政府定義のリスキリングは9.5%──「育成」と「中途採用」、AI時代の役割分担を考える
BLOG

ブログ

政府定義のリスキリングは9.5%──「育成」と「中途採用」、AI時代の役割分担を考える

Branding, 2026.05.31 By 中村 尚人

「リスキリング」という言葉、ここ数年で社内会議でも当たり前に飛び交うようになりました。みらいワークスが2026年5月に公表した調査では、500名以上の企業の6割超が何らかの形でリスキリングを動かしている、という結果が出ています。

ただ、同じ調査でもう一つ目を引いた数字があって。政府が本来意図していた「職種転換を伴うリスキリング」を実践している企業は、たった9.5%。言葉の普及と、実態のあいだに、けっこうな距離があるように見えます。

この9.5%という数字は、中途採用の担当者にも他人事ではないと感じています。育成で内側から賄えない部分は、外から採るしかない。今日は「育成」と「中途採用」の境目を、AIの文脈も交えながら一緒に整理してみたいと思います。

リスキリングは進んでいる。ただし「学び直し」中心

KEY DATA
何らかの形でリスキリング実施
64.6%
「職種転換型」を実践
9.5%
DX重点テーマ「生成AI業務活用」
67.8%

調査対象は500名以上の企業の人事・人材開発担当者400名。全社施策として動かしている企業が38.3%、特定部門・パイロットも含めると64.6%。数字だけ見るとリスキリングは確かに広がっています。

ただ、「貴社のリスキリングをどう捉えているか」を聞くと、61.0%が「職務や役割の転換は前提にしない」と回答。政府の本来定義(成長分野への労働移動を前提にした学び直し)に沿うのは9.5%にとどまります。多くの企業は、既存研修やOJTの延長を「リスキリング」と呼んでいる、というのが現実のようです。

「言葉」と「実態」のあいだに何があるか

COMPARISON
政府が描いたリスキリング
職種転換を伴う学び直し
成長分野に人を動かす前提で、企業が転換先を定め、対象者を選び、学習と配置転換を一連の流れで運用する。所属企業で実施は9.5%
現場で起きていること
既存業務の延長線上での学び直し
役割の転換は前提にせず、研修・eラーニングでスキルを足していく形。61.0%の企業がこちらに該当。「リスキリング」と呼ばれている取り組みの大半。

言葉が広く使われるほど、定義は柔らかくなっていく。それ自体は仕方ない面もあると感じています。ただ、もし会社として「AI活用前提に業務を再設計したい」「事業ポートフォリオを動かしたい」と考えているなら、9.5%側のリスキリングを社内で本当に回せるかは、一度立ち止まって見ておきたいところです。

同じ調査では、生成AI普及の影響として48.0%が「業務プロセス再設計で必要スキル・役割が変わった」、38.9%が「将来必要な職務・役割の再定義が必要になった」と答えています。役割そのものが動いている前提で、内部育成だけで賄える範囲はどこまでか、という問いが浮かんできます。

「育成」と「中途採用」、どこで線を引くか

MATRIX
縦軸:既存社員での補填可能性(育てやすさ) / 横軸:事業へのインパクト
育てやすい × インパクト低
eラーニングで足す領域
基本的なAIリテラシー、業務ツールの使い方など。社内研修・eラーニングで標準化。
育てにくい × インパクト高
中途採用で取りに行く領域
AI×業務プロセス再設計を担えるリード、データ基盤、新規事業開発。社内で育つのを待つと事業機会を逃しやすい。
育てにくい × インパクト低
業務再設計 or 外注
そもそも自社で抱える必然性が薄い領域。AIや外部委託に置き換える前提で再設計。
育てやすい × インパクト高
本気のリスキリング対象
中堅層のマネジメント・経営企画など。政府定義の「職種転換型」を踏み込んで設計する価値が大きい。

この4象限は、あくまで一つの整理の仕方ですが、社内で「ここはリスキリング」「ここは中途で採る」「ここは業務ごと見直す」を意識的に切り分けられているか、確かめる材料にはなりそうです。

同調査でリスキリング推進の最大の壁に挙がっていたのは「指導者・メンター不足(25.9%)」と「人材・スキルデータ未整備(24.3%)」。社内に「教える人」がいなければ、内製での育成は構造的に苦しくなります。そこを補う打ち手として、外部プロ人材の活用と並んで、中途採用での”教える側の確保”も視野に入ってきます。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

リスキリングと中途採用は、よく「対立」のように語られますが、実態はもっと地続きだと感じています。「育てる」と「採る」のどちらを優先するかの話ではなく、9.5%しか踏み込めていない”職種転換型”の重さに対して、両輪で挑むしかない、というのが今回の調査からの素直な読み解きです。

そう考えると、中途採用で発信するメッセージも変わってきます。「即戦力募集」「AI人材歓迎」と書くだけでは、来てほしい人には届きにくい。「会社として何を変えようとしていて、その役割の中であなたに何を担ってほしいのか」を、求人原稿レベルから言語化できているか。HRブランディングの出発点はそこにあると、わたしたちは考えています。

わたしたちCoachers自身も、社内のリスキリング設計と中途採用要件を行き来しながら、毎月のように線を引き直しています。AI時代の役割再定義はまだ始まったばかり。一緒に試行錯誤していきたい話だと感じています。

ACTIONS
直近1年の中途採用ポジションを「育成可」「外部調達」で並べ替えてみる
求人を出したポジションごとに、本来は育てられたか/育てる人がいなかったか/育つ時間がなかったかを書き出すと、リスキリング側で詰めるべき論点が見えてきます。
 
AI活用が前提となった役割を、求人票の「業務内容」に書き直してみる
「AIを使って何を変えてほしいか」「何の意思決定を担ってほしいか」を一文添えるだけで、来てほしい層に届く確度が上がります。
 
「教える人」が社内にいるかを、ポジション単位で棚卸しする
指導者・メンター不足は最大の障壁。中堅・シニア層の中途採用を、教育リソース確保の一手として位置づけ直してみると、優先順位が変わってきます。
FREE DOWNLOAD
採用活動チェックシート
5領域 × 25問で、採用の盲点を5分で可視化。中小企業の人事担当者向けに、設計/集客/サイト/選考/定着の5カテゴリでまとめた自己診断シートです。わかる質問はスキップOK。気軽にどうぞ。
CONTACT
AI時代の役割再定義、「育成」と「中途採用」の線引きを一緒に考えませんか
Coachersは、求人広告制作・採用サイト・採用ブランディングを軸に、中途採用の入口設計から、社内の役割定義・要件整理までを伴走しています。「これはリスキリングで足りる/足りない」の見極めから、ご一緒できます。

お問い合わせフォームへ ›

REFERENCES

 

中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

CONTACT

採用に関するご相談・お問い合わせはこちら

採用ブランディング、クリエイティブ制作、求人運用、RPOなど、
採用に関するあらゆるご相談を承ります。まずはお気軽にお問い合わせください。