ひとり人事の中途採用、まず直すのは求人票の一枚──人事部の45.2%が人員不足
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ひとり人事の中途採用、まず直すのは求人票の一枚──人事部の45.2%が人員不足

Branding, 2026.08.17 By 中村 尚人

人事を一人で、あるいは総務や経営企画と兼任で回している。求人票を書くのも、日程を調整するのも、入社手続きをするのも同じ人。そういう会社は、けっして珍しくないと思います。

ただ、意外だったのは、これが小さな会社だけの話ではなかったことです。パーソル総合研究所が2026年3月に実施した調査(従業員300名以上の企業が対象)では、人事部の課題として最も多く挙がったのが「人員不足」45.2%でした。ある程度の規模がある会社でも、人事は足りていない。

だとすると、「人が増えたら本気で採用に取り組む」という前提のほうを、いったん置いてみたほうがいいのかもしれません。増やせないまま、それでも採用を前に進めるとしたら、限られた時間はどこに置くのがいいのでしょうか。一緒に考えてみたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
人事部の課題として挙がった1位「人員不足」(従業員300名以上の企業) 45.2%
同2位「専門性不足」(人数だけでなく知見も足りないと感じている割合) 44.6%
同3位「企画構想力の低さ」(考えて組み立てる時間が取れていない状態) 39.3%

出典:パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」(2026年3月4日〜16日実施/従業員300名以上の企業に勤務する係長以上の正規雇用者・経営層 n=2,000、うち内資系企業 n=1,934)

人事が足りないのは、小さな会社だけの話なのでしょうか

人事部が抱える課題の1位は「人員不足」で45.2%です。これは従業員300名以上の企業に勤める係長以上・経営層を対象にした、パーソル総合研究所の2026年の調査結果です。つまり、それなりの規模と体制がある会社でも、半数近くが「人事の人手が足りない」と感じている、ということになります。

ここで少しだけ見方を変えたいのが、2位に並んでいる「専門性不足」44.6%のほうです。人数と、ほとんど同じ重さで挙がっている。人が足りないから回らないのだと考えていると、増員だけが解決策になってしまいますが、実際には「どうやればいいかの見当がつかない」という詰まり方も同じくらい起きているようです。3位の「企画構想力の低さ」39.3%も、能力の話というより、考えて組み立てる時間が日々の処理に埋められている状態を映しているように読めます。

わたしたちCoachersも、少人数で複数の役割を持ちながら動いています。だからこそ実感するのですが、人事の忙しさは「量が多い」だけでなく「止められない仕事で埋まる」という構造から来ている気がしています。応募者への返信も、面接の日程も、入社手続きも、止めた瞬間に誰かが困る。一方で、求人票を書き直すことや、採用要件を見直すことは、今日やらなくても誰も困りません。だから後回しになる。個人の段取りの問題ではなく、仕事の性質による並び順の問題なのだと思います。

限られた時間は、どこに置くと効くのでしょうか

ひとり人事が採用で時間を置く場所を選ぶとき、有効な軸が2つあります。「候補者の目に触れるかどうか」と「自社でしか書けないかどうか」です。この2軸で並べ替えると、削る話をしなくても、手をかける順番のほうが先に決まります。

MATRIX / 採用の仕事を2軸で並べ替える
目に触れる × 自社でしか書けない
ここに時間を寄せる
求人票の仕事内容、現場社員の言葉、面接で伝える1分の説明。誰かに代われないうえ、候補者の判断に直接効く場所です。
目に触れる × どこでも同じ
型を借りる
応募受付の返信、日程調整の連絡、募集要項の定型欄。文面を一度作れば、以降は使い回して構いません。
目に触れない × 自社でしか書けない
あとで効いてくる
採用要件のたな卸し、現場へのヒアリング。今日は誰も困りませんが、ここが曖昧なままだと上の欄が書けません。
目に触れない × どこでも同じ
後回しでも大丈夫
応募管理表の体裁、社内報告資料の作り込み。整えたくなりますが、採用の結果はほとんど動きません。

この並べ替えの効きどころは、「何を減らすか」を考えなくて済むところにあります。減らす判断は痛みを伴いますし、周囲の合意も要ります。けれど「どれから手をつけるか」の順番なら、今日の自分の裁量だけで変えられます。結果として、後回しの欄に置いたものは自然と薄くなっていく、という順序です。

ひとり人事の採用は、どんな順番で組み直せばいいのでしょうか

組み直しの手順は3つです。いきなり全部を変えるのではなく、いまの仕事を分けて、空いた時間の行き先を決めて、自分にしかできない部分だけ手元に残す、という進め方をおすすめしています。

