スカウトを送る速さは、この数年で桁違いになりました。文面はAIが数十秒で書き、送信は一括で終わります。それなのに、返ってくる数は増えていない。
スカウト代行のダイレクトソーシングが自社の運用実績を集計した数字では、平均返信率は2018年の16.2%から2025年は6.7%。では、AIで書くのをやめれば戻るのでしょうか。転職経験者と転職検討者337人に聞いた調査を読むと、候補者が見ていたのはそこではありませんでした。
10.1%
43.0%
38.2%
出典:株式会社フォワード「採用・転職場面におけるAI活用コンテンツへの受容意識調査」(調査期間2026年6月/転職経験がある、または現在転職を検討している20〜65歳の会社員 n=337・複数回答を含む)
返信率は7年で16.2%から6.7%へ
スカウトの平均返信率は、2018年の16.2%から2025年は6.7%まで下がっています。スカウト代行のダイレクトソーシングが、創業以来の70万件規模の運用実績を集計した数字です。
同社も断っているとおり、これは同社が運用した案件の集計であって、媒体全体の平均ではありません。それでも、7年という長さで同じ物差しが並ぶデータはあまり多くありません。
出典:株式会社ダイレクトソーシング「スカウト返信率データ完全公開【2025年版】」(2025年12月4日公開・同社の70万件規模のスカウト運用実績を集計)
並べてみると、落ちきったのは2022年までだと分かります。そこから2025年までは7%前後で、ほぼ横ばいです。
つまり「AIが普及したから急に落ちた」わけではなさそうです。落ちたのはもっと前で、送信の総量が増えていった時期と重なります。
ここは書き手の努力不足の話ではないように思います。1通あたりの送信コストが下がるほど、受信箱の側が先に飽和する。構造の話です。
なお、この集計は2025年時点のものです。今はもう少し動いているかもしれません。ただ「送る側が速くなるほど、1通の重みは下がる」という向きは、しばらく変わらない気がしています。
嫌われていたのは、AIではなかった
AIで作られたスカウトや求人票を「どのような内容であっても受け入れられない」と答えた人は10.1%でした。株式会社フォワードが2026年6月に、転職経験者・転職検討者337人に聞いた調査です。
無条件で拒む人が10.1%いる一方で、「条件にかかわらず、AIで作られていても特に気にしない」人も9.8%います。残りの多くは、受け入れるための条件を挙げていました(複数回答)。最も多かったのは「AIを手抜きではなく、自分を深く理解するために使うなら歓迎」で43.0%です。
次いで「自分のキャリアパス等について具体的に言及されていれば歓迎」が39.2%、「自分の職務経歴書が、正確に理解されている時は受け入れられる」が35.6%と続きます。
文面の見え方でも差が出ています。同じ調査で、AIらしさの度合いを変えた文面への印象を聞いた結果が次のとおりです。
出典:株式会社フォワード「採用・転職場面におけるAI活用コンテンツへの受容意識調査」(2026年6月・n=337)
読み方には注意もいります。個別化しても、約半数は「どちらともいえない」のままです。文面を直せば返信が来る、という単純な話ではなさそうです。
それでも、拒否の理由が「AIを使ったこと」ではなく「自分に向けて書かれていないこと」にある、という向きははっきり出ています。
条件は「読んだ形跡があるか」の一点
受け入れられる条件として挙がった3つは、言い方は違っても同じことを指しています。「この会社は、わたしの経歴を読んだうえで書いているか」です。
深く理解するために使うなら歓迎(43.0%)、キャリアパスに具体的な言及があれば歓迎(39.2%)、職務経歴書が正確に理解されていれば(35.6%)。すべて「読んだ形跡」の言い換えです。
そしてこの形跡だけは、AIに任せきれない部分かもしれません。候補者の経歴のどこに目を留めるかは、送る側が決めることだからです。
逆にいえば、人が決めるのはそこだけで足ります。読んだ形跡さえ材料として渡せば、整った文章に組み立てるのはAIのほうが速い。
スカウト文面そのものではなく、その手前で人が決める3行の型です。ここが埋まっていれば、あとの文章化はAIに任せられます。
② 自社との接続:〈その経験が自社のどの仕事で効くか〉
③ 今声をかける理由:〈なぜ他の時期ではなく今か〉
② 当社は今2拠点目を立ち上げ中で、計画の型がまだない
③ 来春の稼働までに設計を決めたいので、今の時期に相談したい
② 当社も見積と請求が属人化していて、同じ手順を踏みたい
③ 来期から経理を内製に戻すため、設計段階から入ってほしい
記入例は書き方を示すための架空の文面です。
わたしたちCoachersも、スカウトの文面をどこまで作り込むかで迷ってきました。時間をかけた一通と、数を打つ十通。どちらが正しいという話ではなく、両方が要る日もあります。
受信箱には、同じ週に届いた似た文面が何通も並んでいます。開いた候補者が数秒で見ているのは、自分の経歴が一行でも書かれているかだけかもしれません。実際、同じ調査で「職務経歴書が正確に理解されている時は受け入れられる」と答えた人が35.6%いました。
わたしたちが現場で聞くのも、「AIで書いたから嫌」という声より「自分宛てじゃなかったから閉じた」という声のほうです。ちなみに候補者側も、転職活動でAIを「すでに使っている」10.7%・「使ってみたい」38.9%。AIを使うこと自体は、もう互いに前提になりつつあるのだと思います。
そう考えると、スカウトはメールの技術というよりHRブランディングの一部です。誰に、何を見て声をかける会社なのか。その一通が、候補者にとっては最初の自己紹介になります。
求人広告の原稿づくりでも同じことが起きます。整った文章を先に作るより、「誰のどの経験に向けて書くか」を先に決めたほうが、結果として言葉は短く済むことが多い気がしています。
- 株式会社フォワード「採用・転職場面におけるAI活用コンテンツへの受容意識調査」(2026年7月24日公開) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000117983.html
- 株式会社ダイレクトソーシング「スカウト返信率データ完全公開【2025年版】」(2025年12月4日公開) https://directsourcing-lab.com/blog/direct_recruiting/ranking/



