採用ペルソナの作り方──30代不足91%のなか、求人票の一行目を変える手順
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採用ペルソナの作り方──30代不足91%のなか、求人票の一行目を変える手順

Branding, 2026.08.16 By 中村 尚人

2026年の人材不足にどう対応するかを聞かれて、79%の企業が「人材採用を強化する」と答えました。ところが同じ調査のなかで、42%が「採用競争力(給与・ブランド力)が低い」ことを課題に挙げています。

勝てる気がしない、と感じながらアクセルを踏む。その居心地の悪さのなかにいる採用担当の方は、決して少なくないのだと思います。しかも同じ調査では91%が「30代の人材が足りない」と答えていて、要するに、たくさんの会社が同じ層を同時に探しています。

給与とブランドで並べないなら、どこで差をつけるのか。今日は「採用ペルソナ」という、聞き慣れているわりに後回しにされがちな作業を、求人票の一行目が変わるところまで一緒に降りて見ていきたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
人材不足を実感していると答えた企業(人事・採用担当者398名への調査) 84%
「30代」の人材が不足していると答えた企業 91%
2026年の対応として「人材採用を強化」を挙げた企業 79%
採用の課題に「採用競争力(給与・ブランド力)が低い」を挙げた企業 42%

出典:エン株式会社「『人材不足の状況』に関する実態調査」(2026年1月26日〜2月8日実施・有効回答398名)

採用を強化する79%が、なぜ「勝てない」と感じているのでしょうか

人事・採用担当者398名に聞いた調査では、84%の企業が人材不足を実感し、その理由の上位は「退職による欠員」(57%)と「中途採用で人員確保ができなかった」(49%)でした(エン株式会社「『人材不足の状況』に関する実態調査」、2026年1月26日〜2月8日実施)。欠員が出て、埋めようとして、埋まらない。この順番でつまずいている会社が半数近くあるということです。

不足している職種の1位は営業職(34%)。そして年代では、91%が「30代」を挙げています。実務も回せて、これから中核も担える層。どの会社にとっても欲しい人が、はっきり同じ場所に集中しています。

ここで「採用競争力(給与・ブランド力)が低い」という42%の回答に戻ると、構図が少し見えてきます。同じ層を、同じ土俵で、同じ言葉で取り合っている。その土俵で比べられれば、給与とブランドが強い側が勝つのは当たり前です。負けているのは条件そのものというより、条件で比べられる場所に自分から立っていることのほうかもしれません。

なお、この調査は2026年の年明けに実施されたものです。半年ほど経ったいまは数字が動いている可能性もありますが、「同じ層を多くの会社が奪い合う」という構造そのものは、当面あまり変わらない部分だと感じています。

採用ペルソナとは、何を指すのでしょうか

採用ペルソナとは、自社が採用したい人物を、年齢や経験年数といった属性だけでなく、いまどんな状況にいて、何に困っていて、どんなきっかけで求人を見ているかまで含めて、1人の像として言語化したものです。「30代・営業経験3年以上」は条件であって、ペルソナではありません。

この違いが効いてくるのは、求人票を書く瞬間です。条件だけが手元にあると、書けるのは条件の再掲になります。一方、その人が何に困っているかまで分かっていれば、見出しとリード文をその困りごとから書き始められる。同じ求人でも、読み手にとっての第一印象がまるで変わります。

MYTH vs FACT / ペルソナを絞ると応募が減る?
MYTH
ペルソナを細かく作り込むと、対象が狭くなって応募数が落ちてしまう。まずは幅広く集めたい。
FACT
狭くなるのは「言葉の的」であって、応募できる人の範囲ではありません。求人票の公開条件はそのままに、書き方だけを1人に向けることもできます。誰にでも当てはまる文章は、誰の目にも留まらないという形で、静かに応募を失っていることがあります。

採用ペルソナは、どう作ればいいのでしょうか

採用ペルソナづくりで最初につまずきやすいのは、想像から始めてしまうことです。理想の人物を空想で描くと、たいてい「優秀で意欲が高くて素直な人」に着地します。そうならないよう、自社にすでにいる人から逆算する順番で組み立てるのが安全だと感じています。

