中途採用で資格を参考にする担当者は75.8%──「必須」と書く前に見たい内訳
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中途採用で資格を参考にする担当者は75.8%──「必須」と書く前に見たい内訳

Branding, 2026.07.25 By 中村 尚人

求人票の「歓迎する資格」の欄で、手が止まったことはないでしょうか。書き足すほど応募が減る気もするし、空欄のままだと手を抜いたように見える気もする。わたしたちも原稿をご一緒していて、この欄がいちばん筆の止まる場所だと感じています。

採用担当者405人に聞いた調査では、中途採用で資格・検定を「参考にしている」人は75.8%。やっぱり見られているのか、と思ったのですが、内訳を開くと少し景色が変わりました。その大半は「一定の参考にしている」(61.0%)で、「具体的に考慮している資格・検定がある」と答えた人は14.8%だったのです。

見てはいる。けれど、決め手にはしていない。この微妙な距離感を求人票にどう翻訳するかで、集まってくる人はけっこう変わります。今日は「必須」と書き込む前にできることを、一緒に考えてみたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
中途採用で資格・検定を「参考にしている」採用担当者の割合 75.8%
「具体的に考慮している資格・検定がある」と答えた採用担当者の割合 14.8%
「一定の参考にしている」にとどまる割合(中途採用) 61.0%
新卒採用で資格・検定を参考にしている割合(中途は75.8%) 55.1%

出典:学びのメディア『日本の資格・検定』「中途・新卒採用及び昇格における『資格・検定』の重要度に関する調査」(2026年1月19日〜2月2日実施・集計対象405名)

「資格を見ている75.8%」の中身は、どうなっているのか

結論から言うと、この75.8%は「資格で選んでいる企業が4社に3社ある」という意味ではありませんでした。内訳は「一定の参考にしている」が61.0%、「具体的に考慮している資格・検定がある」が14.8%。大半は、合否を分ける基準ではなく、ゆるやかな参考情報として扱っているということになります。

KEY METRIC / 「この資格を考慮する」と決めている企業の割合
14.8%
中途採用で「具体的に考慮している資格・検定がある」と答えた採用担当者は14.8%。一方で「ほとんど影響しない」も13.8%あり、この2つはほぼ同じ大きさです。つまり明確に効かせている企業と、まったく見ていない企業は、どちらも少数派でした。

出典:同調査(2026年1〜2月実施・n=405)

この調査は2026年1〜2月に実施され、7月に公表されたものです。半年ほど前の数字なので、生成AIの普及で「スキルの見極め方」自体が動いている今、細かい比率は少し変わっているかもしれません。ただ、資格が”合否の線”ではなく”参考の一つ”に置かれているという構造そのものは、そう簡単には動かない部分な気がしています。

中途のほうが新卒より資格を見る。それでも「足切り」にはならない理由

意外だったのは、新卒との差です。新卒採用で資格・検定を参考にしていると答えたのは55.1%。中途の75.8%のほうが、20ポイント以上高いという結果でした。職務経験を軸に見る中途のほうが、資格を見ていないような気がしていたので、これは思い込みだったようです。

COMPARISON / 資格・検定を参考にしている割合
新卒採用
55.1%
「学業成績などとあわせて参考」44.7%+「具体的に考慮している」10.4%。判断材料が少ないぶん、他の情報と束ねて見られています。
中途採用
75.8%
「一定の参考」61.0%+「具体的に考慮している」14.8%。見られている頻度は高いものの、その多くは”参考”の位置にとどまります。

出典:同調査(2026年1〜2月実施・n=405)

なぜ「よく見るのに、決め手にはしない」という扱いになるのでしょうか。ここで一つ、名前のある考え方が手すりになります。シグナリングとは、資格や学歴などを「能力そのものの証明」ではなく「能力を推し量るための信号」として受け取る見方のことです。労働市場を説明するときに繰り返し使われてきた考え方で、資格そのものより、それが指し示す中身のほうを見ている、という整理になります。

出典元の記事でも、資格は「実務経験やスキル、人物面を総合的に見る中で、『その分野の基礎知識がある』『学ぶ姿勢がある』ことを裏づける補助線として機能している」と表現されていました。補助線というのは、なかなか的確な言葉だと感じます。答えそのものではないけれど、あると考えやすくなる線。補助線を、必須条件の位置に置いてしまうと、図の描き方そのものが変わってしまいます。

