AI面接が広がる今、候補者体験をどう守る?──効率化と「誠実さ」の両立
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AI面接が広がる今、候補者体験をどう守る?──効率化と「誠実さ」の両立

Branding, 2026.06.18 By 中村 尚人

AI面接やAIスカウト、応募者対応の自動化──採用オペレーションのAI化が、2026年に入って一気に身近になりました。「工数が減った」「面接官による評価のブレが小さくなった」という声を聞くと、自社でも一度試してみようかな、と考える場面が増えてきたかもしれません。

一方で、ふと立ち止まりたくなる問いもあります。効率化した分、候補者から見た「選考の体験」は、前より良くなっているでしょうか。ある調査では、AI面接に対して候補者が「誠実さ」や「納得感」を人による面接より感じにくい、という結果も出ています。

効率と、候補者が受け取る「誠実さ」。この二つは、両立できないものなのでしょうか。今日は、わたしたちCoachersも一緒に、AI時代の候補者体験(採用CX)について考えてみたいと思います。

AI面接は、2026年にどこまで広がった?

AI面接とは、AIが質問・録画・スコアリングなどに介在する面接方式のことです。2026年に入って導入が加速し、工数削減や評価の均質化といった成果が報告されています。ただ、実際にAI面接を受けたことのある候補者はまだ3割弱。「広がりつつある途中」というのが、実態に近いのかもしれません。

KEY DATA
AI面接を経験した候補者
28.4%
=まだ3割弱(リクルートMS・候補者調査)
工数削減を実感した導入企業
73%
=AI面接サービス提供側の集計より

企業側のメリットは、はっきりしています。24時間どこからでも受けられるので一次選考の間口が広がり、評価基準もそろえやすい。実際、AI面接を5コースから12コースに拡大した大手や、AI面接の導入で内定承諾率が1割ほど上がったという事例も報じられています。ただし、これらはサービス提供側や導入推進側から発信された数字でもあるので、効果の大きさは少し割り引いて読んでおくくらいが、ちょうどよいかもしれません。

候補者は、AI面接をどう受け止めている?

結論から言うと、候補者にとってAI面接は「参加しやすい」一方で、「誠実さ」「納得感」「妥当感」「実力発揮感」では物足りなさを感じる人が多い、という結果が出ています。リクルートマネジメントソリューションズの調査では、これら4つの観点で「人による面接より感じにくい」と答えた割合がいずれも40%を超え、最も多い回答になりました。

そして見過ごせないのが、この「誠実さ」が選考の辞退に直結しているという事実です。

KEY METRIC
48.5%
辞退理由
「誠実さ」の欠如が、辞退の理由になる
個人面接のあとに選考を辞退した候補者のうち、48.5%が「面接官の態度から、しっかり向き合ってくれていないと感じた」を理由に挙げました(リクルートMS・新卒対象調査)。AI面接でこの『誠実さ』が伝わりにくいとすれば、無視できない数字です。

ただ、ここで「だからAI面接はダメ」と結論づけるのは早い気がしています。同じ調査では、AI面接を実際に経験した候補者のほうが、AI面接への評価が上がりやすい傾向も見えています。食わず嫌いの部分も、たしかにありそうです。問題は「AIか、人か」という対立そのものより、誠実さが伝わる設計になっているかのほうにあるのかもしれません。

効率と「誠実さ」、どう両立する?

両立のヒントは、AIと人を「どちらか」ではなく「役割分担」で考えることにありそうです。候補者が最も重視する「誠実さ」は、社員との直接の対話で伝わりやすい。だからこそ、AIに任せる工程と、人が向き合う工程を切り分けるのが出発点になります。

COMPARISON
AIに任せる
間口を広げ、工数を減らす
24時間どこでも受けられ、評価のブレも小さくしやすい。応募の取りこぼしを減らし、一次選考の母集団を広げる場面に向いています。
人が担う
誠実さ・納得感を伝える
候補者が最も重視する「誠実さ」は、人との対話でこそ伝わります。動機づけや相互理解が要る場面は、人の接点を厚く残すのが効きそうです。

たとえば「広く集める一次はAIで間口を広げ、見極めと動機づけの二次以降は人が丁寧に向き合う」。あるいは「AI面接の前後に、担当者からの一言メッセージを必ず添える」。こうした小さな線引きの積み重ねが、効率と候補者体験のバランスをつくっていくのだと思います。よくある疑問を、いくつか整理してみました。

FAQ
Q
AI面接を入れると、候補者に嫌われてしまいますか?
A
必ずしもそうではないようです。調査では、実際にAI面接を経験した人ほど評価が上がりやすい傾向も見えています。鍵は「AIか人か」より、誠実さが伝わる設計になっているかかもしれません。
 
Q
中途採用でも、同じことが言えますか?
A
今回の調査は新卒が対象です。ただ「自分にちゃんと向き合ってほしい」という気持ちは、中途の候補者にも共通しているように感じます。むしろ職務経歴の長い方ほど、自分の経験を丁寧に聞いてほしい場面は多いかもしれません。
 
Q
何から見直すのがよさそうですか?
A
いきなり全部ではなく、選考フローを一度紙に並べて「ここはAI/ここは人」を仮で振り分けてみるのがおすすめです。手を入れる場所が、自然と見えてくることが多い気がします。
 

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

AI面接の話題になると、つい「導入するか・しないか」の二択で考えがちです。でも候補者の側に立つと、本当に効いてくるのは「自分にちゃんと向き合ってもらえたか」という感触なのかもしれません。

これはまさにHRブランディングの話だと感じています。選考の一つひとつの接点が、そのまま「この会社はどんな会社か」というメッセージになる。効率化で生まれた時間を、候補者と向き合う時間にどれだけ振り向けられるか。たとえば採用サイトの情報設計という視点で見ると、「どんな人が、どんな思いで選考しているのか」を伝えておくだけでも、AIとの接点の手前で誠実さの土台はつくれます。

わたしたちCoachers自身も、効率化と「丁寧さ」のバランスには日々悩みます。AIに任せることと、人が担うこと。その線引きを自社の言葉で決めていくことが、これからの採用ブランドを静かに左右していく気がしています。

ACTIONS
選考フローを「AI/人」で振り分けてみる
いまの選考ステップを一度紙に並べ、「ここはAIに任せられる/ここは人が向き合いたい」を仮で振り分けてみませんか。
 
「誠実さ」が伝わる接点を1つ決める
一次面接の冒頭5分、候補者への返信スピードなど、人の温度が出る場面を1つだけ意図的に設計してみるのも手かもしれません。
 
AI面接の案内文を候補者目線で読み返す
なぜAIを使うのか、どう評価されるのかを一言添えるだけでも、候補者の納得感は変わってくるはずです。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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