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欠員補充の採用が間に合わない──退職が引き金の倒産83件と、求人票の直し方
「お世話になりました」。その一言から、会社が止まるまでの距離は、思っているより短いのかもしれません。帝国データバンクが2026年8月7日に公表した集計によると、従業員や経営幹部の退職が引き金となって法的整理に至った企業は、2026年1〜7月で83件。前年同期の74件を9件上回っています。
倒産という結末は、たしかに極端です。でも、その手前にある景色のほうは、たぶん多くの会社に見覚えがあります。一人が抜けた穴を、求人を出しても埋められない。とりあえず残った人に寄せる。しばらくして、その人も辞める意向を伝えてくる──。
なぜ、欠員補充の求人はこんなにも埋まりにくいのでしょうか。わたしたちCoachersも、日々ご相談をいただくなかで一番よく聞くのがこの困りごとです。今日は「担当者の頑張りが足りないから」ではない理由と、求人票の側からできることを、一緒に考えてみたいと思います。
出典:帝国データバンク「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月7日公表/集計対象は負債1,000万円以上・法的整理による倒産)
欠員補充の採用は、なぜ間に合わないのか
欠員補充の採用が間に合わない一番の理由は、募集を始める時点ですでに時間を使い切っているからです。退職の申し出から最終出社までは、就業規則にもよりますが1〜2か月というケースが多いように思います。一方で中途採用は、求人票をつくり、応募を待ち、面接を重ね、内定を出して、先方の退職交渉が終わるまでを見なければなりません。走り出す前から、締切を過ぎているような状態で始まることが少なくないのです。
帝国データバンクが2026年8月7日に公表した集計は、この時間差がいちばん深刻なかたちで表れた例を数えたものです。「従業員退職型」と名づけられているとおり、従業員や経営幹部などの退職が直接・間接の要因となって法的整理に至ったケースで、2026年1〜7月は83件。2025年の年間件数は124件でした。負債1,000万円以上・法的整理という、はっきり数えられる範囲だけの数字です。
出典:帝国データバンク「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月7日公表)/バーの長さは最多業種を基準にした相対表示
最も多いのはサービス業の22件で、全体の26.5%を占めます。次いで建設業20件、運輸・通信業12件。いずれも、一人の技能や資格、あるいは顧客との関係がそのまま売上に直結しやすい業種です。裏を返せば、代わりが見つかるまでのあいだ、事業のほうが待ってくれない領域だとも言えます。
ここで一つ、名前を借りておきたい考え方があります。採用の世界で古くから使われている Time to Fill(募集を開始してから、その席が実際に埋まるまでの期間) という指標です。「今年何人採ったか」は誰でもすぐ答えられる一方で、「一つの席が埋まるまでに何日かかったか」を測っている会社は、そう多くないかもしれません。けれど欠員補充で本当に効いてくるのは、後者のほうかもしれません。名前がつくと、はじめて数えられるようになります。
「急募」と書かれた求人は、候補者に何を伝えているか
「急募」という二文字は、企業側の都合を伝える言葉であって、候補者にとっての魅力を伝える言葉ではありません。それ自体が悪いわけではないのですが、候補者の画面には、同じ職種の求人が何十件も並んでいます。そのなかで「急いでいます」だけが伝わると、この会社で自分が何をする人になるのかが、最後まで見えないまま流されてしまうことがあります。
欠員補充の求人票は、放っておくと「前任者の業務一覧」になりがちです。引き継ぎ資料としては正しいのですが、求人としては物足りない。同じポジションを、少し違う角度から書くと、見え方はずいぶん変わります。
やっていることは、事実の並べ替えだけです。人が辞めたという背景を隠すわけでも、盛るわけでもありません。ただ、同じ事実を「会社が困っている話」ではなく「その席で何が起きるかの話」として書く。それだけで、候補者が自分を重ねられる余地が生まれます。
欠員補充の採用を、間に合う採用に近づける4ステップ
欠員補充を間に合わせる方法は、募集を速く回すことよりも、埋まるまでの時間をあらかじめ知っておくことから始まります。順番に、無理のないところから見ていきます。
今回の83件という数字を見て、わたしたちが感じたのは「これは採用の失敗の話ではなく、採用が事業の時間割に組み込まれていなかった話かもしれない」ということでした。欠員補充が担当者一人の踏ん張りどころになってしまうのは、たぶん個人の問題ではなく、退職が起きてから採用が始まる、という設計のほうに理由があります。
御社の求人を開いた候補者は、「急募」「欠員に伴う募集」という言葉を見た瞬間、たぶん募集要項ではなく別のことを考え始めます。前の人は、なぜ辞めたのだろう。そして、その答えが求人票のどこにも書かれていないことに気づきます。
わたしたちが現場でよく伺うのは、「急いでいる会社ほど、入ってから大変そうに見えた」という声です。もちろんこれは一部の方の受け取り方で、すべての候補者がそう考えるわけではないと思います。ただ、書かれていない部分を候補者が自分で埋めてしまうのだとしたら、そこを埋める一段落を用意しておくほうが、こちらとしても安心かもしれません。
わたしたちがHRブランディングという言葉で大事にしているのは、まさにこの「書かれていない部分」を放置しないことです。求人広告の原稿を見直すだけでも、募集の背景をひとこと足す、必須要件と歓迎要件を分ける、といった小さな手直しで、候補者から見える景色は変わります。
そしてもう一つ。欠員補充を急いで決めた採用は、入社後のギャップにつながりやすい面もあります。埋めることと、埋まり続けることは別の話です。少し遠回りに見えても、この4ステップの1つめ──日数を数えてみることから始めていただけたら、次の欠員のときに使える手札が一枚増えるはずです。
- 帝国データバンク「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月7日公表) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260807-taisyoku2026y1-7/
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