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中途入社が馴染めない──2年で倍増した「異動したい」と、求人票で減らせる分
中途で入ってもらった方が、半年たってもどこか浮いている。会議で発言が少ない、雑談の輪に入っていない。「うちには馴染めなかったのかもしれない」「そのうち辞めるかもしれない」──そんな見立てをしたことは、ないでしょうか。
ところが、リクルートマネジメントソリューションズが2025年8月に実施した調査(従業員500人以上の企業に中途入社した1〜3年目・30〜49歳、n=1,109)を見ると、少し違う絵が出てきます。「近い将来、他の会社への転職も考えたい」人は2023年の29%から23%へ、むしろ減っていました。かわりに倍増していたのが「他の部署に異動したい」15%→30%です。
辞めたいのではなく、置かれた場所が違うと感じている。だとすると、直す場所は入社後の面倒見よりもう少し手前──求人票と、任せる仕事の伝え方のあたりかもしれません。今日はそこを一緒に見てみたいと思います。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ「キャリア入社者のオンボーディングと組織適応に関する現状把握調査」(2025年8月18〜29日実施・n=1,109・従業員500人以上の企業に中途入社した入社1〜3年目の30〜49歳/2023年調査との比較)
中途入社の人が離れたがっているのは、会社ではなく「いまの部署」かもしれません
中途入社1〜3年目の人が「馴染めていない」ように見えるとき、その気持ちの向き先は転職ではなく異動であることが増えています。今回の調査では、「他の部署に異動したい」を選んだ人が2023年の15%から30%へと倍増する一方、「近い将来、他の会社への転職も考えたい」は29%から23%へ減っていました。会社を離れたい人が増えたのではなく、いまの持ち場が合わないと感じる人が増えた、という形です。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ「キャリア入社者のオンボーディングと組織適応に関する現状把握調査」(2025年8月実施・n=1,109)※▲▼は増減の向きを示しています
この3つを並べると、よくある読み違いが見えてきます。中途入社の人が沈んでいると、つい「転職を考えているのでは」と身構えて、待遇の話や引き止めの話を用意してしまう。けれど数字の上では、その心配のほうがやや減っていて、増えているのは「この部署ではないところで働きたい」という気持ちのほうでした。会社への評価と、持ち場への納得は別物だということかもしれません。
なお、この調査の対象は従業員500人以上の企業に入った30〜49歳です。異動の選択肢が多い環境だからこそ「異動したい」という形で表に出た、という面はあると思います。異動先が少ない会社では、同じ気持ちが別の出方をする可能性があります。また調査自体は2025年8月の実施なので、いまの数字はもう少し動いているかもしれません。ただ、持ち場が合わないという感覚が入社1〜3年目に集まりやすいこと自体は、規模や年によらず起きることのように感じています。
馴染めるかどうかは、入社日より前にかなり決まっています
中途入社者が持ち場に納得できるかどうかは、入社後のフォローだけでなく、入社前にどこまで仕事の現実を聞けていたかに左右されます。同じ調査で、入社前に仕事の良い面も大変な面も十分に伝えられていた(RJP=現実的職務予告が十分なレベルで行われていた)と感じている人は、15%でした。
出典:同調査(2025年8月実施・n=1,109)
RJPという言葉は、採用の世界では昔からあるものです。良いことばかりを見せて採ると、入社後の落差でつまずきやすい。だから大変な面もあらかじめ渡しておく、という考え方です。名前がついていると当たり前に聞こえますが、実際に「十分にできていた」と受け取られているのが15%という数字を見ると、意図の問題というよりどこにどう書くかの問題として残っているのだと思います。
同じ調査では、「想定していた職務内容と違いはなかった」と答えた中途入社者は31%でした。裏を返せば、7割近くの人が入社前後で何かしらの違いを感じている。ここが、のちのち「この部署ではないかもしれない」に育っていく入口なのだと思います。求人票と面接で渡せる情報の粗さが、半年後の異動希望として返ってくる、という言い方もできそうです。
「即戦力だから放っておいても立ち上がる」が、少しずつ合わなくなってきました
中途入社者が最初の成功体験を得るまでの期間は、以前より後ろにずれています。同調査では、入社後に初めて手応えを感じた時期として、2023年は「3か月未満」が最も多かったのに対し、2025年は「半年〜9か月未満」が最も多くなっていました。3か月で判断すると、まだ助走の途中にいる人を「思ったほどではなかった」と見誤ることになります。
出典:同調査(2025年8月実施・n=1,109/2023年調査との比較)
背景として、同じ調査では採用時の期待の置き方にも変化が出ています。「専門性重視」と答えた比率は2023年に比べて15%減っていました。専門性ひとつで切り出して採るのではなく、周囲との連携も含めて期待する採り方へ寄っている、と読めます。連携込みで期待するなら、立ち上がりに時間がかかるのは自然なことでもあります。要件のつくり方が変わったのに、立ち上がりを測る物差しだけが3か月のまま残っている。ズレはそこにあるのかもしれません。
この調査はオンボーディングや人材育成を支援している会社によるものなので、「受け入れ支援が要る」という方向に読める数字が並んでいる点は、頭の片隅に置いておいてよいと思います。ただ同じ調査の中で転職意向は下がってもいて、悪化一辺倒の絵ではありません。わたしたちが気になったのは深刻さの度合いよりも、気持ちの向き先が「転職」から「異動」へ移っていたことのほうでした。
「馴染めない」という言葉は、どうしても人の相性の話に聞こえます。あの人は社風に合わなかった、うちのやり方に馴染まなかった、というふうに。けれど今回の数字を見ていると、相性というより、入社前に渡した情報の粗さが半年後に形を変えて出てきているように見えます。犯人を探す話ではなく、入口の設計の話として置き直せるなら、そのほうが動きやすいのではないかと思っています。
御社の求人票を開いた一人の候補者は、仕事内容の欄を読みながら、入社後の自分の一日を頭の中で組み立てています。誰と働くのか、最初の3か月で何を任されるのか、大変なのはどのあたりか。そこに書かれていないことは、書かれていないまま入社日を迎えます。今回の調査で「想定していた職務内容と違いはなかった」と答えたのは31%でした。
わたしたちが現場で聞くのも、「話が違う」という強い言い方より、「そこまでは聞いていなかった」に近い言い方が多い印象です。隠していたわけではなく、書く欄がなかっただけ、ということもよくあります。だとすれば、求人票に一行足すだけで減らせる部分は、思っているより広いのかもしれません。
わたしたちCoachersも、求人広告の原稿をお預かりするとき、良いところを並べたくなる気持ちと毎回向き合っています。ただ、原稿の仕事内容欄に「この仕事の大変なところ」を一行だけ入れると、応募数はさほど変わらないのに、面接での話が具体的になることがあります。HRブランディングというと外向きの見せ方の話に聞こえますが、入社後に効いてくるのは、むしろ見せなかった部分のほうなのだと思います。
中途で採る一人は、多くの会社にとって「一人ぶん」以上の意味があります。だからこそ、立ち上がりの物差しと、入口で渡す情報。この2つを見直すところからで十分なのではないかと、わたしたちは考えています。
- リクルートマネジメントソリューションズ「『キャリア入社者のオンボーディングと組織適応に関する現状把握調査』の分析結果を発表」(2026年2月20日発表/調査実施:2025年8月18〜29日・n=1,109) https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/2233097724/
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