中途採用の未経験者は3人に1人へ──実施率84.4%時代の “経歴で絞らない” 母集団づくり
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中途採用の未経験者は3人に1人へ──実施率84.4%時代の “経歴で絞らない” 母集団づくり

Branding, 2026.07.19 By 中村 尚人

中途採用といえば「即戦力」、つまり経験者を採るもの——。長らく当たり前だったこの前提が、静かに揺らいでいます。

リクルートワークス研究所の最新調査では、中途採用を実施した企業の割合は84.4%と過去最高を更新。そして、いま中途で入社する人のうち31.9%、およそ3人に1人が「未経験者」でした。この比率は前年度より広がっています。

経験者の取り合いが激しくなるなかで、企業は経歴のドアを少しずつ開き始めているのかもしれません。「経験3年以上」で母集団を狭めていないか。中核人材を採りたい会社ほど、いちど問い直す価値がありそうです。一緒に考えてみます。

KEY DATA / この記事の数字
2025年度に中途採用を実施した企業の割合(過去最高を更新) 84.4%
中途採用者に占める未経験者の比率(前年度より拡大) 31.9%
中途採用者数の動き(経験者・未経験者ともに) ともに増加

出典:リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)」(2026年6月公表)

中途で入社する3人に1人が「未経験者」という現在地

リクルートワークス研究所が2026年6月に公表した中途採用実態調査によると、2025年度に中途採用を実施した企業は84.4%。調査開始以来の最高値です。人手不足を背景に、規模や業種を問わず中途採用が”標準装備”になったことがうかがえます。そして、そのなかで静かに進んでいるのが、未経験者比率の上昇でした。

KEY METRIC / 中途採用者に占める未経験者の比率
31.9%
中途入社者のおよそ3人に1人が未経験者。しかもこの比率は前年度より拡大し、経験者・未経験者ともに採用実績数が増えています。「経験者だけを取り合う」構図から、少しずつ間口が広がっているサインと読めます。

出典:リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績)」(2026年6月公表)

未経験者比率が上がる背景は、単純な「妥協」ではないと思います。欲しい経験者は各社が奪い合っていて、待っていても採れない。それなら、ポテンシャルのある人を採って自社で育てたほうが早い——そう判断する企業が増えている、という読み方のほうが実態に近いはずです。もちろん未経験者採用には育成コストという但し書きが付きますし、すべての職種で成り立つわけでもありません。ただ、「経歴で母集団を絞りすぎると、そもそも会える人がいなくなる」局面に入っているのは確かなようです。

「経験者を取り合う」から「ポテンシャルに門戸を開く」へ

COMPARISON / 母集団づくりの発想を切り替える
これまで:経験者を取り合う
「経験3年以上」で線を引く
要件で母集団を絞り込むほど、同じ人材を各社で奪い合う。応募は集まらず、採用単価も上がりやすい。
これから:ポテンシャルに開く
「入社後に伸びる素地」で見る
必須要件と「入社後に学べること」を切り分け、未経験者にも活躍イメージを提示。母集団が広がり、育成前提で戦力化する。

切り替えのカギは、求人票にあると考えています。多くの募集要項は、いまも「求める経験・スキル」を長く並べる作りです。しかしその一覧は、経験者にとっては当然でも、ポテンシャル層にとっては「自分は対象外だ」という撤退のサインになりがちです。本当に必須の要件はどれで、入社後に身につけてもらえるものはどれか。ここを切り分けて書き直すだけで、会える人の幅は変わってきます。

そして未経験者に届けるべきは、「未経験歓迎」という言葉そのものより、入社後にどう活躍していくのかの具体的な絵です。どんな研修があり、先輩がどんな道をたどり、半年後・1年後に何ができるようになるのか。その像が描けている求人こそ、ポテンシャル層の背中を押します。候補者の側からこの求人票がどう見えているかは、次の考察でのぞいてみます。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

31.9%という数字を見て思うのは、「未経験者を採る/採らない」という二択の議論は、もう少し解像度を上げられるということです。問いは「未経験者でもいいか」ではなく、「自社のこのポジションで、入社後に伸びる素地とは具体的に何か」。それを言葉にできている会社ほど、経験の有無に振り回されずに人を見極められている印象があります。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

いまの仕事から少し領域を広げたい、と考えている一人の候補者を想像してみてください。御社の求人に惹かれてページを開く。けれど「必須スキル」の欄に自分がまだ持っていない項目が並んでいると、そこで手が止まります。「たぶん経験者向けだよね」と、応募する前に自分で自分を落としてしまうのです。

わたしたちが採用支援の現場で感じるのは、意欲のある人ほど遠慮がちだということ。「入社後に学べます」「まずはここから任せます」の一文があるだけで、その人は自分の応募を許可できます。要件の書き方ひとつが、会える人を静かに増やしたり減らしたりしているのだと思います。

※統計ではなく、採用支援の現場で候補者と接するなかで得た実感にもとづく描写です。

求人広告の原稿という視点で見ると、未経験者採用は「ハードルを下げる」ことではなく、「活躍の道筋を丁寧に見せる」ことだと捉えています。これはHRブランディングそのもので、どんな人に来てほしいかを解像度高く描けている会社ほど、ポテンシャル層からも選ばれています。

わたしたちCoachersも、要件の棚卸しは採用の第一歩だと考えています。経歴で絞る前に、「この仕事で本当に必要な素地は何か」を言葉にする。その一手間が、母集団の広さを決めていくのだと思います。

ACTIONS / 今日からできる3つ
求人要件を「必須」と「入社後に学べる」に仕分ける
募集要項のスキル一覧を、本当に外せない条件と、入社後に習得可能なものに色分けしてみましょう。後者を「歓迎」や「入社後にお任せ」に移すだけで、応募をためらう層が動きやすくなります。
「入社後の活躍イメージ」を求人に1つ足す
研修の流れ、先輩のキャリア例、半年後にできるようになること。未経験者が自分の未来を描ける具体を1つ入れるだけで、「未経験歓迎」の言葉に説得力が生まれます。
見極めの基準を「経歴」から「伸びる素地」へ更新する
面接で何を見るかを、過去の経験だけでなく、学習意欲・再現性・価値観の合致などに広げてみましょう。育成前提の採用は、選考基準の言語化とセットで機能します。
FAQ / よくある質問
Q. 中途採用で未経験者は本当に増えているのですか?
リクルートワークス研究所の「中途採用実態調査(2025年度実績)」では、中途採用者に占める未経験者比率は31.9%で前年度より拡大しました。中途採用を実施した企業は84.4%と過去最高で、経験者・未経験者ともに採用実績数が増えています。
Q. 未経験者採用に踏み出すと、採用の質は下がりませんか?
「経歴を問わない」ことと「質を下げる」ことは別です。必須要件と入社後に学べることを切り分け、面接で「伸びる素地」を見極める基準を用意しておけば、経験の有無に振り回されずに人を選べます。育成コストという但し書きは残るため、職種ごとの見極めは必要です。
Q. 経験者採用をやめるべき、ということですか?
いいえ。経験者採用は引き続き重要です。ただ、欲しい経験者ほど競争が激しく待っていても会えないため、母集団の入口をポテンシャル層にも開くという「選択肢の追加」として捉えるのが現実的です。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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