職務経歴書のAI利用、中途採用担当の52%が落とした経験──書類選考の基準づくり
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職務経歴書のAI利用、中途採用担当の52%が落とした経験──書類選考の基準づくり

Branding, 2026.08.15 By 中村 尚人

「これ、AIで書いたな」と思った職務経歴書を、あなたは落とす理由にしますか。

SHIFT AIが2026年5月に採用担当者503名へ行った調査(SHIFT AI調べ)では、中途採用の担当者のうち52.0%が「AIで作成されたと感じる書類を理由に、選考を通さなかったことがある」と答えていました。ところが同じ人たちの52.9%は、応募書類にAIを使うこと自体は許容だとも答えています。

矛盾しているようで、たぶんしていません。落とされているのはAIではなく、AIの向こうに何も見えなかった書類のほうです。では、その線引きはどこに置けばいいのか──今日は書類選考の「基準」を一緒に考えてみたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
中途採用の担当者のうち、AIで作成されたと感じる応募書類を受け取ったことがある割合 66.9%
中途採用の担当者のうち、AI書類を理由に選考を通さなかった経験がある割合 52.0%
中途採用の担当者のうち、応募書類へのAI利用を許容している割合 52.9%
応募書類のAI利用について明確なルールを定め、社内に周知している企業(採用担当者全体) 14.9%

出典:株式会社SHIFT AI「AI応募書類に関する調査」(2026年5月20〜24日実施・採用担当者503名/うち中途採用担当248名・SHIFT AI調べ)

職務経歴書のAI利用は、もう「あるかないか」の話ではない

中途採用の書類選考では、AIで整えられた職務経歴書が届くことがすでに前提になりつつあります。SHIFT AIが2026年5月に採用担当者503名(うち中途採用担当248名)へ実施した調査によると、中途採用の担当者の66.9%が「AIで作成されたと感じる応募書類を受け取ったことがある」と回答し、うち29.0%は「強く感じる」と答えていました。

そして、そう感じた書類を実際に通さなかった経験を持つ人が、半数を超えます。

KEY METRIC / AI書類を理由に落とした経験
52%
中途採用の担当者の52.0%が「AIで作成されたと感じる書類を理由に、選考を通さなかったことがある」と回答。一方で、23.8%は「AIかどうか判断できないので、基準にしようがない」とも答えています。落としている人と、そもそも判断を降りている人が、同じ職場に並んでいる状態かもしれません。

出典:SHIFT AI調べ(2026年5月・中途採用担当248名)

ただ、この数字だけで「AIは嫌われている」と読むのは早いかもしれません。同じSHIFT AI調べの調査には、逆向きの答えも並んでいます。応募書類へのAI利用について、中途採用の担当者の52.9%は許容(うち33.1%は「補助的な役割なら可」)と回答しているのです。半数超が許容し、半数超が落としている。この2つは、同じ人たちの回答です。

落とされているのは「AIを使ったこと」ではない

AI書類だと判断した理由を見ると、その線引きがどこにあるかが見えてきます。中途採用の担当者が挙げた理由の上位は、AIの痕跡そのものではなく、読んでも中身が入ってこないことでした。

IMPACT MAP / AI書類だと判断した理由と、担当者の困りごと
洗練されているのに具体性がない57.8%
整いすぎていて他の応募者と差別化できない56.6%
[困りごと]AI生成かどうかの見分け方がわからない35.9%
[困りごと]AIを理由に落とす基準・ルールが社内にない35.5%

出典:SHIFT AI調べ(2026年5月・中途採用担当248名・複数回答)

1位の「洗練されているのに具体性がない」(57.8%)は、AIの話というより、書類の中身の話です。2位の「整いすぎていて差別化できない」(56.6%)も同じで、文章がうまいかどうかではなく、その人が誰なのかが読み取れない、ということかもしれません。つまり落選の理由は「AIを使ったから」ではなく「AIを使ってもなお、事実が書かれていなかったから」だと読めます。

そのうえで、担当者側にも困りごとがあります。「見分け方がわからない」が35.9%、「落とす基準・ルールが社内にない」が35.5%。見分けられない道具で、基準のないまま判断している──そう並べると、少ししんどい構図です。実際、応募書類のAI利用について明確なルールを定めて周知している企業は、採用担当者全体の14.9%にとどまりました。

「見分ける」より「見たいものを決める」ほうが早い

AIで書かれた職務経歴書への向き合い方は、検知の精度を上げる方向と、評価の基準を決める方向の2つに分かれます。調査の数字は、後者のほうが現実的だと示しているように見えます。

