企業の50.6%が正社員不足、なお続く採用難──賃金競争に乗らず「選ばれる中途採用」へ
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企業の50.6%が正社員不足、なお続く採用難──賃金競争に乗らず「選ばれる中途採用」へ

Branding, 2026.07.14 By 中村 尚人

 

「求人票の給与、また上げますか?」――最近、社内でこんな相談が増えていないでしょうか。人が採れないと、まず条件を上げたくなります。

ところが足元の数字は、少し違う景色を見せています。帝国データバンクの調査(2026年4月・全国10,538社が回答)では、正社員の人手不足を感じる企業は50.6%。前年同月から0.8ポイント下がり、“数”の逼迫はわずかに和らいでいます。それでも「採れない」という声は、むしろ根強く聞こえてきます。

数は緩んだのに、採用は苦しい。この一見あべこべな状況の正体と、賃金の上げ合いに乗らずに選ばれるための構えを、今日は一緒に考えてみたいと思います。

正社員の人手不足を感じる企業は50.6%。前年同月から0.8pt下がり、“数”の逼迫はわずかに和らいでいます(帝国データバンク・2026年4月/n=10,538)。
一方で現場の声は「スキル要件に合う人の確保は依然困難」「確保のため単価が上がっている」。数は緩んでも“欲しい質”は採れず、賃金だけ上がりやすい構図です。
賃金の上げ合いに乗るより、求人の具体性・採用サイト・面接体験で「選ばれる」魅力づけに投資するほうが、限られた候補者に届きやすくなります。

人手不足感は「50.6%」、実はわずかに和らいでいる

まず全体像から。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」によると、正社員の不足を感じている企業は50.6%でした。なお半数は超えているものの、前年同月(51.4%)からは0.8ポイント低下。非正社員の不足感も28.3%(前年同月30.0%)と、こちらも下がっています。全国23,083社を対象に10,538社が回答した、規模の大きな調査です。

KEY METRIC
50.6%
正社員が「不足」
半数はなお不足、でも前年比では-0.8pt
数の逼迫は、ピークからわずかに落ち着き始めています。にもかかわらず「採用がラクになった」という実感はほとんど聞こえてきません。数字と実感のあいだに、ズレがあるのです。

このズレの正体は、同じ調査に添えられた企業の声にあります。「スキル要件に合致する要員の十分な確保は、依然として困難」「人員確保のために単価が徐々に上がっている」。つまり、頭数としての“量”は少し緩んでも、本当にほしい力量の人は相変わらず採れず、確保のために賃金だけが押し上げられている――多くの現場の実感に近いのではないでしょうか。

不足が特に重い業種では、6割超が「足りない」

全体では50.6%でも、業種によって温度差は大きく開きます。人手不足感が6割を超える業種を並べると、採用競争の激しさが見えてきます。

IMPACT MAP
情報サービス66.7%
 
運輸・倉庫65.9%
 
メンテナンス・警備・検査65.9%
 
建設65.7%
 
(参考)全体・正社員50.6%
 

情報サービス、運輸・倉庫、メンテナンス・警備・検査、建設――いずれも専門性や現場対応が求められ、代わりの人をすぐには立てにくい仕事です。こうした業種ほど、賃金だけを上げても採り合いになりがち。資金力のある大手が有利な“条件の勝負”に、そのまま乗ってしまわないことが、中小にとってはむしろ大切になってきます。

ただ、この顔ぶれが今後も同じとは限りません。とりわけ筆頭の情報サービスは、生成AIやAIエージェントの普及で、業務のあり方も「どんな人材が要るか」も大きく動く可能性があります。効率化で一部の負荷が軽くなる一方、AIを使いこなして成果に変えられる人の価値はむしろ上がる――「足りない/足りている」は固定ではなく、必要な人材の“中身”が入れ替わっていく、という見方もできます。だとすれば、目先の賃金で頭数を追うより、変化に合わせて要件と仕事を定義し直し、その新しい人物像に「選ばれる」準備をしておくほうが、長い目では効いてくるように思います。

「賃金で競う採用」から「魅力で選ばれる採用」へ

もちろん、相場からかけ離れた給与では土俵に上がれませんから、賃金の見直しは前提として大切です。ただ、そこ“だけ”で勝負すると、体力のある会社が最後は勝つ消耗戦になります。同じ「採れない」でも、打ち手の置きどころで景色は変わってきます。

COMPARISON
BEFORE
賃金と頭数で競う採用
採れないと、まず給与や単価を上げる。数を集めることが目的化し、勝負は条件表の数字に。資金力のある大手ほど有利で、上げ続けても採り合いが終わらない。
AFTER
魅力で選ばれる採用
賃金は相場を押さえつつ、仕事の中身・裁量・一緒に働く人を具体的に見せる。限られた候補者に「ここで働きたい」を作り、条件だけで比べられない土俵に立つ。

数少ない候補者が複数社を比べているとき、最後にものを言うのは、条件表の数字だけではありません。「この会社なら、自分の力が活きそうだ」「この人たちと働いてみたい」という手ざわりが、意外なほど効きます。それを伝える入口こそ、求人票であり、採用サイトであり、面接の時間です。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

人が足りないとき、賃金を上げるのは自然な判断ですし、必要な場面も確かにあります。ただ、上げ幅の体力勝負になった瞬間、中小はどうしても不利になります。だからこそ、賃金“以外”の魅力を、きちんと言葉にしておきたいのだと思います。

HRブランディングとは、その「限られた人に、正しく魅力が伝わっている状態」をつくること。たとえば求人原稿を、条件の羅列から「その仕事の面白さや任される範囲」へ書き直すだけでも、同じ求人が別物のように見えてくることがあります。お金をかけずに、今日から動ける部分でもあります。

なお、この調査は2026年4月時点のもの。市況は動き続けますが、「賃金だけで競わず、魅力で選ばれる」という構えは、当面は変わらない気がしています。わたしたちCoachers自身も、限られた候補者にどう向き合うかを、日々問い直しています。

ACTIONS
求人票を「条件の羅列」から「仕事の中身」へ書き直す
給与や条件を並べるだけでなく、任される裁量・一日の流れ・得られる経験を具体的に。賃金以外の魅力を言葉にすると、比較の土俵が変わります。
 
採用サイトや面接で「入社後の景色」を正直に見せる
良い面だけでなく、いまの課題や難しさも一言添える。実態が見えるほど、賃金以外の理由で「ここで働きたい」と思ってもらいやすくなります。
 
応募から面接までの体験を、ていねいに設計する
返信のスピード、面接官の準備、質問への向き合い方。候補者が限られるほど、この一つひとつの体験が「選ばれるか」を左右します。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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