中途採用の助成金は1人20万円──受け取る3条件と、求人票に出るところ
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中途採用の助成金は1人20万円──受け取る3条件と、求人票に出るところ

Branding, 2026.08.21 By 中村 尚人

中途採用に助成金がある、と聞いて金額だけ確認して閉じたことはないでしょうか。わたしたちCoachersも、長いあいだそうでした。書類が多そうだ、という印象が先に立っていました。

ただ、支給要件を最後まで読むと様子が変わります。国が1人あたり20万円を出す条件は、中途採用を増やすこと、前職より賃金を5%上げること、半年以内に辞める人を2割未満に抑えること。お金の話というより、採用のやり方そのものへの条件でした。

KEY DATA/ この記事の数字
GRANT / 1人
20万円
通常助成の額
WAGE / 前職比
+5%
賃上げの下限
EXIT / 6か月
20%未満
早期離職の上限

出典:厚生労働省「早期再就職支援等助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-」(令和8年4月8日改正版)。20万円は支給対象者1人あたりの通常助成額で、1事業所1年度あたり20人分が上限。成長要件を満たす事業所は1人あたり10万円が加算される。「+5%」は前職の賃金と雇い入れ後6か月間の各賃金支払日を比べた上昇幅、「20%未満」は支給対象者のうち雇い入れから6か月以内に離職した人の割合。

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中途採用の助成金は、いくら出るのでしょうか

中途採用そのものを対象にした助成金として、いま中心にあるのが厚生労働省の「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」です。支給額は、対象になった人1人につき20万円です。

一定の成長性が認められる事業所であれば、1人につき10万円が加算されます。合わせて30万円という計算になります。

上限は1事業所あたり1年度で20人分。3人が対象になれば60万円、加算まで届けば90万円です。採用に回せる予算としては、小さくない額だと思います。

  COMPARISON / 通常助成と加算のちがい
通常助成
20万円 / 1人
中途採用計画の提出から賃金5%アップまで、支給要件をすべて満たした場合。1事業所1年度あたり20人分が上限です。
成長要件加算
+10万円 / 1人
通常助成の要件を満たしたうえで、ローカルベンチマークの財務分析(総合評価点)が「B」以上か、直近2年度を比べて給与等受給者一人あたりの平均受給額を5%以上上げている場合。

厚生労働省「早期再就職支援等助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-」(令和8年4月8日改正版)

加算の判定に出てくるローカルベンチマークは、経済産業省が公開している経営状態の把握ツールです。売上増加率や営業利益率など6つの財務指標を入れると、A〜Dの4段階で評価が出ます。

ただ、金額よりも読みごたえがあるのは要件のほうでした。この助成金は「中途採用をした」だけでは出ません。

受け取る条件は、3つに畳めます

中途採用拡大コースの支給要件は、大きく3つに畳めます。中途採用を増やすこと、賃金を前職より5%以上上げること、半年以内に辞める人を2割未満に抑えることです。

1つ目は中途採用率です。計画期間中の中途採用率が、前年の同じ時期より5ポイント以上高いこと。計画期間を1年にする場合は、期間中の中途採用率が50%以上でも構いません。

2つ目が賃金です。前職で支払われていた賃金と、雇い入れ後6か月間の各賃金支払日の賃金を比べて、いずれも5%以上高いこと。

ここでいう賃金は「毎月決まって支払われる賃金」で、時間外手当と休日手当は含みません。残業代を足して5%に届かせる、という組み方はできない読み方になります。

3つ目が定着です。支給対象者のうち、雇い入れの日から6か月以内に離職した人の割合が20%未満であること。

採って、上げて、続く。3つ目まで読んで、この制度が何を後押ししようとしているのかが少し見えた気がしました。国は採用を「採れたか」ではなく「続いたか」で測っています。

この3つの手前に、事業所側の前提がいくつか置かれています。申請を考えるなら、先にここを確かめておくと動きやすいです。

  CHECKLIST / 動く前に確かめる5点
中途採用計画を、採用を始めるに労働局へ出す段取りになっている
中途採用者に適用する雇用管理制度が、新規学卒者に適用するものと同じである(労働時間・休日・雇用契約期間・評価・処遇・福利厚生など)
計画期間を6か月か1年で決めてある(中途採用率50%以上のほうを使うなら1年のみ)
採る人が、期間の定めのない労働者(パートタイムを除く)で、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者にあたる
常時雇用する労働者が300人を超えるなら、中途採用比率を公表している

ガイドブックの支給要件から、動き出す前に効くものを抜き出しています。要件はこれで全部ではありません。実際の判断は管轄の労働局・ハローワークにご確認ください。

申請の流れ──計画を出すのが先です

この助成金でいちばん間違えやすいのは順番です。採ってから申請するのではなく、採る前に計画を出します。

1
中途採用計画をつくる
採用予定の職種と予定者数を決め、計画期間を6か月か1年で置きます。あわせて、中途採用者に使う雇用管理制度を新卒者と同じ形に整えます。
2
計画を管轄の労働局へ提出する
ここが起点になります。常時雇用する労働者が300人を超える場合は、この時点で中途採用比率を公表している必要があります。
3
計画期間中に採用し、賃金を前職より5%以上上げる
前職の賃金は、本人の同意を得たうえで給与明細や離職票などで確認します。求人票の給与欄をつくる段階から、この水準を意識しておくほうが後で楽です。
4
雇い入れから6か月の賃金支払いを終えて、支給申請する
6か月間の各支払日で5%以上を満たしているか、離職者が2割未満に収まっているかが、ここで見られます。申請期間や必要書類は労働局・ハローワークでご確認ください。

