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AIでの企業研究は信用できる?──就活生の76%が利用、約9割は公式情報で裏取り

候補者が自社に応募してくれる前、いったいどこで情報を集めているのか。少し前なら「検索エンジンと口コミサイト」と答えていた方が多かったかもしれません。でも、その入り口が静かに変わりはじめています。

ある調査では、就職活動中の学生の7割超が生成AIで情報収集をし、そのうえで約9割が最後は公式サイトや採用ページで事実確認をしていました。AIで興味を持ち、公式情報で確かめる──この二段構えが、もう当たり前になりつつあるようです。

これは新卒就活の調査ですが、転職を考える人の動きとも地続きな気がしています。「候補者がAIに何を聞き、そのあと自社の何を見ているのか」を、わたしたちCoachersも一緒に考えてみたいと思います。

AIで調べて、最後は「公式」で確かめる

今回の調査(ナイル株式会社/就職活動をしたorしている学生419名、2026年3月)でいちばん目を引いたのは、生成AIで企業を調べたあと、約9割が公式サイトや採用ページで事実確認をしているという結果でした。「だいたい確認する」が56.1%、「必ず確認する」が32.3%。AIの回答を鵜呑みにせず、一次情報にあたる姿勢が定着しつつあるようです。

KEY METRIC
88.4%
公式情報で裏取り
AIのあと、ほぼ全員が公式に戻ってくる
生成AIで企業を調べた人のうち、約9割が公式サイト・採用ページで事実確認をしています。AIが「最初の接点」になっても、信頼の最終確認はやはり自社の発信。つまり、AIで関心を持った人が訪れる前提で、公式の情報設計が問われているのかもしれません。

裏を返すと、AIで興味を持ってもらえても、公式サイトで十分な情報が得られなければ、せっかくの関心が離脱につながってしまうということでもあります。AIが示した内容と公式情報のあいだに食い違いがあれば、信頼を損ねることもありそうです。AIと自社の発信を「別物」ではなく「地続き」で捉える視点が、これから効いてくる気がしています。

AIでの企業研究は「怪しい」のか

「AIに会社のことを聞いてみたけれど、この答えは信じていいのだろうか」——生成AIで企業研究をする人が増えるにつれて、この迷いも一緒に増えているようです。実際、この記事にも「AIでの企業研究は怪しくないか」という関心で来られる方がいらっしゃいます。

率直に言えば、怪しいというより、当たる場面と外れる場面がはっきり分かれているというのが実態に近いと思います。そして外れやすいのは、候補者が知りたいことの中心そのものだったりします。

RELIABILITY / AIの企業研究は、どこで外れやすいか
外れにくい:事業内容・沿革・公表済みの数字
公式サイトやプレスリリースに書かれている情報は、AIも比較的正確に拾います。候補者にとっては、下調べの時間を短縮できる部分です。
外れやすい:直近の変化
組織変更、新しい事業、募集職種の変更など、更新されたばかりの情報は反映が遅れます。数年前の状態が「いまの姿」として語られることがあります。
外れやすい:社風・働き方・人間関係
公式情報として書かれていないぶん、口コミサイトや断片的な記述から推測が組み立てられがちです。候補者がいちばん知りたい部分でありながら、いちばんずれやすい領域です。
外れやすい:情報が少ない会社ほど、推測で埋まる
公式に出している情報が少ないと、AIは残っている材料でつじつまを合わせようとします。中小企業ほど、実像と違う説明が生成されやすい構造にあります。

※この整理は公表統計ではなく、Coachersが採用支援の現場で見てきた内容にもとづくものです。

採用する側から見ると、4つ目がいちばん重い話です。自社について公式に語っていない部分は、他の誰かの言葉で埋められるということだからです。しかも候補者は、そのAIの答えを鵜呑みにするわけではなく、約9割が公式の採用情報で裏を取ろうとします。つまり最終的に見られるのは、やはり自社が出している情報です。

「AIの説明が怪しい」と感じた候補者が確かめに来たとき、そこに答えが用意されているかどうか。事業の現在地、どんな人が働いているのか、どんな進め方をしているのか。公式の情報が具体的であるほど、AIの推測が入り込む余地は小さくなります。AI対策というより、これまで採用サイトに求められてきたことが、より効いてくるようになった、という感覚に近いと思います。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

AIに企業研究を任せる候補者が増えたと聞くと、手抜きのように受け取られることがあります。でも実際にやってみるとわかるのですが、AIを使う人ほどその答えを疑って確かめにいきます。だからこそ「怪しい」という言葉で検索されるわけです。

