遠方異動など、個別対応した事例を3〜5件リストアップ。匿名化したストーリーの素材にします。
STEP 02
「対象」「条件」「期間」を一文ずつ書く
大手制度の真似ではなく、自社の現状を3軸で言語化。あいまい表現を避けるだけで、応募者の安心感は変わります。
STEP 03
求人原稿に「実例1行」を入れる
「過去にこういう相談があり、こう対応しました」という1行を加えるだけで、求職者の自分ごと化が進みます。
STEP 04
面接で「相談OK」を最初に伝える
制度がなくても「働き方の相談はいつでも歓迎」と冒頭で伝えるだけで、本音が出やすくなりミスマッチも減ります。
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