つまり、この助成金を使おうと思った時点でやることは、申請書を取り寄せることではありません。これから出す求人の条件を決め直すことです。

条件は、求人票のどこに出るのでしょうか

3つの条件のうち候補者の目に触れるのは、求人票の給与欄と待遇欄の数行です。助成金の名前はどこにも出てきません。

前職より5%高い賃金を出せるかどうかは、給与欄の下限にそのまま出ます。ここは社内の等級表と直結するので、いちばん動かしにくい場所でもあります。

厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、転職して前職より賃金が「増加」した人は40.5%でした。「変わらない」28.4%、「減少」29.4%です。

合わせて57.8%、およそ6割は転職しても賃金が同じか下がっています。5%の上乗せは、転職市場で当たり前の相場というわけではなさそうです。

2つ目の条件は、待遇欄と福利厚生欄に出ます。中途採用者の雇用管理制度を新卒者と同じにする、というのは、労働時間や休日、評価・処遇、福利厚生を入り口で分けないという意味です。

そして3つ目の「半年で2割未満」は、入社後の話に見えて、実は求人票の正確さの話でもあります。書いてある仕事と実際の仕事がずれていれば、半年はもちません。

助成金の要件を並べていくと、そのまま求人票の点検表になっていく。読み進めながら、そんな感想を持ちました。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

助成金の話は、経理や労務の話として人事の外に置かれがちです。ただこのコースに限っては、要件のほとんどが採用のやり方に関わっていました。

前職より賃金を上げる、中途と新卒で制度を分けない、半年で辞めさせない。並んでいる要件を言い換えると、「中途で入る人にとって割のいい会社であること」に近づいていきます。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

御社の求人票を開いた候補者は、助成金の存在を知りません。見ているのは給与欄の数字と、待遇欄に何が並んでいるかだけです。

そしてその人は、いまの給与を知っています。下限が今より低ければ、条件面は読まずに閉じられます。転職で賃金が増えた人が40.5%にとどまる背景には、そもそも上がる求人に出会えていない、という部分もあるのかもしれません。

待遇欄も同じで、「中途入社の方も同条件」の一行があるかないかで、読まれ方は変わります。わたしたちが現場でよく聞くのは、面接の終わりに「評価は新卒の方と同じ基準ですか」と聞かれた、という話です。

助成金の要件は、たまたま候補者が見ている場所と同じところを指しています。制度に合わせにいく作業が、そのまま求人票の見直しになるのは、そういう理由なのだと思います。

お金の制度に合わせて採用を変えるのは、順番が逆に見えるかもしれません。ただ、社内で給与や待遇の話を動かそうとするとき、「助成金の要件がこうなっている」は使いやすい理由になります。

求人広告の原稿を書く段階で給与欄が決まらない、という相談はよくいただきます。そのときHRブランディングの視点で見ると、給与欄は条件の告知ではなく、どんな人と働きたいかの表明でもあります。

なお、助成金の要件は改正されます。ここで触れたのは令和8年4月8日改正版のガイドブックの内容です。実際に使うときは、必ず最新の要領と管轄の労働局でご確認ください。

ACTIONS / 今日からできる3つ
直近1年の中途採用率を出してみる
期間中に雇い入れた人のうち、新卒等以外が何割かを数えます。助成金の可否だけでなく、300人超の企業には公表義務がある数字なので、遅かれ早かれ必要になります。
出している求人票の給与下限を、前職相場と並べて見る
転職して賃金が増えた人は40.5%です。下限が候補者の現在地を下回っていると、助成金の前に応募そのものが来ません。5%という水準は、その意味でも実務的な目安になります。
採用を動かす前に、労働局へ計画の出し方を聞く
このコースは「採ってから申請」ではなく「採る前に計画」です。順番が逆になると対象外になり得るので、間に合うかどうかを先に確かめておくのが確実です。
FAQ / よくある質問
Q. 中途採用の助成金は、採用したあとでも申請できますか?
中途採用拡大コースの支給対象になるのは、中途採用計画の期間中に雇い入れた人です。計画は労働局へ提出するものなので、採用を先に済ませてしまうと対象にならない場合があります。動く前に管轄の労働局・ハローワークへ確認するのが確実です。
Q. 「賃金を5%以上上げる」の賃金には、どこまで含まれますか?
ガイドブックでは「毎月決まって支払われる賃金」とされ、時間外手当と休日手当は除かれます。基本給と、労働と直接の関係があって毎月変動しない諸手当(役職手当・資格手当など)が対象です。残業代を足して5%に届かせる組み方はできません。
Q. 中小企業でも中途採用の助成金は使えますか?
規模による除外はありません。むしろ常時雇用する労働者が300人を超える事業主は、中途採用比率の公表が要件に加わります(労働施策総合推進法27条の2にもとづく公表)。300人以内であれば、この公表要件はかかりません。
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REFERENCES
中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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