管理職の中途採用、転職希望者の76.7%は昇進に前向き──求人票に足す3条件
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管理職の中途採用、転職希望者の76.7%は昇進に前向き──求人票に足す3条件

Branding, 2026.07.27 By 中村 尚人

「管理職は罰ゲーム」。ここ数年、すっかり定着した言い方です。社内で後任のリーダーを探しても手が挙がらない——そんな話は、わたしたちも採用の現場でよく聞きます。

ところが、転職支援サービスを使っている人たちに同じことを聞くと、答えの向きが変わります。ワークポートが2026年4月に実施した調査では、昇進・昇格に意欲的な人が76.7%。同じ「8割」でも、社内で語られる8割とは逆を向いた数字です。

では、なぜ御社の「管理職候補募集」には応募が集まらないのでしょうか。数字をたどっていくと、避けられているのは”管理職”という役割そのものではないかもしれない、という景色が見えてきます。

KEY DATA / この記事の数字
転職支援サービス利用者のうち、昇進・昇格に意欲的(積極的にしたい+機会があればしたい) 76.7%
同じ層で、管理職になることに不安や負担を感じる(とても+やや) 75.7%
昇進を引き受ける条件として挙がった1位「責任に見合う報酬」 72.4%

出典:株式会社ワークポート「管理職志向に関するアンケート調査」(2026年4月21〜28日実施・20〜40代のビジネスパーソン588人・インターネット調査)

「なり手がいない」は、どこの話なのか

管理職のなり手不足は、社内の話として語られることがほとんどです。ただ、中途採用で管理職・マネジメント層を募集するときに向き合う相手は、社内の人ではなく転職市場にいる人です。この2つは、同じ「管理職」という言葉を使っていても、答えが揃いません。

COMPARISON / 同じ「8割」でも向きが違う
社内の一般社員
81.9%が「管理職になりたくない」
在職中の一般社員332名への調査。「なりたくない」52.7%+「どちらかと言えばなりたくない」29.2%。40代では62.0%が「なりたくない」と答えています。
出典:カオナビ タレントインテリジェンス総研(2025年3月実施)
転職支援サービスの利用者
76.7%が昇進・昇格に意欲的
転職支援サービス利用者588名への調査。「積極的にしたい」31.8%+「機会があればしたい」44.9%。理由の1位は「収入を増やしたい」37.5%でした。
出典:ワークポート(2026年4月実施)

はじめにお断りしておくと、この2つは調査主体も対象も時期も違うので、単純に比べられる数字ではありません。設問の立て方も同じではありません。それでも、採用担当者として見ておきたい示唆はあると感じています。いま動いている人と、動いていない人では、役割の受け止め方が違うかもしれないということです。

社内で手が挙がらないのは、その会社の管理職の姿を毎日そばで見ているからでもあります。逆に、外にいる人はその姿をまだ見ていません。だからこそ、求人でどう見せるかが効いてくる——「社内に候補がいないから、うちには無理だ」と結論を出す前に、外に向けた見せ方を疑ってみる余地は、まだ残っているように思います。

意欲と不安は、同じ人の中に同居している

同じ調査で、もうひとつ目を引く数字があります。昇進に意欲的な人が76.7%いる一方で、管理職になることに不安や負担を感じる人も75.7%。ほぼ同じ大きさです。「やってみたい」と「こわい」が、同じ集団の中に重なって存在しています。

不安の中身は、成果責任やマネジメント業務による業務量の増加が70.1%、上司と部下の板挟みが47.4%、部下の育成・マネジメントが43.4%(いずれも複数回答)。どれも「やりたくない」というより、「引き受けたあとの絵が見えない」という手触りの不安に見えます。

では、何があれば引き受けてもいいのか。ここが求人票にとって、いちばん実用的な部分です。

IMPACT MAP / 昇進を引き受ける条件(複数回答)
責任に見合う報酬(大幅な昇給)72.4%
裁量権の拡大と労働時間の削減50.9%
マネジメントに専念できる環境48.1%

出典:ワークポート「管理職志向に関するアンケート調査」(2026年4月実施・n=588・複数回答)

1位が報酬なのは、正直なところ予想どおりかもしれません。ただ、2位と3位に注目したいのです。「裁量権の拡大と労働時間の削減」50.9%、「マネジメントに専念できる環境」48.1%——この2つは、お金ではなく仕事の設計の話です。そして、求人票に書けることでもあります。

ちなみに、昇進を希望しない人の理由を見ても「報酬が見合わない」27.0%、「私生活への影響」25.5%と、金額そのものより釣り合いを問う声が並びます。裏を返せば、責任の範囲がはっきりしていれば、釣り合いは判断できる。判断できないから、避ける。そういう順序なのかもしれません。

管理職求人の”不透明さ”を外す4ステップ

管理職の中途採用とは、権限と責任の中身を先に開示して、引き受けられる人を探す採用です。「管理職候補募集」という一行だけでは、候補者は釣り合いを計算できません。求人票に書き足す順番を、4つに分けて整理してみます。