1
活躍している人と、早く辞めた人から逆算する
直近で活躍している中途入社者と、早期に辞めた人を1〜2名ずつ思い浮かべ、入社時点で何を持っていたか・何を期待して入ってきたかを書き出します。想像ではなく実例から始めると、ペルソナが「理想像」ではなく「再現したい像」になります。
2
要件をMUST・WANT・NEGATIVEの3層に仕分ける
絶対に外せない条件、あると嬉しい条件、これがあると合わない条件の3つに分けます。全部をMUSTに入れないことがコツで、3層にするだけで社内の議論が「どれをWANTへ落とすか」という具体的な一点に絞られます。
3
その人が求人を見ている「きっかけ」を1〜2文で書く
属性ではなく状況を書きます。「裁量はあるが1人で抱えていて、相談できる相手がいない」といった具合です。ここで書いた一文が、そのまま求人票の見出しとリード文の材料になります。
4
配属先のマネージャーに、一問だけ確認してもらう
「この人が来たら、歓迎しますか」。聞くのはこれだけで十分です。求める人物像のズレは、選考が始まってから面接の評価が割れる形で表面化しがちですが、ここで出しておくほうがずっと安く済みます。

4つ並べましたが、いちばん効くのはおそらく最後の一問です。採用は「人事が集めて、現場が選ぶ」と役割が分かれやすく、その境目で人物像の認識がずれたまま進みます。これは担当者の努力不足というより、責任が途中で切れる構造の問題です。だからこそ、構造のほうに小さな橋を1本かけておく意味があります。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

採用ペルソナは、社内向けの整理術のように語られがちです。けれど本当に効くのは、社内が揃ったあとに書かれる文章のほうだと思っています。誰に向けて書くかが決まっていない求人票は、書き手が一生懸命なほど「全方位に良いことが書いてある文章」になり、結果として輪郭を失います。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

求人票を開いた候補者が最初にしているのは、条件の比較ではなく「これは自分に向けて書かれた文章か」の判定ではないかと思います。「意欲のある方」「成長したい方」は、誰に向けても書ける言葉です。裏を返せば、誰にも向いていない言葉でもあります。

わたしたちが原稿づくりの現場でよく出会うのは、面接では熱心に語られている「こういう人に来てほしい」が、求人票にはひとことも書かれていない、という状態です。伝えたい相手は決まっているのに、文章の側が全方位を向いている。もったいない、といつも感じます。

給与とブランドで並べないなら、「うちはこの人に来てほしい」と名指しできることが、そのまま差になります。求人広告の原稿という視点で見ると、ペルソナが決まっている会社は見出しの1行目から違っていて、条件の比較表に入る前に、読み手の側で候補が絞られていきます。

わたしたちCoachersが考えるHRブランディングも、出発点はここにあります。会社を大きく見せるのではなく、来てほしい人に向かって、届く言葉で正確に話しかける。採用ペルソナは、そのための地味で確実な一歩だと思っています。

ACTIONS / 今日からできる3つ
いまの募集要項から、MUSTを3つだけ残してみる
残りはWANTへ移します。要件が多いほど採れないのは当然として、より効くのは「何を諦めたか」が社内で共有されることのほうです。判断のたびに現場と揉める回数が減ります。
求人票の1行目を、候補者の状況から書き直す
会社紹介ではなく、来てほしい人がいま抱えている困りごとから始めます。読み手は最初の数行で自分あてかどうかを判断するので、書き出しの投資対効果がいちばん大きい場所です。
配属先のマネージャーに5分だけもらう
「この人が来たら歓迎しますか」を一問。人事と現場で人物像がずれたまま選考が進む構造は、面接の評価が割れてから直すより、募集前に一度合わせておくほうが圧倒的に安く済みます。
FAQ / よくある質問
Q. 採用ペルソナとは何ですか?
採用ペルソナとは、自社が採用したい人物を、年齢や経験年数などの属性だけでなく、いまの状況・困りごと・転職を考えたきっかけまで含めて1人の像として言語化したものです。求人票の見出しやリード文を「誰に向けて書くか」の基準になります。
Q. ペルソナとターゲットは何が違いますか?
ターゲットは「30代・営業経験3年以上」のように採用したい人材”層”を指し、ペルソナはその層のなかの具体的な1人を描いたものです。ターゲットは母集団の範囲を決め、ペルソナは書く言葉を決める、と分けて考えると使い分けやすくなります。
Q. ペルソナを細かくすると応募が減りませんか?
応募できる人の範囲を狭める必要はありません。募集条件は広いままにして、書き方だけを1人に向けることもできます。誰にでも当てはまる文章のほうが、かえって誰の記憶にも残らないという形で応募を取りこぼしている場合があります。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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