「必須」と書き込む前に、試したい3ステップ

では求人票の資格欄をどう扱えばいいのか。選考で実際にどう使っているかを、そのまま文面に写し取るのが近道だと思っています。順番はこうです。

1
いま書いてある資格を「必須」「歓迎」「不要」に仕分ける
現場のマネージャーに「この資格がない人は、実務経験が十分でも見送りますか」と一問だけ聞いてみます。ここで即答で「見送る」となるものだけが、本当の必須です。多くの場合、必須欄はかなり軽くなります。
2
残した資格の横に「何ができる人を想定しているか」を一行足す
たとえば「簿記2級」だけで終えず、「月次決算を一人で回した経験がある方(簿記2級程度の知識を想定)」と書き換えます。信号ではなく中身を書けば、資格を持たない実力者も自分を当てはめられます。
3
取得支援や資格手当があるなら、条件欄の奥ではなく本文で触れる
「学ぶ姿勢を見ている」のであれば、学べる環境があること自体が魅力づけになります。入社後に取ってもらう前提なら、必須にせず「入社後に取得された方が多いです」と書くほうが、間口を狭めずに済みます。
C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

資格欄は、求人票のなかでいちばん「埋めやすい」場所だと思います。職種の魅力や仕事の面白さを言葉にするのは時間がかかりますが、資格名は思いついた順に並べられてしまう。だからこそ、意図しないまま条件が積み上がりやすい欄でもあります。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

御社の求人票を開いた候補者は、まず「自分が応募していい相手かどうか」を確かめています。仕事内容に惹かれても、必須資格の一行に自分の持っていない資格が並んでいれば、そこで画面を閉じてしまう。「必須」の二文字が、いちばん採りたかった層を静かに遠ざけていることがあります。

しかも、実務で十分やってきた方ほど自分の経験を控えめに見積もる場面を、わたしたちは何度も見てきました。「たぶん自分では足りない」と判断されると、その方が辞退したことすら企業側には伝わりません。

※統計ではなく、採用支援の現場で候補者・ご担当者から伺ってきた実感にもとづく描写です。

選考の場では「資格はあくまで参考」と言いながら、求人票では条件のように書いてしまう。この小さなねじれを直すことは、HRブランディングの観点でも意味があると感じています。書いてあることと実際の判断が一致している会社は、候補者から見て素直に信頼しやすいからです。

求人広告の原稿を見直すとき、わたしたちがよく時間を使うのもこの部分です。魅力を足す作業の前に、いらない条件を一つ引く。それだけで応募の景色が変わることは、決して珍しくありません。

ACTIONS / 今日からできる3つ
必須欄の資格を、一つでも歓迎欄へ移せないか検討する
「具体的に考慮している資格がある」と答えた担当者は14.8%。多くの現場で資格は合否の線ではなく補助線なので、必須欄に置くほど母集団だけが静かに細ります。
資格名の横に、想定している業務を一行だけ添える
資格はシグナル(能力を推し量る信号)でしかありません。信号の中身を言葉にしておくと、資格を持たない実力者も「これなら自分のことだ」と読めるようになります。
面接で資格に触れるときは「取った理由」を聞いてみる
「一定の参考」と答えた61.0%の多くは、学ぶ姿勢の裏づけとして見ています。持っているかどうかより、なぜ取ったかのほうが情報量は多いかもしれません。
FAQ / よくある質問
Q. 中途採用の求人票で、必須資格と歓迎資格は分けたほうがいいですか?
分けておくほうが安全だと思います。調査では中途採用で資格を参考にする担当者が75.8%いる一方、具体的に考慮する資格があると答えたのは14.8%でした。多くの現場で資格は補助的な材料なので、実際には歓迎条件にあたるものが必須欄に混ざっていることが少なくありません。
Q. 資格を持っている応募者は、実務経験が浅くても評価すべきでしょうか?
資格は能力そのものではなく、能力を推し量る信号(シグナル)として扱うのが現実的だと感じています。出典元の記事でも、資格は実務経験や人物面を総合的に見るなかでの「補助線」と表現されていました。経験の代わりに置くのではなく、経験の読み解きを助ける材料として使うのがよさそうです。
Q. 資格取得支援や資格手当は、求人票に書く価値がありますか?
書く価値はあると思います。資格を「学ぶ姿勢の裏づけ」として見ている企業が多いのであれば、学べる環境があること自体が魅力づけになります。入社後の取得を前提にしている資格なら、必須条件にせず「入社後に取得された方が多いです」と伝えるほうが、応募の間口を狭めずに済みます。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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