1
責任の範囲を数で書く——「何人を、どこまで」
部下は何名か、直属か間接か、担当する売上や予算の規模はどれくらいか。数字が1つ入るだけで、不安の1位だった「成果責任・業務量の増加」(70.1%)が、漠然とした重さから見積もれる重さに変わります。
2
決められることを書く——裁量の境界線
採用・評価・予算のどこまでを自分で決められて、どこから上申なのか。「裁量権の拡大」は引き受ける条件の2位(50.9%)でしたが、求人票で語られることは多くありません。書ける会社は、それだけで目立ちます。
3
プレイングの比率を正直に書く
「マネジメントに専念できる環境」が3位(48.1%)に入るのは、専念できる環境が当たり前ではないと受け止められているから、なのかもしれません。プレイング7:マネジメント3なら、そう書く。隠して入社してもらうほうが、あとで痛みます。
4
ひとりにしない仕組みを書く(最後に効く一行)
板挟みへの不安は47.4%。入社後3か月の伴走者は誰か、判断に迷ったとき誰に相談できるのか。この一行があるだけで、「引き受けたあとの絵」が候補者の中で像を結びます。

4つとも、報酬テーブルを動かさずに書けることばかりです。もちろん報酬が最大の条件(72.4%)であることは変わりませんが、金額を上げる決裁を待つ前に、書けることがまだ残っている——そう捉えると、少し動きやすくなる気がしています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

この一連の数字を並べていて、わたしたちがいちばん考えさせられたのは、「なり手がいない」を個人の意欲の問題として語ってきたのではないか、という点でした。意欲は76.7%あって、不安も75.7%ある。足りていないのは意志ではなく、引き受けたあとの条件が見えないことのほうかもしれません。だとすれば、これは人の問題ではなく情報の問題で、情報の問題なら、求人原稿の側で手を打てます。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

御社の「マネージャー候補募集」を開いた一人を想像してみます。その人は昇進に前向きな76.7%の側にいて、同時に不安を感じている75.7%の側にもいます。求人票で探しているのは、たぶん「やりがい」ではありません。何人を見るのか、どこまで決められるのか、自分の手はどれだけ空くのか——引き受けたあとの生活を、頭の中で試算しようとしています。

わたしたちが現場で聞くのも、「背負うものの重さが読めなかったので、応募は見送った」という趣旨の話です。そして試算できない求人は、嫌われるのではなく、そっと後回しにされます。逆に言えば、数字を1つ、境界線を1本書き足した求人は、その時点で比較の土俵に乗ります。

※候補者の意欲・不安の割合は上記調査(ワークポート・2026年4月実施)にもとづきます。応募を見送る場面の描写は、採用支援の現場でわたしたちが見聞きしてきた実感によるものです。

求人広告の原稿という視点で見ると、管理職ポジションはいちばん”抽象語”が入り込みやすい枠でもあります。「マネジメント全般」「組織づくり」「幅広い裁量」。書いた側は誠実に書いているつもりでも、読む側は何ひとつ試算できません。HRブランディングは、格好よく見せることではなく、こうした一行を具体に置き換えていく地道な作業に近いと、わたしたちは考えています。

そして、これは書き手にとって少しうれしい話でもあります。抽象語を具体に置き換える作業には、追加の予算がほとんどかかりません。すでに社内にある事実を、外向けの言葉に翻訳するだけだからです。

ACTIONS / 今日からできる3つ
いまの管理職求人から、抽象語を3つ探して数字に置き換える
「幅広い裁量」→「採用と評価は自部門で決裁」など。不安の1位が「成果責任・業務量の増加」70.1%である以上、量が見える言葉ほど効きます。
プレイングの比率を現任者に聞いて、そのまま書く
RJP(現実的職務予告)と呼ばれる考え方で、都合の悪い情報も先に伝えたほうが入社後のギャップが小さくなる、と繰り返し指摘されています。隠すより、合う人に出会うほうが早い。
入社後3か月の伴走者を決めて、その名前を求人に1行入れる
板挟みへの不安は47.4%。「ひとりで背負わせない」は制度を作らなくても、相談相手を明示するだけで伝わります。小さな逆説ですが、支えがある前提のほうが、責任は引き受けやすくなります。
FAQ / よくある質問
Q. 管理職の中途採用で応募が集まらないのは、やはり報酬が低いからでしょうか?
報酬は最大の条件です(「責任に見合う報酬」72.4%)。ただ同じ調査では「裁量権の拡大と労働時間の削減」50.9%、「マネジメントに専念できる環境」48.1%も続きます。金額の決裁を待つ間にも、仕事の設計を書き足すことはできます。
Q. 求人票に「管理職候補」と書くだけでは足りませんか?
候補者は「引き受けたあとの生活」を試算しようとしています。何人を見るのか、どこまで決められるのか、プレイングの比率はどれくらいか。この3つが無いと試算ができず、比較の土俵にすら乗らないまま後回しにされます。
Q. 社内で手が挙がらないので、外から採るのも難しいのでは?
社内と転職市場では、答えの向きが違う可能性があります。在職中の一般社員では「なりたくない」が81.9%(カオナビ タレントインテリジェンス総研・2025年3月実施)でしたが、転職支援サービスの利用者では76.7%が昇進に意欲的でした。対象も時期も違う調査なので単純比較はできませんが、社内の空気だけで市場を判断しないほうがよさそうです。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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