リファレンスチェックが断られる理由──人事の8割が感じる情報不足と頼む順番
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リファレンスチェックが断られる理由──人事の8割が感じる情報不足と頼む順番

Branding, 2026.08.12 By 中村 尚人

「リファレンスチェックをお願いしたら、断られてしまいました」——選考の最終盤、しかも一番来てほしかった方に。そんな経験はありませんか。

つい「非協力的な人だったのかな」と片づけたくなるのですが、2026年7月に行われた調査を見ると、少し違う景色が見えてきます。人事担当者の79.9%が「本人から提供される情報だけでは不十分だと感じることがある」と答えている一方で、第三者からの情報を実際に活用できている企業は26.5%にとどまっていました(back check調べ)。

欲しいと思っている会社は多いのに、手元では動いていない。この差を埋める鍵は、たぶん頼み方の丁寧さではなく、頼む「順番」にあるのだと思います。一緒に見ていきませんか。

KEY DATA / この記事の数字
採用判断で「候補者本人から提供される情報だけでは不十分だと感じることがある」と答えた人事担当者 79.9%
第三者からの情報を実際に「活用している/活用を拡大している」企業 26.5%
今後は経歴情報より実務・人物面の情報が重視されるようになると考える人事担当者 64.8%

出典:back check株式会社「採用判断の変化に関する実態調査」(2026年7月6日〜10日・全国の人事部所属者1,000名・インターネットリサーチ/back check調べ)

リファレンスチェックは、なぜ最後で断られるのでしょうか

リファレンスチェックが断られやすいのは、選考の最終盤になって初めて話題に出るからかもしれません。リファレンスチェックとは、候補者の働きぶりを、いっしょに働いたことのある第三者(前職の上司・同僚など)に確認する選考プロセスのことです。back check株式会社が2026年7月に人事担当者1,000名に行った調査では、本人から提供される情報だけでは不十分だと感じることが「ある」と答えた人が79.9%にのぼりました。

ところが同じ調査で、第三者からの情報を「活用している」(7.4%)「活用を拡大している」(19.1%)と答えた企業は、合わせて26.5%。「導入を検討している」(20.5%)「情報を収集している」(13.4%)を足しても60.4%で、残る4割弱は検討の土俵にも乗っていません。情報が足りないと感じる会社は8割、実際に第三者に聞けている会社は4社に1社。この開きが、現場で起きている「断られた」の正体だと感じています。

実際、「断られた」と一括りにしている中身を開いてみると、性質の違う2種類が混ざっています。片方は候補者が意思として断っているケース、もう片方は本人がどれだけ前向きでも成立しないケースです。

COMPARISON / 「断られた」の中身
意思として断っている
・現職に転職活動を知られたくない
・最終段階で急に依頼され、不信感を持った
・他社の選考と並行していて、手間の差で降りた
そもそも頼めない
・前職の会社に「リファレンスには応じない」という方針がある
・円満に退職しておらず、頼める相手がいない
・会社や部署が無くなり、当時の上司と連絡が取れない
・1社目に在籍中、またはフリーランスで社外に推薦者がいない

この2つを分けずに「断られた=何かある」と読んでしまうと、前職の方針で応じられなかっただけの方まで、選考から外してしまうことになります。前の会社がリファレンスに応じない方針かどうかは、その人の働きぶりとは何の関係もありません。断られたときにまず確かめたいのは、意思なのか、事情なのか——そこだと思います。

そのうえで、わたしたちCoachersが採用の現場でよく出会う場面には、共通点があります。書類・面接・最終面接と進んだ、まさに最後の一歩で、初めて「実は、前職の方にお話を伺いたいのですが」と切り出される。候補者からすると、ずっと見極められてきた末に、もう一つ関門が増えたように見えてしまうのです。

MYTH vs FACT
MYTH
断られるのは、候補者が何か隠しているから。あるいは非協力的だから。
FACT
「断った」のではなく「頼めなかった」ケースが、かなり混じっているように思います。在職中の方にとって推薦者への依頼は転職活動を職場に知らせる行為ですし、前職の方針や退職の経緯によっては、本人が協力したくても成立しません。断りやすさは候補者の性格ではなく、選考の設計側にあるのだと思います。

企業が本当に知りたいのは、経歴の裏取りなのでしょうか

同じ調査で「履歴書や職務経歴書だけでは把握しにくいものの、本来は把握したい情報」を尋ねた設問の1位は、「人柄・性格」で56.9%でした。経歴やスキルの裏取りではなく、人物面が上位に並んでいます。同じ調査では、今後は経歴情報より実務・人物面の情報が重視されるようになると考える人が64.8%。見たいものが「経歴が本当かどうか」から「一緒に働いたらどうなりそうか」へ移ってきている、ということだと思います。

IMPACT MAP / 書類だけでは把握しにくいが、本当は知りたい情報(上位3つ)
人柄・性格56.9%
コミュニケーション力50.5%
協調性・チーム適性48.0%

出典:back check株式会社「採用判断の変化に関する実態調査」(2026年7月・n=1,000/back check調べ)

ここで一つ気づかされることがあります。人柄・コミュニケーション・協調性——書類では見えないこの3つは、候補者が応募前に会社側へ知りたがることとも、かなり重なるように思います。どんな人たちが働いていて、どんな進め方をするチームなのか。お互いが同じことを知りたがっているのに、確かめるタイミングだけが選考の最後にずれ込んでいる——そんな構図に見えます。

