生成AIで書類選考の見極めが難しい企業7割──中途採用の”選び方”を組み直す
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生成AIで書類選考の見極めが難しい企業7割──中途採用の”選び方”を組み直す

Branding, 2026.07.12 By 中村 尚人

整った職務経歴書が、いつもより少しだけ多く届く。文章は読みやすく、志望動機の筋も通っている——けれど、いざ会って話すと「書類の印象と、なんだか違う」。そんな小さな違和感を覚えたこと、ありませんか。

背景には、生成AIの普及があります。レバレジーズが2026年2月に新卒・中途採用の担当者1,625名へ行った調査では、「生成AIの影響で、書類だけで人物を見極めるのが難しくなった」と答えた企業が69.7%にのぼりました。応募書類が”底上げ”され、文章の巧拙では差がつきにくくなっている、ということかもしれません。

では、書類選考はもう意味がないのでしょうか。調査を読むと、企業の動きは「やめる」より「重心を移す」方向に見えます。書類が効きにくくなった時代に、中途採用でどう人を見極めるか——”対話”と”母集団”という2つの手がかりから、一緒に考えてみたいと思います。

生成AIの影響で「書類だけで人物を見極めるのが難しくなった」と答えた企業は69.7%。応募書類の”文章の巧拙”では差がつきにくくなっている。

半数超(53.2%)が書類の通過基準を緩め、33.5%は書類選考を廃止して面接へ。合計86.7%が”間口を広げる”方向に動いた。

一方でAIスコアだけで合否を決める企業は38.1%にとどまり、58.3%は人間が最終確認。見極めの重心は「対話」と「母集団の質」に移りつつある。

「書類で人を見極めるのが難しい」が、なぜ7割に届いたのか

生成AIの普及で、応募書類の景色が変わりつつあります。候補者はChatGPTなどを使って職務経歴書や志望動機を整え、読みやすく筋の通った文章に仕上げられるようになりました。結果として、文章そのものの巧拙で差がつきにくくなっています。

KEY METRIC
69.7%
見極めが困難に

「書類だけで人物を見極めるのが難しくなった」
生成AIの影響でそう答えた企業は69.7%。書類が読みやすくなったからこそ、”文章の裏にある本人”が見えにくい——という声が、約7社に5社に届いたことになります。

ここで注意したいのは、これが「候補者が悪い」という話ではないことです。応募書類を整えるためにツールを使うのは、いまや自然な準備行動です。企業側も同じで、書類の要約や整理にAIを活用しています。候補者もAI、企業もAIという構図が生まれ、書類は少しずつ”通過儀礼”に近づいているのかもしれません。だとすれば、見極めの力点をどこに置き直すか——が次の問いになります。

企業はどう動いた?──書類選考をめぐる3つの変化

同じ調査では、企業が実際にとった対応も見えてきます。ポイントは、多くが書類選考を「廃止する」のではなく、基準を緩めて面接の間口を広げる方向に動いていることです。

IMPACT MAP
書類で人物を見極めるのが難しくなった69.7%
通過基準を緩和し、面接に進む人数を増やした53.2%
書類選考を廃止し、応募者全員が面接へ33.5%

「基準を緩めて面接を増やした(53.2%)」と「書類選考を廃止した(33.5%)」を合わせると、86.7%が”間口を広げる”方向に動いています。狙いのひとつは、導入効果の1位に挙がった「埋もれた才能の発掘(62.4%)」。書類の段階でこぼしていた人を、会って確かめる場に引き上げよう、という発想です。これは選考というより母集団の設計に近い動きだと感じています。

AIに任せきり、ではない──”人が見る”は消えていない

「間口を広げる」と聞くと、判断まで機械に丸投げする姿を想像するかもしれません。けれど実態は少し違います。効率化を進めつつも、最後は人が確かめる——という企業が多数派でした。

MYTH vs FACT
MYTH
AI面接やAIスコアを入れれば、合否はもう機械に任せられる。

FACT
AIスコアだけで自動判定する企業は38.1%にとどまる。残る58.3%は、ボーダー層を人が確認するハイブリッド型や、全応募者を人が見る運用を選んでいる。効率化と”人が見る”の両立が、いまの現場です。

つまり、AIが担うのは「間口を広げ、候補を整理する」ところまで。“この人と働きたいか”を確かめる仕事は、まだ人の手に残っています。書類で差がつきにくくなったぶん、その確かめの場——つまり面談・面接での対話の質が、これまで以上に効いてくる、と言えそうです。なお、この調査は2026年2月時点のもの。生成AIの進化は速いので、いま同じ質問をすればまた違う数字が出るかもしれませんが、”人が最後に見る”という骨格はしばらく普遍的に思えます。

よくある疑問

FAQ
Q
生成AIが広がると、書類選考は意味がなくなりますか?

A
「なくす」より「重心を移す」動きが主流です。書類で見極めが難しいと答えた企業は69.7%ですが、廃止は33.5%にとどまり、多くは基準を緩めて面接の間口を広げています。書類は”足切り”より”参考情報”に近づいている、と捉えると現実に合います。

Q
AI面接やAIスコアに、合否判断を任せきりにして大丈夫?

A
任せきりは少数派です。AIスコアだけで自動判定する企業は38.1%にとどまり、58.3%は人間が最終確認するハイブリッド型や全応募者チェックを採用しています。効率化と”人が見る”の両立が、いまの実態です。

Q
中途採用でも、書類選考はやめたほうがいい?

A
中核人材の採用では、書類廃止が現実的でない場面も多いです。書類の”文章の巧拙”では測りにくくなった前提で、①面談で再現性・価値観を掘る ②そもそもの母集団の質を上げる(求人原稿・採用サイトで狙って集める)——の2点へ力を移すのが現実的だと感じています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

候補者もAI、企業もAI——という構図が進むと、書類そのものでは差がつきにくくなります。だとすると、勝負どころは書類の”手前”と”後ろ”に移る気がしています。手前は「誰に来てもらうか」、後ろは「会って何を確かめるか」。この2つは、AIでは平準化しにくい領域です。

とりわけ手前の”誰に来てもらうか”は、HRブランディングの核心そのものです。求人原稿や採用サイトで、仕事の手触りや一緒に働く人の顔が具体的に伝わっているほど、”その会社に惹かれた人”が集まりやすくなります。整った母集団は、書類選考に頼らずとも見極めの負担を軽くしてくれる、と感じています。

書類選考を効率化することと、人を見る目を手放すことは、別物です。わたしたちCoachersも、AIに任せられる工程は任せながら、”この人と働きたいか”を確かめる対話にこそ時間を使いたいと考えています。

ACTIONS
“文章のうまさ”で足切りしていないか見直す
AIで整えられる部分(構成・言い回し)ではなく、事実・実績・再現性が読み取れるかで判断する観点に切り替えてみる。

一次面談を”見極めの主戦場”にする質問を1つ足す
書類で分からない再現性や価値観は、対話で具体エピソードを掘る。「直近で一番うまくいった仕事は?なぜ?」など、掘れる質問を用意する。

“誰に来てほしいか”を求人原稿・採用サイトで具体化する
母集団の質が上がれば、書類選考の負担は自然と軽くなる。ターゲット像を一人まで絞り、その人に響く言葉で入口を整える。

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