やりがいの話はさんざんした。それでも辞められた──若手の引き止めで、よく聞く空振りの形です。
社会人1〜3年目968人の調査で、辞めたいと思った人が挙げた理由の1位は「仕事にやりがい・意義を感じない」21.8%。一方、実際に離職した人の1位は「労働環境・条件がよくない」22.4%でした。
この記事では、若手の離職理由が2種類に分かれて見える理由と、その読み違えを避ける方法、入社後の面談で聞く3つの質問を型にして置きます。
若手の離職理由、いちばん多いのは何か
社会人1〜3年目の若手が挙げる離職理由の1位は、聞く相手によって変わります。在職者が「辞めたい」と思った理由の1位は仕事のやりがい、実際に離職した人の1位は労働環境・条件でした。
リクルートマネジメントソリューションズが2026年6月19日に公表した「若手の離職実態調査2026」の数字です。調査は2026年2月、大学・大学院卒で社会人1〜3年目の正社員・正職員968人に対して行われました。公務員や教職員も含みます。
在職者のうち、会社を辞めたいと思ったことがある人は62.2%。前回2023年調査は58.8%で、出典は「大きな差はみられなかった」としています。
AとBは回答した人が違う別々の設問です。同じ人の気持ちが途中で入れ替わった、という読み方はできません。
「辞めたい」と「辞めた」で項目が変わるのはなぜか
まず、この2つの数字は引き算してはいけません。Aは在職者が答えた「辞めたいと思った理由」、Bは離職者が答えた「実際の離職理由」で、答えている人の集団そのものが違います。
リリースでは離職者グループの人数は示されていません。Bの3項目は、Aより小さな母数の上に立っている可能性があります。断定はできない、という前提で見ます。
そのうえで、並べて読めることが1つあります。それぞれの1位が、相手側の上位3つには出てこないことです。Aの1位「やりがい・意義」はBに入らず、Bの1位「労働環境・条件」はAに入っていません。
一方で、どちらの側も1色ではありません。Aの2位は給与水準(19.5%)という条件の話ですし、Bの2位は能力や持ち味を発揮できない(21.6%)という手応えの話です。
つまり、若手の離職理由を「結局はやりがい」とも「結局は条件」とも言い切れません。どちらの並びにも両方が混ざっていて、変わっているのは順番だけです。
ここが実務上いちばん効きます。引き止めの面談を意義の話だけで設計しても、条件の話だけで設計しても、相手の1位を外す確率が半分残るからです。
思いとどまった人は、何に引き止められたのか
同じ調査は、離職を思いとどまった理由も聞いています。1位は「転職を検討しているが、リスクがあると感じる」15.6%。会社の魅力ではなく、外に出る不安が最初に来ています。
2位は「職場の人間関係がよい、合っている」13.0%、3位は「給与水準に満足している」と「福利厚生が充実している」がともに11.1%でした。
この調査にはもう1つ、示唆のある比較があります。「私と職場の上司の仕事の進め方は合っている」という項目で、辞めたいと思いながら在職している層は3.3、離職者は2.8でした。
出典はここを「差が大きく、上司との仕事の進め方が合っているかどうかが定着に影響していることがうかがえる」と書いています。評価の尺度は公表されていないため、値そのものより、この向きを受け取るのが安全です。
- 残っている理由がリスク回避なら、それは引き止めではなく先送りである
- 人間関係と上司との進め方は、制度より先に動かせる
- 条件の不満は、変えられるものと変えられないものを分けて返す
①〈 直近1か月 〉で、いちばん時間を取られた仕事は何ですか。②その仕事は、入社前に聞いていた話と比べてどうですか。③いま変えられるなら、〈 働き方・進め方 〉のどこを変えますか。
記入例(架空):入社5か月の営業職から「見積の差し戻し対応に週8時間」「入社前は提案業務中心と聞いていた」「差し戻しの判断を上司と1回で決めたい」。条件の話と進め方の話が、同じ1回の面談で出てきます。
若手の離職を「やりがい不足」で説明すると、打ち手が研修とキャリア面談に寄ります。ところが実際に出ていった人が1位に挙げたのは労働環境・条件でした。原因の見立てを1つに決めると、手当てする場所を外します。
この調査で労働環境・条件を理由に挙げた人は、次はどこかの会社の求人票を開きます。前職で言葉にできた不満は、次に見る欄を決める──わたしたちが現場で候補者を見てきた実感では、そう働くことが多いと感じています。
つまり定着の話と募集の話は、同じ1つの情報をめぐって裏表になっています。辞めた人が挙げた条件を、次の求人票に書けるかどうか。そこが分かれ目です。
今日からできる3つ
- 直近1年の退職者の理由を、条件と意味に仕分ける
退職面談のメモを開き、労働時間・給与・進め方は「条件」、やりがい・役割は「意味」に分けます。どちらに偏っているかで、次に打つ手が変わります。仕分けずに施策を選ぶと、多いほうを外します。 - 入社後の面談を、直属の上司以外が1回持つ
上司との仕事の進め方は、辞めたいと思いながら残った人と辞めた人で差が大きかった項目です。当の上司が聞き手だと、その話題はいちばん出にくくなります。人事か別部署が1回入るだけで届く範囲が変わります。 - 条件の不満は、その場で「変えられる/変えられない」を返す
持ち帰って沈黙すると、本人は「言っても無駄」と学習します。変えられないものは理由を添えて断る。それだけでも、思いとどまる理由の1位が不安だけ、という状態からは抜けられます。
よくある質問
Q. 若手の離職理由でいちばん多いのは何ですか?
聞く相手によって変わります。在職者が「辞めたい」と思った理由の1位は「仕事にやりがい・意義を感じない」21.8%、実際に離職した人の1位は「労働環境・条件がよくない」22.4%でした(若手の離職実態調査2026)。
Q. この2つの数字は比べてよいのですか?
傾向の違いを見る範囲であれば比べられますが、引き算はできません。答えているのが在職者と離職者という別の集団で、設問も別だからです。離職者グループの人数はリリースで示されていません。
Q. 引き止めの面談はいつ持てばよいですか?
辞意を聞いてからでは条件の話は間に合いません。思いとどまった理由の1位が「転職のリスクを感じる」15.6%である以上、退職の意思表示より前に、条件と進め方を聞く場を定例で持つほうが確実です。
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出典
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「若手の離職実態調査2026」2026年6月19日公表・調査2026年2月19〜25日・大学/大学院卒で社会人1〜3年目の正社員 n=968 recruit-ms.co.jp
同社による上記リリースの同内容の配信(PR TIMES) prtimes.jp