断られにくい依頼は、どこが違うのでしょうか

断られにくい会社がやっているのは、頼む言葉を丁寧にすることではなく、頼む前に「予告」を挟むことでした。人は同じ依頼でも、予期していたかどうかで受け止め方が変わります。最後に不意打ちで出てくる依頼と、最初から工程表に載っていた依頼は、まったく別のものとして届きます。具体的には、次の3ステップです。

1
選考案内に1行だけ先出しする
一次選考のご案内メールや求人票の選考フロー欄に、「最終段階で、いっしょに働かれた方へのお話し伺いをお願いする場合があります」と一文添えます。工程として最初から見えていれば、最後に現れる関門ではなくなります。
2
推薦者の選択肢を、こちらから複数示す
「前職の上司」「前職の同僚」「取引先の担当者」など3通りを提示し、現職の方でなくて構わないことを明記します。在職中の方が最も気にするのは現職に知られることなので、そこを外した選択肢が先にあると、断る理由が1つ減ります。あわせて、推薦者は会社名ではなく「一緒に働いた個人」で指定すると、前職が方針としてリファレンスに応じない会社でも成立しやすくなります。
3
聞けた内容を、候補者本人にも返す
「前職の方から、こういう進め方が強みだと伺いました。当社ではこの場面で活きそうです」と本人に共有します。評価のための一方通行だった工程が、入社後の期待をすり合わせる場に変わります。

3つとも、ツールを導入しなくても今日から書き足せることばかりです。第三者情報を活用できている企業が26.5%にとどまるのは、サービスを入れていないからというより、選考のどこにこの工程を置くかを決めていないからではないか——現場を見ていると、そんな気がしています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

この調査を読んでいて、リファレンスチェックは「見極めの最後の関門」ではなく「口説きの最後の一手」にもできるのではないか、と考えました。書類では見えない人柄・コミュニケーション・協調性は、こちらが候補者にまだ語れていない情報でもあります。相手の人物像を確かめたいと思っているとき、自社の人物像はどこまで見せられているでしょうか。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

御社の最終面接まで進んだ、いま在職中の一人を思い浮かべてみてください。推薦者への依頼を受け取った瞬間、その方の頭に最初に浮かぶのは「誰に頼めるか」ではなく、「これで職場に転職活動が知られないだろうか」という不安かもしれません。断るという返事は、非協力の表明ではなく、今の生活を守るための判断なのだと思います。

わたしたちが現場でよく聞くのも、「断ったこと」より「急に言われたこと」への戸惑いです。逆に、最初から工程を教えてくれた会社については「進め方が誠実だった」と語られることが多い。候補者は、聞かれる内容そのものより、聞かれ方から会社の姿勢を読み取っているのかもしれません。

採用サイトの情報設計という視点で見ると、ここはやりやすい打ち手が残っている場所だと思います。選考フローのページに工程を1行足す。働く人の進め方が伝わる記事を1本置く。それだけで、こちらが第三者に確かめたいことの何割かは、候補者側にも先に届きます。HRブランディングは特別な施策のことではなく、こうした「見せる順番」を整えていく積み重ねなのだと感じています。

わたしたちCoachers自身も、選考の途中で「これは先に伝えておけばよかった」と気づくことがあります。順番は、あとからでも変えられます。

ACTIONS / 今日からできる3つ
選考案内に「最終段階でお願いする場合があります」を1行足す
同じ依頼でも、予告があるかどうかで受け止めは変わります。断られる理由の多くは内容ではなく唐突さのほうにある、というのが現場での実感です。
推薦者は「現職以外で構わない」と明記する
在職中の候補者にとって最大の懸念は現職に知られることです。前職の上司・同僚・取引先という選択肢を先に渡すと、断らずに済む道が生まれます。
書類では見えない3項目を、自社の採用ページにも書く
人柄56.9%・コミュニケーション力50.5%・協調性48.0%は、候補者が会社側に知りたがることとも重なります。確かめる前に、こちらから見せておけます。
FAQ / よくある質問
Q. リファレンスチェックを断られたら、不採用にしたほうがよいのでしょうか?
断られたこと自体を不採用の理由にするのは、避けたほうが安全かもしれません。前職の会社が方針としてリファレンスに応じない、当時の上司と連絡が取れないなど、本人の意思と関係なく成立しないケースが少なくないためです。まずは意思なのか事情なのかを確かめたうえで、前職の同僚を推薦者にする、内定後に実施するなど代わりの選択肢を用意しておくと、断る/断らないで判断を分けずに済みます。
Q. リファレンスチェックは、いつ実施するのがよいですか?
実施は最終面接の前後が一般的ですが、大切なのは実施の時期そのものよりいつ予告するかだと思います。選考の早い段階で工程として伝えておくと、最後に急に現れる印象が薄れ、推薦者を探す時間も候補者側に生まれます。
Q. 中小企業でも、リファレンスチェックは導入したほうがよいですか?
必須ではないと思います。back check調べでは第三者からの情報を実際に活用・拡大している企業は26.5%で、多くはまだ導入・検討の段階です。ツールを入れる前に、人柄や仕事の進め方を面接と求人票でどこまで見せ合えているかを確かめるほうが、先に効くかもしれません。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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