ブログ
採用のアトラクトは”語る”より”聴く”──面接の傾聴で不安解消が32.3pt差
面接の準備というと、たいてい二つを用意します。何を聞いて見極めるか。そして、自社の何を伝えるか。この二つは、どの会社の面接シートにもだいたい書いてあります。
けれど「候補者が本当は確かめたかったことを、最後まで聴く時間」は、たぶん時間割に入っていません。リブセンスが2026年6月に転職経験者275人へ行った調査では、候補者の80.7%が待遇以外の「こだわり条件」を持ち、そのうち56.3%が選考の前段階で「その条件が満たせるか不安だった」と答えています。
では、その不安はどこで解けたのでしょうか。調査の答えは、わたしたちが「アトラクト=魅力を伝えること」と呼んできたものとは、少し違う方向を指していました。今日はその差を、一緒にのぞいてみたいと思います。
80.7%
56.3%
88.5%
56.2%
出典:リブセンス「転職経験におけるアトラクトに関するアンケート」(2026年6月23日〜30日実施・2022年以降に転職経験のある20〜59歳/n=275)
アトラクトは「語る」ことだと思っていませんでしたか
アトラクトとは、選考の過程で候補者の入社意欲を高めていく働きかけのことです。多くの現場では、これが「自社の魅力をどう伝えるか」という意味で運用されています。事業の将来性、任せたいポジション、社風。面接の後半15分を、そのプレゼンに充てている会社は少なくないと思います。
ところがリブセンスの調査が示したのは、意欲を左右していたのが伝える側の熱量より、聴かれた実感のほうだった、という結果でした。面接のなかで自分の志向や条件を深く聞かれ、すり合わせる時間があったと答えた人は、88.5%が「選考前の不安が解消した」と回答しています。
出典:リブセンス「転職経験におけるアトラクトに関するアンケート」(2026年6月・n=275)/「こだわり条件に不安があった人」の不安解消率
ここで一つ、行き過ぎないように添えておきたい数字があります。深く聴かれなかった人でも、56.2%は不安が解消していました。つまり「聴かなければ意欲は上がらない」わけではありません。ただ、同じ面接という時間の使い方で32.3ポイントの差がついているとすれば、そこは触ってみる価値のある場所だと思います(n=275の自主調査ですので、傾向として受け止めるくらいがちょうどよさそうです)。
候補者の「こだわり条件」は、たいてい待遇欄の外側にある
では、候補者は何を確かめたくて面接に来ているのでしょうか。調査で「こだわり条件」を持っていた人は8割を超えますが、その中身は年収や休日といった待遇の外側にありました。どんな仕事内容が中心になるのか、自分の強みが発揮できる環境なのか——求人票の条件欄には、そもそも書ききれない種類の問いです。
書ききれないから、応募前には解けません。だから選考前に不安が残る(56.3%)。そして面接は、その不安を持ったまま座っている人と向き合う場になります。同じ60分でも、使い方はこう変わってきます。
「相互理解ができたのは、入社した1社だけ」が41.2%
同じ調査で、もうひとつ気になる数字が出ています。深く聴かれて不安が解消したと答えた人のうち41.2%が、「相互理解ができた企業は、入社を決めた1社だけだった」と回答していました。
読み方によっては、少し寂しい数字です。じっくり聴いてくれた会社は最後まで1社だけだった——そう答えた人が4割強いた、ということですから。裏を返すと、ここはまだ混み合っていない場所だということでもあります。予算をかけずに差がつく余地が、面接という既にある60分のなかに残っているのかもしれません。
この結果を「面接官がちゃんと傾聴すればいい」という話にしてしまうと、たぶん現場は動きません。聴けていないのは姿勢の問題に見えて、実は面接の時間割の問題だと感じています。面接シートは見極めのために設計され、質問の数も時間配分もそこに最適化されている。聴く時間が抜けるのは、面接官が冷たいからではなく、その枠がどこにも用意されていないからです。個人の努力ではなく、設計に手を入れるほうが早い場所だと思います。
御社の求人票を開いた候補者は、8割前後の人が「待遇以外に、どうしても譲れないこと」を抱えています。ただそれは、条件欄を何度読み返しても書いていない種類のことです。だから応募ボタンを押した時点では、まだ確かめられていない。面接は、見極められる場である前に、その人にとっては”やっと聞ける場”なのかもしれません。
わたしたちが採用のご支援で候補者の声をうかがっていても、印象に残ったと語られるのは、立派な会社紹介よりも「自分の話を、途中でさえぎらずに聞いてもらえた」という場面のほうが多い気がしています。
そしてこれは、HRブランディングの話でもあります。ブランディングというと発信の量や見せ方に目が行きますが、候補者にとっての御社らしさは、面接で自分がどう扱われたかという一次体験のほうに強く残ります。求人広告の原稿づくりをご一緒していても、「面接で必ず聞かれること」を先に原稿へ書いておくと、面接の場が”確認”から”すり合わせ”に変わっていくのを何度か見てきました。
わたしたちCoachersも、つい伝えたいことを増やしてしまう側です。だからこそ、伝える量ではなく伝える順番を候補者に合わせる、という発想を持っておきたいと思っています。
- リブセンス「採用面接の『アトラクト』は、自社アピールだけではなく『候補者への傾聴・相互理解』が重要であることが判明」(2026年7月21日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000230.000015443.html
- HRzine「深い傾聴で候補者の不安を払拭したのは『入社した1社だけ』が4割—リブセンス調べ」(2026年7月22日) https://hrzine.jp/news/detail/7981
CONTACT
採用に関するご相談・お問い合わせはこちら
採用ブランディング、クリエイティブ制作、求人運用、RPOなど、
採用に関するあらゆるご相談を承ります。まずはお気軽にお問い合わせください。