1
止まらない仕事と、止めても困らない仕事を紙に分ける
直近1週間にやった採用の作業を、思い出せる範囲で書き出します。そのうえで「翌日誰かが困るか」だけを基準に2列に分けます。判断に迷うものは、いったん止まらない側に置いて構いません。
2
空いた時間の行き先を、先に予定表へ置く
週に一度、30分でかまいません。「求人票の仕事内容を書き直す時間」として予定に入れてしまいます。空いたらやる、にすると、止まらない仕事がその枠を埋めてしまうためです。
3
自社でしか書けない部分だけを手元に残す
現場の一日の流れ、任せたい役割、入社した人が最初につまずいたこと。これは社内の人にしか書けません。逆に、体裁を整える作業や定型のやりとりは、型を作るか、外の手を借りても品質はほとんど落ちません。

先ほどの調査で2位だった「専門性不足」44.6%は、ここに関わってくる数字だと思っています。人数を増やせないなら、判断の精度で取り返すしかありません。ただ、その判断を一人で全部背負う必要もなくて、自社にしか書けないところだけを自分で持ち、それ以外は型か外の手に預けるという線の引き方があります。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

今回の調査は従業員300名以上の企業が対象なので、この数字をそのまま「ひとり人事の実態」と読むことはできません。ただ、体制のある会社でも人事の人手は足りていない、という事実は、少人数で回している方にとって少しだけ心強い材料になるのではないかと思っています。足りないのは、あなたの会社だけではないということです。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

ここで一度、御社の求人を開いた候補者の側に座ってみたいと思います。その人は、御社の人事が何人いるかを知りません。組織図も、担当者が兼任かどうかも見えていない。候補者に見えているのは、求人票の一枚と、採用サイトの数ページだけです。

これは厳しい話にも聞こえますが、裏を返せば、手をかける面がそれだけ絞られているということでもあります。現場でよく聞くのは「応募する前に、実際どんな一日なのかが分からなかった」という声で、逆にそこが具体的に書かれている求人には、応募理由として名前が挙がることが多いように感じています。人手が増えなくても、一枚の書き直しなら今週できるかもしれません。

わたしたちがHRブランディングという言葉で考えているのも、まさにこの「候補者から見えている面」のことです。会社の実態がどれだけ良くても、見える面に出ていなければ、候補者にとっては存在しないのと同じになってしまいます。求人広告の原稿を見直すだけでも、伝わる情報量はかなり変わることがあります。

一人で回している方ほど、まず一枚を直すところから始めるのが現実的だと感じています。全部を整えなくていい。候補者が最初に開くところから順に、で十分だと思います。

ACTIONS / 今日からできる3つ
今週の予定表で「候補者の目に触れる仕事」に色をつける
忙しさを総量で見ると打つ手がなくなりますが、配分として見ると動かせる余地が現れます。色が一つも付かない週があれば、それが今の構造です。
求人票の仕事内容を「ある一日の流れ」の形に書き直す
候補者が応募前にいちばん読み込むのはこの欄です。箇条書きの業務名より、朝から夕方までの流れのほうが、働く姿を想像しやすくなります。
定型のやりとりは、文面を一度だけ作って使い回す
応募受付・日程調整・お見送りの連絡は、毎回書き起こす必要がありません。一度作れば、浮いた時間はそのまま上の2つに回せます。
FAQ / よくある質問
Q. ひとり人事でも、中途採用は回せるものでしょうか?
全部を同じ濃さでやろうとすると難しいと思います。ただ、候補者から見えている面は求人票と採用サイトにかなり絞られるので、手をかける対象を絞れば一人でも成立しやすくなります。回らないのは人数だけの問題ではなく、対象を絞れていないことが効いている場合もあります。
Q. 時間がないとき、まず後回しにしていいのはどこでしょうか?
候補者の目に触れず、かつどこの会社でも同じになる作業です。応募管理表の体裁を整えることや、社内報告資料の作り込みが当てはまります。整えたくなる気持ちはありますが、採用の結果はあまり動きません。
Q. 外部に頼むとしたら、どこから預けるのがよいでしょうか?
「自社でなくても品質が落ちない部分」からです。原稿の体裁や媒体の運用、定型の連絡がこれにあたります。逆に、現場の一日の流れや任せたい役割は、社内の人にしか書けないので手元に残すことをおすすめしています。
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Coachersは、求人広告の制作と採用サイト・動画などのクリエイティブ制作を通じて、HRブランディングの視点から採用を一緒に組み立てています。少人数で回している体制のまま、どこから手をつけるかを整理するところからお手伝いできます。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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