候補者が自社に応募してくれる前、いったいどこで情報を集めているのか。少し前なら「検索エンジンと口コミサイト」と答えていた方が多かったかもしれません。でも、その入り口が静かに変わりはじめています。
ある調査では、就職活動中の学生の7割超が生成AIで情報収集をし、そのうえで約9割が最後は公式サイトや採用ページで事実確認をしていました。AIで興味を持ち、公式情報で確かめる──この二段構えが、もう当たり前になりつつあるようです。
これは新卒就活の調査ですが、転職を考える人の動きとも地続きな気がしています。「候補者がAIに何を聞き、そのあと自社の何を見ているのか」を、わたしたちCoachersも一緒に考えてみたいと思います。
AIで調べて、最後は「公式」で確かめる
今回の調査(ナイル株式会社/就職活動をしたorしている学生419名、2026年3月)でいちばん目を引いたのは、生成AIで企業を調べたあと、約9割が公式サイトや採用ページで事実確認をしているという結果でした。「だいたい確認する」が56.1%、「必ず確認する」が32.3%。AIの回答を鵜呑みにせず、一次情報にあたる姿勢が定着しつつあるようです。
裏を返すと、AIで興味を持ってもらえても、公式サイトで十分な情報が得られなければ、せっかくの関心が離脱につながってしまうということでもあります。AIが示した内容と公式情報のあいだに食い違いがあれば、信頼を損ねることもありそうです。AIと自社の発信を「別物」ではなく「地続き」で捉える視点が、これから効いてくる気がしています。
AIでの企業研究は「怪しい」のか
「AIに会社のことを聞いてみたけれど、この答えは信じていいのだろうか」——生成AIで企業研究をする人が増えるにつれて、この迷いも一緒に増えているようです。実際、この記事にも「AIでの企業研究は怪しくないか」という関心で来られる方がいらっしゃいます。
率直に言えば、怪しいというより、当たる場面と外れる場面がはっきり分かれているというのが実態に近いと思います。そして外れやすいのは、候補者が知りたいことの中心そのものだったりします。
※この整理は公表統計ではなく、Coachersが採用支援の現場で見てきた内容にもとづくものです。
採用する側から見ると、4つ目がいちばん重い話です。自社について公式に語っていない部分は、他の誰かの言葉で埋められるということだからです。しかも候補者は、そのAIの答えを鵜呑みにするわけではなく、約9割が公式の採用情報で裏を取ろうとします。つまり最終的に見られるのは、やはり自社が出している情報です。
「AIの説明が怪しい」と感じた候補者が確かめに来たとき、そこに答えが用意されているかどうか。事業の現在地、どんな人が働いているのか、どんな進め方をしているのか。公式の情報が具体的であるほど、AIの推測が入り込む余地は小さくなります。AI対策というより、これまで採用サイトに求められてきたことが、より効いてくるようになった、という感覚に近いと思います。
AIに企業研究を任せる候補者が増えたと聞くと、手抜きのように受け取られることがあります。でも実際にやってみるとわかるのですが、AIを使う人ほどその答えを疑って確かめにいきます。だからこそ「怪しい」という言葉で検索されるわけです。
面接で「AIで調べました」と言いにくい空気があるとしたら、それは少しもったいないことかもしれません。AIで下調べをしてきた候補者は、公式情報を読み込んだうえで質問を持ってきている可能性が高い。調べ方を評価するのではなく、その人が何を確かめたくて来たのかを聞いてみたいところです。
候補者はAIを「どの場面」で使っているのか
では、候補者は生成AIをどの段階で使っているのでしょうか。最も多かったのは「選考対策(エントリーシート・面接)」で48.0%。次いで企業研究、業界研究と続きます。文章の生成や壁打ちが得意なAIと、ひとりで準備しがちな選考対策の相性が、よく噛み合っているようです。
企業について調べる中身を見ると、「事業内容」(36.7%)、「強み・特徴」(33.5%)、「競合との違い」(29.8%)が上位でした。さらに、本来つかみにくいはずの「社風・働く雰囲気」も約3割。AIが各種の公開情報を統合して”なんとなくの像”を返してくれるので、候補者はそこで第一印象をつくっているのかもしれません。だからこそ、その像が実態とズレていないかは、わたしたちの発信次第とも言えそうです。
気になるところを、いくつか整理してみました
この調査を読んで感じたのは、候補者との「最初の接点」が、検索結果ページから生成AIの回答へと少しずつ移ってきている、ということでした。AIがどう自社を説明するかは直接コントロールできませんが、AIが参照する元の情報──つまり公式の発信──は、自分たちで整えられます。
ここで効いてくるのがHRブランディングの発想だと感じています。「事業内容」「強み」「働く環境」を、候補者が知りたい順番で、矛盾なく言語化しておく。採用サイトの情報設計という視点で見ると、AIに正しく拾われる形に整えることと、訪れた人に伝わる形に整えることは、実はほとんど同じ作業なのかもしれません。
わたしたちCoachersも、自社の情報がAIにどう映るかを完璧には把握できていません。だからこそ、まずは「候補者がAIに聞きそうなこと」を書き出して、自社サイトの言葉と並べてみる。そんな小さな点検から、一緒に始めてみませんか。
- ナイル株式会社(ナイルのSEO相談室調べ)「【就活生のAI利用はもう常識!?】就職活動での生成AI活用実態調査」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000655.000055900.html
- ナイルのSEO相談室「調査記事ページ」 https://www.seohacks.net/column/30459/



