即戦力を求めすぎていませんか──不足が「量から質」へ移る今、要件のたな卸し
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即戦力を求めすぎていませんか──不足が「量から質」へ移る今、要件のたな卸し

Branding, 2026.06.08 By 中村 尚人

「求人を出しているのに、即戦力が来ない」──最近、そんな声をよく耳にする気がしています。応募がゼロなわけではない。でも、こちらが求めたスキルや経験にぴったり当てはまる人がなかなか現れない。そんなもどかしさです。

マイナビの最新調査では、募集当初に求めた要件を満たさない場合「採用しないことが多かった」企業が62.1%。前年より7.7ポイントも増えていました。要件を下げて頭数をそろえるより、満たす人を厳選する動きが強まっているようです。

でも、ここで一度立ち止まりたいのです。私たちが掲げている「即戦力」の要件、本当に全部が必要なものでしょうか。今日は、不足の中身が「量」から「質」へ移ってきた背景と、要件をたな卸しするやり方を、わたしたちCoachersも一緒に考えてみたいと思います。

不足の中身が「量」から「質」へ動いている

同じ調査で、正社員に「不足感がある」と答えた企業は40.1%。前年より落ち着いたとはいえ、まだ4割を超えています。注目したいのはその中身です。人数そのものが足りない「量的な不足」は減り、高スキル人材や即戦力といった「質的な不足」が増えていました。

COMPARISON
量的な不足(人数)
69.6% ▼ -3.7pt
「とにかく人手が足りない」という量の不足。前年より3.7ポイント下がり、ピークは越えつつあるようです。
質的な不足(高スキル・即戦力)
55.6% ▲ +6.7pt
「欲しいスキルを持つ人がいない」という質の不足。前年より6.7ポイント増え、不足感の主役が移りつつあります。

退職した社員の影響をみても、痛手が大きいと答えられた割合が最も高かったのは勤続5年以上の中堅社員(68.8%)でした。中堅層が抜けた穴は、人数を採るだけでは埋まりにくい。だからこそ「質」への渇望が強まるのは自然なことだと感じます。不足の正体が変わってきている、という見立てです。

要件を満たさないと「採用見送り」が6割超

質を重視する流れは、選考の判断にもはっきり表れています。募集当初に求めたスキルや経験を満たさなかった場合、「採用しないことが多かった」と答えた企業は62.1%。前年から7.7ポイント増えていました。しかもこの傾向は、従業員数が少ない企業ほど高かったそうです。

KEY METRIC
62.1%
採用見送り
要件未達だと「採用しないことが多い」
前年より7.7ポイント増。要件を下げて数を確保するより、満たす人を厳選する姿勢が強まっています。規模が小さい会社ほどこの傾向が顕著で、1人の採用に妥協できない事情も透けて見えます。

厳選すること自体は、悪いことではないと思います。ミスマッチを防ぎたい気持ちは、わたしたちもよく分かります。ただ、要件を高く積み上げたまま「満たす人を待ち続ける」と、母集団がやせ細り、採用は止まってしまう。「質を落とさない」ことと「要件を盛りすぎない」ことは、両立できるはずだと感じています。鍵になるのが、要件のたな卸しです。

「即戦力の罠」から抜ける、要件のたな卸し

求人票の要件欄は、いつのまにか足し算で膨らみがちです。「あったら嬉しい」が「必須」に紛れ込んでいないか。一度ほどいて、組み直してみませんか。次の4ステップで進めると、整理しやすい気がしています。

STAGE FLOW
STAGE 1要件を「必須」と「歓迎」に仕分ける
いま掲げている条件を全部書き出し、「入社初日になければ仕事が回らないもの」だけを必須に残します。残りは歓迎要件へ。多くの場合、必須は思ったより少なくなります。
 
STAGE 2「経験」を「できてほしいこと」に翻訳する
「業界経験5年以上」ではなく「入社後に担ってほしい業務」で書き直します。経験年数ではなく成果やタスクで定義すると、別の道を歩んできた人にも光が当たります。
 
STAGE 3「入社後に育てられる部分」を切り分ける
オンボーディングや研修で補える要件は、選考のハードルから外します。何を入口で求め、何を入社後に伸ばすか。この線引きが、母集団の広さと定着の両方を左右します。
 
STAGE 4絞った要件を「魅力」とセットで打ち出す
要件を絞ったぶん、なぜこの仕事が面白いのか・どんな人が活躍しているのかを求人や採用サイトで具体的に伝えます。「狭く厳しく」ではなく「明確に魅力的に」へ。ここが質の確保につながります。

たな卸しのゴールは、要件を「ゆるめる」ことではありません。本当に外せない一点に集中し、それ以外を魅力と育成で補うこと。質を守りながら、出会える人の幅を広げる。そんなバランスを取り戻す作業だと考えています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

不足が「量」から「質」へ移るというのは、採用が「数を集めるゲーム」から「選ばれるゲーム」へ変わってきた、ということなのかもしれません。質の高い人ほど選択肢を持っていて、こちらが選ぶ前に、向こうから選ばれているからです。

そう考えると、要件を厳しくするほど採用が苦しくなる局面では、HRブランディング──「この会社で働く意味」を伝える力が効いてくる気がしています。たとえば求人広告の要件欄を「翻訳」するだけでも、これまで素通りされていた人に届くことがあります。条件で絞り込む前に、魅力で引き寄せられているか。そんな視点で見直してみる価値はありそうです。

わたしたちCoachersも、つい「即戦力」と書いてしまう一社です。だからこそ、その言葉の裏にある「本当に必要なこと」を、一緒にほどいていけたらと思っています。

ACTIONS
求人票の「必須要件」を数えてみる
いま出している求人の必須欄をそのまま読み返し、「初日になくても回るもの」に印をつけてみる。歓迎要件に動かせるものが、意外と見つかるかもしれません。
 
「経験年数」を「やってほしいこと」に書き換える
一つでいいので、年数で書いた条件を具体的な業務やゴールの言葉に直してみる。それだけで届く人の層が変わることがあります。
 
「入社後に育てる部分」を一つ決める
選考で求めず、入社後に伸ばすと決める要件を一つ選ぶ。その分、オンボーディングで何を支えるかをチームで話してみると、定着の設計にもつながります。
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採用活動チェックシート
5領域 × 25問で、採用の盲点を5分で可視化。中小企業の人事担当者向けに、設計/集客/サイト/選考/定着の5カテゴリでまとめた自己診断シートです。わかる質問はスキップOK。気軽にどうぞ。
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要件のたな卸しから、その魅力をどう伝えるかまで。Coachersは求人広告・採用サイト・採用ブランディングを通じて、採用課題を包括的に一緒に考えるパートナーです。まずは気軽にご相談ください。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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