面接で「AIで調べました」と言いにくい空気があるとしたら、それは少しもったいないことかもしれません。AIで下調べをしてきた候補者は、公式情報を読み込んだうえで質問を持ってきている可能性が高い。調べ方を評価するのではなく、その人が何を確かめたくて来たのかを聞いてみたいところです。

※前半は候補者の76%が生成AIで企業研究し、約9割が公式採用情報で裏取りするという調査結果(ナイル株式会社/2026年3月・学生419名)をもとにした推測、後半は採用支援の現場での実感にもとづく描写です。

候補者はAIを「どの場面」で使っているのか

では、候補者は生成AIをどの段階で使っているのでしょうか。最も多かったのは「選考対策(エントリーシート・面接)」で48.0%。次いで企業研究、業界研究と続きます。文章の生成や壁打ちが得意なAIと、ひとりで準備しがちな選考対策の相性が、よく噛み合っているようです。

IMPACT MAP
選考対策(ES・面接)48.0%
 
企業研究37.9%
 
業界研究33.2%
 
口コミ・評判の確認20.4%
 

企業について調べる中身を見ると、「事業内容」(36.7%)、「強み・特徴」(33.5%)、「競合との違い」(29.8%)が上位でした。さらに、本来つかみにくいはずの「社風・働く雰囲気」も約3割。AIが各種の公開情報を統合して”なんとなくの像”を返してくれるので、候補者はそこで第一印象をつくっているのかもしれません。だからこそ、その像が実態とズレていないかは、わたしたちの発信次第とも言えそうです。

気になるところを、いくつか整理してみました

FAQ
Q
生成AIに自社が出てこないと、もう不利なのでしょうか?
A
少し気にかけておきたいポイントかもしれません。調査では、生成AIが企業を知るきっかけになった経験がある人が約7割。「○○に強い会社は?」という問いにAIがどう答えるかが、最初の接点を左右しはじめています。ただ、最後は公式情報で確かめられるので、まずは自社サイトに正確な情報が整っているかが土台になりそうです。
 
Q
これは新卒の調査ですが、中途採用でも同じことが言えますか?
A
中途の候補者も、日常的に生成AIを使う人が増えていると感じています。転職を考えはじめた段階で「この業界の有力企業は?」と聞いてみる動きは、新卒に限った話ではなさそうです。AIで下調べ→公式情報で裏取りという行動の骨格は、中途でも近い気がしています。
 
Q
まず、どこから手をつければよさそうですか?
A
採用サイトやコーポレートサイトの「事業内容・強み・働く環境」が、分かりやすく整理されているかを見直すところからで十分だと思います。候補者がAIで調べる項目と、自社が発信している項目が噛み合っているか。そこを揃えるだけでも、第一印象は変わってくるかもしれません。
 
C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

この調査を読んで感じたのは、候補者との「最初の接点」が、検索結果ページから生成AIの回答へと少しずつ移ってきている、ということでした。AIがどう自社を説明するかは直接コントロールできませんが、AIが参照する元の情報──つまり公式の発信──は、自分たちで整えられます。

ここで効いてくるのがHRブランディングの発想だと感じています。「事業内容」「強み」「働く環境」を、候補者が知りたい順番で、矛盾なく言語化しておく。採用サイトの情報設計という視点で見ると、AIに正しく拾われる形に整えることと、訪れた人に伝わる形に整えることは、実はほとんど同じ作業なのかもしれません。

わたしたちCoachersも、自社の情報がAIにどう映るかを完璧には把握できていません。だからこそ、まずは「候補者がAIに聞きそうなこと」を書き出して、自社サイトの言葉と並べてみる。そんな小さな点検から、一緒に始めてみませんか。

ACTIONS
自社をAIに聞いてみる
「○○業界で△△に強い会社は?」「(自社名)はどんな会社?」と生成AIに尋ねて、返ってくる説明が実態と合っているかを確かめてみませんか。
 
「調べられる項目」を採用ページに揃える
事業内容・強み・競合との違い・働く雰囲気。候補者がAIで調べる項目が、自社サイトでも分かりやすく見つかるか点検してみましょう。
 
AIと公式の「言葉のズレ」を埋める
AIの説明と公式情報に食い違いがあれば、どちらを正にするか決めて言葉を揃える。小さな矛盾をひとつ消すだけでも、信頼の手触りは変わります。
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REFERENCES

 

中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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