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中途採用の学歴要件、企業が”過剰”と見る社員は15.7%──求人票の書き換え方
求人票の応募資格に並ぶ「大学卒以上」。その一行を、最後に誰かが本気で検討したのはいつだったでしょうか。多くの会社で、それは前回の原稿からそのまま引き継がれた一行かもしれません。わたしたちCoachersも、お預かりした原稿でこの欄だけが何年も動いていない、という場面によく出会います。
リクルートワークス研究所が2026年3月に実施し、7月8日に公表した「過剰学歴に関する調査」では、企業の経営者・管理職・人事が「自社の社員のうち、いまの仕事に対して学歴が過剰な人」の割合を平均15.7%と見ていました。おおよそ6〜7人に1人。しかも、学歴要件を下げにくい理由の最多は「賃金・等級・昇進制度が学歴を前提にしているから」(39.2%)でした。
つまり要件は、仕事の必要からではなく社内の制度から決まっていることがある、ということです。ではこの一行を中途採用でどう書き直せば、母集団と歩留まりが変わるのか。一緒に考えてみたいと思います。
出典:リクルートワークス研究所「過剰学歴に関する調査」(2026年3月19〜25日実施・有効回答4,080件/従業員100人以上の企業の経営者・管理職・人事担当者)
求人票の「大学卒以上」は、いま何を測っているのでしょうか
先に結論から言うと、この調査が示しているのは「学歴要件が高すぎる会社が悪い」という話ではありません。要件が、仕事の中身とは別の理由で据え置かれたまま動いていないという構図です。そしてそれは、採用担当者一人の判断で決まっているものでもありません。
過剰学歴(オーバーエデュケーション)とは、その仕事の遂行に通常必要とされる教育水準よりも高い学歴を持って働いている状態のことです。同調査を解説するリクルートワークス研究所のコラム「『働く』の論点」(古屋星斗氏)は、OECDの推計で日本は就業者(25〜65歳・自営業を除く)の35%がこの状態にあたり、OECD平均の23%を大きく上回ると紹介しています。日本の採用が、もともと学歴を手がかりにしやすい構造にあることが分かります。
出典:リクルートワークス研究所「過剰学歴に関する調査」(2026年3月実施・n=4,080)
数字の受け止め方には気をつけたいところです。平均15.7%といっても、分布を見ると「0%」と答えた企業が32.2%あり、3社に1社は該当者なしと見ています。全社に等しく起きている現象ではなく、業種や職種によって濃淡があるということです。同時に「30%以上」と答えた企業も計21.3%あり、起きている会社では相当な規模で起きている、とも読めます。
その要件は、仕事の必要から来ていますか。制度の都合から来ていますか
ここがこの調査のいちばん面白いところだと感じています。学歴要件を下げにくい理由として最も多く挙がったのは、「賃金・等級・昇進制度が学歴を前提にしている」でした(39.2%)。実際、「学歴別に初任給額が異なる」に該当する企業は58.6%にのぼります。
つまり求人票の一行は、現場が「この仕事には大卒の知識が要る」と判断した結果というより、給与テーブルが学歴で分かれているから、そこに合わせて書かれていることがある。これは担当者の手抜きではなく、制度の側の問題です。犯人捜しをしても要件は動きません。一方で、学歴要件そのものはこの1年で「変わらない」が59.6%と最多で、厳格化(計14.0%)と緩和(計12.5%)がほぼ拮抗しています。多くの会社では、まだ検討のテーブルにすら載っていない、というのが実態に近いのかもしれません。
では、据え置かれたままだと何が起きるのか。企業自身が挙げた影響がこちらです。
出典:リクルートワークス研究所「過剰学歴に関する調査」(2026年3月実施・n=4,080)
要件を高く保っておけば安全、とは言い切れないわけです。母集団の入口を狭めたうえに、入ってからの不満や早期離職につながりやすいと企業自身が見ている。中途採用では特にこれが痛い。同調査で「増やしたい採用」として最も多く挙がったのも中途採用(53.1%)でした。いちばん増やしたい枠に、いちばん古い要件が残っている——そんな会社は、決して少なくないように思います。
中途採用の求人票で、学歴の代わりに何を書くか
結論としては、「学歴不問」と書き換えることが答えではありません。学歴という一行が担っていた機能——この仕事は、どのくらいの抽象度で、どのくらい自分で考えて進める仕事なのかを伝える——を、別の言葉で引き受けることです。次の5つを、いまの原稿に当てて見てみてください。
3つ目と5つ目が特に効きます。たとえば「大学卒以上」を外して、「担当顧客の状況を自分で整理し、次の打ち手を提案しながら進めていただきます。前職の業界は問いません」と書く。学歴という代理指標を、仕事の場面そのものに置き換えるだけで、候補者は自分の経験と照らし合わせられるようになります。合う人には届きやすく、合わない人は自分で気づいて離れる。母集団の量だけでなく、質のフィルターとしても働きます。
学歴要件の話は、つい「差別的かどうか」の議論になりがちです。けれどこの調査を読んで感じたのは、もっと手前の話だということでした。要件欄は、候補者にとって最初に会社の判断基準が見える場所です。そこに何年も前の一行が残っていると、会社が何を大事にしているかが、いちばん伝えたい相手に伝わらないまま終わってしまいます。
御社の求人票を開いた一人の候補者は、応募資格の欄を数秒で読みます。そこに「大学卒以上」とあれば、当てはまらない人は問い合わせもせず静かに離れていきます。わたしたちが現場で見てきた限り、その離脱は数字にほとんど残りません。応募が来なかった理由は、応募がないぶん誰にも届かない——ここが学歴要件のいちばん厄介なところだと感じています。
一方、条件を満たしている候補者にとっても、その一行は情報量ゼロです。「この会社は何を見て人を選ぶのだろう」という問いに、学歴の欄は答えてくれません。もし代わりに、任される仕事の場面が具体的に書かれていたら、候補者は自分の経験を並べて「これならやれそうだ」と手応えを持てるかもしれません。要件欄は足切りの装置であると同時に、いちばん熱心に読まれる自己紹介でもあるのだと思います。
わたしたちCoachersがHRブランディングという言葉で考えているのは、こういう地味な一行の積み重ねです。求人広告の原稿で応募資格を書き直すだけでも、届く相手は変わります。派手な採用サイトを作る前に、いま出ている原稿の要件欄を1つ点検してみる。順番としては、そちらのほうが早いことが多いように感じています。
もちろん、賃金・等級制度が学歴前提であれば、求人票だけを変えても入社後にひずみが出ます。制度を変えるには時間がかかりますから、まずは「どの職種なら、いま要件を動かしても制度とぶつからないか」を1つ見つけるところから。全部を一度に変えなくていいのだと思います。
- リクルートワークス研究所「『過剰学歴に関する調査』報告書」(2026年7月8日公表) https://www.works-i.com/research/report/over_qualification_surveys.html
- 古屋星斗「企業から見た『過剰学歴』①総論:ズレはどこで起きているか」リクルートワークス研究所 https://www.works-i.com/column/hataraku-ronten/detail045.html
- 古屋星斗「企業から見た『過剰学歴』②:採用が難しいのは大学卒か高校卒か」リクルートワークス研究所 https://www.works-i.com/column/hataraku-ronten/detail046.html
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