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管理職の中途採用、転職希望者の76.7%は昇進に前向き──求人票に足す3条件
「管理職は罰ゲーム」。ここ数年、すっかり定着した言い方です。社内で後任のリーダーを探しても手が挙がらない——そんな話は、わたしたちも採用の現場でよく聞きます。
ところが、転職支援サービスを使っている人たちに同じことを聞くと、答えの向きが変わります。ワークポートが2026年4月に実施した調査では、昇進・昇格に意欲的な人が76.7%。同じ「8割」でも、社内で語られる8割とは逆を向いた数字です。
では、なぜ御社の「管理職候補募集」には応募が集まらないのでしょうか。数字をたどっていくと、避けられているのは”管理職”という役割そのものではないかもしれない、という景色が見えてきます。
出典:株式会社ワークポート「管理職志向に関するアンケート調査」(2026年4月21〜28日実施・20〜40代のビジネスパーソン588人・インターネット調査)
「なり手がいない」は、どこの話なのか
管理職のなり手不足は、社内の話として語られることがほとんどです。ただ、中途採用で管理職・マネジメント層を募集するときに向き合う相手は、社内の人ではなく転職市場にいる人です。この2つは、同じ「管理職」という言葉を使っていても、答えが揃いません。
出典:カオナビ タレントインテリジェンス総研(2025年3月実施)
出典:ワークポート(2026年4月実施)
はじめにお断りしておくと、この2つは調査主体も対象も時期も違うので、単純に比べられる数字ではありません。設問の立て方も同じではありません。それでも、採用担当者として見ておきたい示唆はあると感じています。いま動いている人と、動いていない人では、役割の受け止め方が違うかもしれないということです。
社内で手が挙がらないのは、その会社の管理職の姿を毎日そばで見ているからでもあります。逆に、外にいる人はその姿をまだ見ていません。だからこそ、求人でどう見せるかが効いてくる——「社内に候補がいないから、うちには無理だ」と結論を出す前に、外に向けた見せ方を疑ってみる余地は、まだ残っているように思います。
意欲と不安は、同じ人の中に同居している
同じ調査で、もうひとつ目を引く数字があります。昇進に意欲的な人が76.7%いる一方で、管理職になることに不安や負担を感じる人も75.7%。ほぼ同じ大きさです。「やってみたい」と「こわい」が、同じ集団の中に重なって存在しています。
不安の中身は、成果責任やマネジメント業務による業務量の増加が70.1%、上司と部下の板挟みが47.4%、部下の育成・マネジメントが43.4%(いずれも複数回答)。どれも「やりたくない」というより、「引き受けたあとの絵が見えない」という手触りの不安に見えます。
では、何があれば引き受けてもいいのか。ここが求人票にとって、いちばん実用的な部分です。
出典:ワークポート「管理職志向に関するアンケート調査」(2026年4月実施・n=588・複数回答)
1位が報酬なのは、正直なところ予想どおりかもしれません。ただ、2位と3位に注目したいのです。「裁量権の拡大と労働時間の削減」50.9%、「マネジメントに専念できる環境」48.1%——この2つは、お金ではなく仕事の設計の話です。そして、求人票に書けることでもあります。
ちなみに、昇進を希望しない人の理由を見ても「報酬が見合わない」27.0%、「私生活への影響」25.5%と、金額そのものより釣り合いを問う声が並びます。裏を返せば、責任の範囲がはっきりしていれば、釣り合いは判断できる。判断できないから、避ける。そういう順序なのかもしれません。
管理職求人の”不透明さ”を外す4ステップ
管理職の中途採用とは、権限と責任の中身を先に開示して、引き受けられる人を探す採用です。「管理職候補募集」という一行だけでは、候補者は釣り合いを計算できません。求人票に書き足す順番を、4つに分けて整理してみます。
4つとも、報酬テーブルを動かさずに書けることばかりです。もちろん報酬が最大の条件(72.4%)であることは変わりませんが、金額を上げる決裁を待つ前に、書けることがまだ残っている——そう捉えると、少し動きやすくなる気がしています。
この一連の数字を並べていて、わたしたちがいちばん考えさせられたのは、「なり手がいない」を個人の意欲の問題として語ってきたのではないか、という点でした。意欲は76.7%あって、不安も75.7%ある。足りていないのは意志ではなく、引き受けたあとの条件が見えないことのほうかもしれません。だとすれば、これは人の問題ではなく情報の問題で、情報の問題なら、求人原稿の側で手を打てます。
御社の「マネージャー候補募集」を開いた一人を想像してみます。その人は昇進に前向きな76.7%の側にいて、同時に不安を感じている75.7%の側にもいます。求人票で探しているのは、たぶん「やりがい」ではありません。何人を見るのか、どこまで決められるのか、自分の手はどれだけ空くのか——引き受けたあとの生活を、頭の中で試算しようとしています。
わたしたちが現場で聞くのも、「背負うものの重さが読めなかったので、応募は見送った」という趣旨の話です。そして試算できない求人は、嫌われるのではなく、そっと後回しにされます。逆に言えば、数字を1つ、境界線を1本書き足した求人は、その時点で比較の土俵に乗ります。
求人広告の原稿という視点で見ると、管理職ポジションはいちばん”抽象語”が入り込みやすい枠でもあります。「マネジメント全般」「組織づくり」「幅広い裁量」。書いた側は誠実に書いているつもりでも、読む側は何ひとつ試算できません。HRブランディングは、格好よく見せることではなく、こうした一行を具体に置き換えていく地道な作業に近いと、わたしたちは考えています。
そして、これは書き手にとって少しうれしい話でもあります。抽象語を具体に置き換える作業には、追加の予算がほとんどかかりません。すでに社内にある事実を、外向けの言葉に翻訳するだけだからです。
- 株式会社ワークポート「【調査結果】管理職への昇進意欲「ある」が約8割、一方で「不安」も同水準」(2026年4月21〜28日実施・n=588) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000291.000039106.html
- 株式会社ワークポート コーポレートサイト ニュースリリース https://www.workport.co.jp/corporate/news/detail/951.html
- 出典:カオナビ タレントインテリジェンス総研「「管理職は罰ゲーム」か?一般社員の8割が昇進を望まない実態と背景 ―管理職意向サーベイから①―」(2025年3月実施・一般社員n=332) https://ri.kaonavi.jp/20260226/
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