MYTH vs FACT
MYTH
AIで書かれた職務経歴書は、見抜いて落とすのが正しい対応。
FACT
見抜くことを前提にした運用は、そもそも成立しにくいようです。中途採用の担当者の35.9%が「見分け方がわからない」、23.8%が「判断できないので基準にしようがない」と回答。一方で許容派は52.9%、実際の対応で最も多かったのは「面接でスキル・経験を深掘りして直接確かめる」(34.7%)でした。判定ではなく、確認に寄せている人が多数派です。

「面接で深掘りする」(34.7%)という対応は、地味ですが理にかなっています。書類でAIかどうかを当てにいくのは、当たっても外れても情報が増えません。けれど「この実績、具体的にどこを担当されたんですか」と聞けば、AIを使ったかどうかとは関係なく、その人の輪郭が見えます。見分けるのをやめて、確かめる場所を後ろにずらす──それが、いまのところ一番割の合う手のように思えます。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

この調査を読んでいて引っかかったのは、「AIを使ったこと」を責める声が思ったより少なかったことです。落とす理由の1位は具体性のなさで、許容派は半数を超えている。担当者はたぶん、AIそのものには怒っていません。ただ、読んでも何も分からない書類が増えたことに、静かに疲れている気がします。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

御社の求人票を開いて、職務経歴書を書き始めた一人の候補者を想像してみます。その人はたぶん、手を抜こうとしてAIを開いたわけではありません。むしろ「失礼のない文章にしたい」「何を書けば伝わるのか分からない」から、AIに聞いているのだと思います。具体性が抜け落ちた原因は、候補者の怠慢ではなく、”何を書けば伝わるか”を誰も教えていないことかもしれません。

わたしたちが現場で聞くのも、「志望動機の書き方が分からないので、とりあえずAIに整えてもらった」という声です。だとすれば、求人票に「職務経歴書ではここを知りたい」と3つ書くだけで、返ってくる書類の中身は変わるかもしれません。問いを渡していないのに、具体的な答えだけを期待するのは、少し虫がよかったのかもしれない、と思ったりします。

ここはHRブランディングの話とも地続きです。書類の文章力で差がつかなくなったぶん、勝負どころは「誰に来てもらうか」と「会って何を確かめるか」に移ります。求人広告の原稿で、仕事の手触りや任せたい範囲を具体的に書けているほど、返ってくる職務経歴書も具体的になる──そういう跳ね返りは、実務のなかで何度も見てきました。

AIを使ったかどうかを当てるゲームに、わたしたちCoachersはあまり興味が持てません。それより、「うちはこういう人と働きたい」を先に言葉にしておくほうが、結果的に選考もラクになる気がしています。

ACTIONS / 今日からできる3つ
「AIっぽさ」ではなく「具体性」で判断する一文を決める
落とす判断の理由の1位は「洗練されているのに具体性がない」(57.8%)でした。見分ける努力より、「担当範囲と数字が読み取れれば通す」のように、見たいものを1行で書くほうが早く効きます。
求人票に「職務経歴書で知りたいこと」を3つ書き足す
候補者は”何を書けば伝わるか”が分からないままAIに書かせています。先に問いを渡すと具体が返ってくる──入社前に現実を正しく伝えるRJP(現実的職務予告)の、入口にあたる工夫です。
AI利用への社内スタンスを1行で決めて、選考メンバーに共有する
明確なルールを周知している企業は14.9%にとどまります。基準がないと、同じ書類でも読む人によって結果が変わってしまいます。禁止か許容かより先に、「何が書かれていれば通すか」を揃えてみませんか。
FAQ / よくある質問
Q. AIで書かれた職務経歴書は、落とす理由になりますか?
AIを使ったこと自体を理由にしている人は、多数派ではないようです。SHIFT AIの調査では、中途採用の担当者の52.9%が応募書類へのAI利用を許容(うち33.1%は「補助的な役割なら可」)と回答しています。一方で落とした経験があるのも52.0%ですが、その判断理由の1位は「洗練されているのに具体性がない」(57.8%)でした。効いているのはAIの有無ではなく、中身が読み取れるかどうか、と考えるほうが実務に合いそうです。
Q. AIで書いたかどうか、見分けられるものですか?
見分けを前提にした運用は、成り立ちにくいかもしれません。同じ調査で、中途採用の担当者の35.9%が「AI生成かどうかの見分け方がわからない」、23.8%が「判断できないので基準にしようがない」と答えています。実際の対応で最も多かったのは「面接でスキル・経験を深掘りして直接確認する」(34.7%)で、判定より確認に寄せる形です。
Q. 社内でAI利用のルールを決めたほうがいいですか?
明確なルールを定めて周知している企業は、採用担当者全体の14.9%にとどまります。ルールがないと、同じ書類でも読む人によって結果が変わり、判断のばらつきが候補者に見えてしまいます。禁止・許容の線引きから入るより、「何が書かれていれば通すか」を先に言葉にするほうが、選考メンバー間で揃えやすいと感じています。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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