求人票の応募資格欄に「35歳未満・同業種の経験3年以上」。こうした下書きを、ときどき見かけます。けれどこの組み合わせは、そのままでは求人票に載せられません。
若年者を無期雇用で募集するときに年齢の上限を付けられる例外には、法令上「職業経験を不問とすること」という条件があるからです。厚生労働省のパンフレットでも、「35歳未満(職務経験不問)」は認められ、「40歳未満(〇〇業務の経験のある方)」は認められない例として示されています。
応募資格は、会社が候補者を絞る欄であると同時に、候補者が「自分は出していいか」を決める欄です。この記事では、必須と歓迎の分け方、年齢と学歴の扱い、そのまま使える応募資格欄の型を置きます。
応募資格とは?必須条件と歓迎条件の違い
応募資格とは、求人に応募するうえで会社が求める条件をまとめた欄で、中途採用では「必須条件」と「歓迎条件」に分けて書くのが一般的です。
必須条件は、それが無いと入社後の仕事が始められないもの。歓迎条件は、あれば任せる範囲が早く広がるものです。
二つを分けるのは条件の重さではありません。「欠けていたら、会わずに見送るか」です。欠けていても書類を見るつもりの条件を必須欄に置くと、欄の意味が崩れます。
なぜ、必須を足すほど応募が減るのか
応募資格の必須欄に項目を足すほど、「自分は対象外だ」と判断して応募を見送る人が出やすくなる、とわたしたちは見ています。
会社は「満たしていなくても、まず書類は見るつもり」でいることがあります。けれど、その意図は求人票からは読み取れません。書かれた文字どおりに受け取る人もいるはずです。
わたしたちが求人票の見直しをお手伝いすると、必須のはずの項目が、実際の選考では「会ってから判断」に変わっていることがよくあります。求人票と選考の基準が、いつのまにかずれているのです。
学歴も同じです。「大卒以上」を必須に置く前に、その仕事で学歴の何を使うのかを言葉にできるか確かめます。言葉にならないなら、条件ではなく習慣です(中途採用の学歴要件の見直し方)。
年齢と経験は、同時に絞れない
若年者を対象に応募資格へ年齢の上限を付けるなら、職務経験を条件にすることはできません。
募集・採用で年齢制限を設けることは、2007年の労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)の改正で禁止が義務化されています。
厚生労働省は、求人に「年齢不問」と書いたうえで、書類選考や面接で年齢を理由に不採用とすることも、この禁止に反すると明記しています。
例外の一つが「長期勤続によるキャリア形成」です。若年者等を期間の定めのない雇用で募集する場合は、上限年齢を付けられます。
ただし条件が二つあります。対象者の職業経験を不問とすること。新卒以外の人は、新卒と同等の処遇で育てることです。厚生労働省のパンフレットでは、この例外について次のように例が示されています。
- ○「35歳未満の方を募集(職務経験不問)」
- ○「40歳未満の方を募集(簿記2級以上)」…実務経験を要しない資格なら可
- ×「40歳未満の方を募集(□□業務の経験のある方)」…職務経験が付いている
- ×「35歳未満の方を募集(契約期間6ヶ月)」…有期の雇用
- ×「20歳以上35歳未満の方を募集」…下限年齢が付いている
このほか、定年年齢を上限とする募集や、技能継承のために特定の年齢層を募集する場合など、別の例外もあります。条件はそれぞれ違うため、当てはまりそうなときは厚生労働省の資料やハローワークで確かめてください。
経験者を採りたいなら、年齢ではなく経験の中身で書く。応募資格欄の設計は、ここから始まります。
応募資格欄は、この順番で書く
応募資格欄は、必須を先に削り、残りを歓迎と人物像に振り分ける順番で書くと、まとまりやすくなります。
- 必須は「入社初日から無いと仕事が止まるもの」だけにする
運転免許や法定の資格など、欠けていたら仕事が始まらないものだけを残します。会ってもよい人の条件まで必須に置くと、その人たちが応募前に去ってしまうことがあります。 - 残りは歓迎に移し、入社後の使い道を添える
「〇〇の経験があれば、△△からお任せします」と書きます。歓迎が合否の線ではなく、任せ方の目安だと読めるので、少し足りない人も応募しやすくなります。 - 人物像は形容詞ではなく、仕事の場面で書く
「コミュニケーション能力の高い方」は、誰でも自分に当てはまるとも、当てはまらないとも読めます。「現場の職人さんと、朝のうちに段取りを相談できる方」のように場面で書くと、合う人が自分のことだと気づけます。
①【必須】〈入社初日から無いと仕事が止まるもの。1〜2つ〉
②【歓迎】〈あると任せる範囲が早く広がるもの〉→〈お持ちなら、入社後に任せること〉
③【こんな方に向いています】〈仕事の場面〉で〈どう動ける方〉
④【学歴・年齢】〈不問〉、または〈例外事由と、その理由〉
記入例(架空の施工管理職の求人):①普通自動車第一種運転免許(AT限定可)②2級建築施工管理技士 → お持ちなら、入社3か月目から小規模な改修現場を1件お任せします ③現場の職人さんと、その日の段取りを朝のうちに相談して決められる方 ④学歴・年齢不問
※記入例は、架空の会社を想定して作った文面です。
応募資格は「会社が足切りをする欄」と思われがちです。けれど実際には、候補者が求人票を読んで自分で応募をやめる、自己選抜の欄としても働いています。
転職サイトで求人を次々に開いている一人の候補者を思い浮かべてみてください。必須欄に「〇年以上」が三つ並んでいたら、その人は仕事内容を読む前に、次の求人へ進むかもしれません。
条件を満たさずに応募してくる人より、満たしているのに自分を外す人のほうが、採用する側からは見えません。見えないぶん、減っていることにも気づきにくいのです。
必須を減らすのは、基準を下げることではありません。基準は面接で確かめます。応募資格欄の役目は、来てほしい人が「これは自分のことだ」と気づけるようにすることです。
今日からできる3つ
応募資格の書き方は、今出している求人票の必須欄を一つずつ問い直すところから始められます。
- 必須欄の各行に「欠けていたら会わないか」を問う
会うつもりの行は歓迎へ移します。求人票の必須と、実際の選考の基準が一致します。 - 若年者向けの年齢の上限と、経験の条件が同居していないか見る
若年者を無期雇用で募集する例外は、職業経験を不問とするのが条件です。同居していれば、どちらかを外します。 - 歓迎条件の一つに「入社後に任せること」を1行足す
歓迎が合否の線ではなく任せ方の目安だと伝わり、少し足りない人が応募をあきらめにくくなります。
よくある質問
Q. 必須条件はいくつまでがよいですか?
決まった数はありません。目安は「欠けていたら会わない」と言い切れるものだけです。わたしたちが求人票を見直すときは、1〜2つまで絞れることが多いです。
Q. 経験者を採りたいとき、「35歳未満」のような年齢の上限は付けられますか?
若年者を対象にした例外(長期勤続によるキャリア形成)で上限年齢を付けるなら、職業経験は問えません。この例外は、職業経験を不問とし、期間の定めのない雇用で募集する場合に限られます。定年を上限とする場合など別の例外もあるため、迷ったら厚生労働省の資料で確かめてください。
Q. 応募資格に「学歴不問」と書いたほうがよいですか?
仕事で学歴を使わないなら、不問と書くほうが候補者の迷いを減らせます。学歴を求める場合は、その理由を仕事の内容で説明できるかを先に確かめてください。
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出典
厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」 mhlw.go.jp
厚生労働省「例外事由に該当する具体例②(3号のイ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合)」 mhlw.go.jp



