AI活用が進む企業の42.5%が事務職削減──それでも中途採用は減らない理由
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AI活用が進む企業の42.5%が事務職削減──それでも中途採用は減らない理由

Branding, 2026.08.06 By 中村 尚人

「AIが進んだ会社は、そのぶん人を採らなくなっている」——なんとなく、そう思っていました。ところが数字を開いてみると、当たっていたのは半分だけでした。

パーソル総合研究所が2026年3月に実施し、7月30日に公表した「人事部トレンド定量調査2026」によると、AI活用度が高い企業では「一般事務職」を減らす見込みが42.5%。一方で同じ企業群の56.3%は「デジタル・IT職」を増やす見込みだと答えています。そして「中途採用」については、AI活用度にかかわらず増やす見込みの企業が多い、と報告されています。

つまり減っているのは採用の枠そのものではなく、職種の輪郭のほう。だとすると、変えるべきは採用の量ではなく、求人票に書いてある「この仕事は何をする仕事か」の説明かもしれません。今日はそこを一緒に考えてみたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
AI活用度が高い企業のうち、今後「一般事務職」を減らす見込みと答えた割合 42.5%
同じくAI活用度が高い企業のうち、「デジタル・IT職」を増やす見込みと答えた割合 56.3%
人事部が自部門の課題として挙げた「人員不足」の回答率(1位) 45.2%

出典:パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」(2026年3月4日〜16日実施・企業規模300名以上の係長以上/経営企画・経営層 n=2,000)

AIが進んだ会社は、どの職種を減らし、どこを増やしているのか

結論から言うと、減る見込みと増える見込みが、同じ会社の中で同時に起きています。パーソル総合研究所の同調査では、人員増減の見込みをAI活用度別に見たとき、AI活用度が高い企業ほど「一般事務職」を減らす見込みが高く42.5%。その一方で「デジタル・IT職」は56.3%が増員見込みで、リリースでは「IT職の代替までは想定していない可能性」と説明されています。

COMPARISON / AI活用度が高い企業で、増減の向きが分かれた職種
減らす見込み
一般事務職 / 42.5%
定型的な処理が中心の領域から、見込みが先に動いています。ただし「職種がなくなる」ではなく「人数の見込みが減る」という回答であることには注意が要りそうです。
増やす見込み
デジタル・IT職 / 56.3%
AIを使う側の職種は、むしろ半数超が増員見込み。同じ調査では「中途採用」自体も、AI活用度にかかわらず増やす見込みの企業が多いと報告されています。

出典:パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」(2026年3月実施・n=2,000)

この2つを並べると、「AI=人減らし」という単純な図式では説明がつかないことが見えてきます。同じ会社が、片方の職種を絞りながら、もう片方を広げようとしている。採用担当者から見れば、社内の人員計画がこれまでより職種ごとにバラバラな向きを持つようになった、ということかもしれません。

それでも中途採用が減らないのは、なぜでしょうか

同調査で挙げられた経営課題の1位は「人材の確保・採用競争への対応」でした。そして人事部が自部門の課題として最も多く挙げたのは「人員不足」45.2%、次いで「専門性不足」44.6%、「企画構想力の低さ」39.3%と続きます。AIの話をしている当の人事部自身が、まず足りていないのは人だと答えている——ここに、中途採用が減らない理由の一端がありそうです。

もうひとつ、見方の補助線として役に立ちそうな考え方があります。AIは職業をまるごと置き換えるのではなく、仕事を構成する「タスク」の一部から先に置き換わっていく——労働経済の分野では、こうしたタスク単位の見方が繰り返し用いられてきました。この補助線を引くと、今回の数字はきれいに読めます。職業の名前は残るけれど、その中身の配合が変わる。だから「事務職」という名札は消えないのに、人数の見込みだけが先に動く。

採用の現場に翻訳すると、こうなります。募集する職種名は去年と同じでいい。けれど、その職種名の下に書いてある「実際に何をする仕事か」の説明は、去年のままではズレていく。求人票を1年ぶりに開いて、業務内容の欄が一字も変わっていないとしたら、それは会社が変わっていないのではなく、変化を書き写せていないだけ、という可能性があります。

求人票で「仕事の輪郭」を見せる3ステップ

とはいえ、いきなり求人票を全面改訂するのは大変ですよね。まずは業務内容の欄に、3行足すところから始められると思います。AIの導入が進んでいない会社でも同じで、「うちはまだAIを入れていない」という現在地も、書いてあれば立派な情報になります。

1
いまツールに任せている作業を、1行だけ書く
「見積書の下書きと議事録の要約は生成AIで作成しています」程度で十分です。導入していなければ「現時点では手作業が中心です」と書けば、それも読み手にとっては判断材料になります。
2
「だから、人がやること」を場面で書く
抽象的な「企画力が身につきます」ではなく、「AIが出した下書きを、取引先の事情に合わせて詰め直すのが主な仕事です」のように、一日の中の具体的な場面で書くと、候補者は自分がその席に座った姿を想像できます。
3
面接で同じ言葉を使えるか、確認しておく
求人票に書いた業務の説明を、現場の面接官がそのまま口に出せるかを事前に合わせておきます。ここがズレていると、候補者は入社前に「書いてあったことと違う」に気づいてしまいます。
C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

この調査を読んでいて、いちばん考えさせられたのは「増やす見込み」と「減らす見込み」が同じ会社の中に同居している、という点でした。会社の内側では、それは人員計画の話として整理されているのだと思います。けれど外から見ている人には、その整理は見えません。見えるのは、求人票に書かれた業務内容の欄だけです。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

御社の求人票を開いた一人の候補者は、いま職種名だけを見て応募を決めてはいないかもしれません。事務職の求人を見ながら、頭の中では「この会社に入ったら、自分の仕事は3年後どうなっているんだろう」という問いが動いている——そんな気がしています。ニュースで事務職の話題を何度も見ていれば、自然にそう考えるほうが普通ですよね。

わたしたちが現場でよく聞くのは、「面接で聞いたら丁寧に教えてくれた」という声です。裏を返せば、応募を決める段階ではその情報がまだ手元になかった、ということでもあります。面接で話せていることを求人票に1行おろすだけで、迷っていた人が最初の一歩を踏み出しやすくなる場面は、けっこうあるのではないでしょうか。

わたしたちCoachersも、求人広告の原稿を書くとき「その仕事の中身が、いまどう変わりつつあるか」を一行入れるかどうかで、読まれ方がずいぶん変わると感じています。HRブランディングというと大きな話に聞こえますが、実際には、こういう具体の積み重ねなのだと思っています。

AIの話は、まだ答えが出そろっていない領域です。だからこそ「うちはここまで進んでいて、ここからは人の仕事です」と現在地を正直に書ける会社は、その正直さ自体が伝わるのかもしれません。わたしたちも、自社の採用で同じことを試している最中です。

ACTIONS / 今日からできる3つ
いま出している求人票を1本開き、業務内容の更新日を確かめる
職種名は変わらなくても中身の配合は変わる、というのが今回の数字の読みどころでした。1年前の文面がそのまま残っていれば、それが最初の見直しどころです。
現場に「この職種で、去年と変わった作業は何ですか」と一問だけ聞く
求人票を書く人が変化を知らないまま更新するのがいちばん危ないところです。一問に絞れば、忙しい現場でも数分で答えてもらえます。
「AIに任せていること/人がやること」を2行書いて、面接官と共有する
求人票と面接で言葉が揃っていると、候補者の中で情報が食い違わずに済みます。入社後のギャップは、この段階の言葉のズレから始まることが少なくありません。
FAQ / よくある質問
Q. AI活用が進むと、中途採用の人数そのものが減っていくのでしょうか?
今回の調査では、そうはなっていませんでした。パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」では、「中途採用」はAI活用度にかかわらず増やす見込みの企業が多いと報告されています。変化が出ているのは採用の総量ではなく、職種ごとの増減の向きのほうでした。
Q. どの職種で増減の向きが分かれているのですか?
同調査では、AI活用度が高い企業のうち「一般事務職」を減らす見込みが42.5%、「デジタル・IT職」を増やす見込みが56.3%でした。リリースでは、IT職の代替までは想定していない可能性がある、と説明されています。
Q. AIをまだ導入していない会社は、求人票に何も書けないのでしょうか?
「現時点では手作業が中心です」と書くことも、候補者にとっては十分な情報になります。大事なのは進んでいるかどうかより、現在地が書いてあるかどうかだと感じています。書いていない会社が多いぶん、正直に書くだけで差がつく場面もありそうです。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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