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管理職の中途採用──人事と本人で課題の1位が入れ替わる、任せる範囲の1枚

管理職の中途採用──人事と本人で課題の1位が入れ替わる、任せる範囲の1枚

管理職のポジションが半年埋まらない、という相談をよく受けます。ただ、募集の出し方より先に見ておきたいものがあるように思います。

人事担当者と管理職本人に同じことを聞いた調査で、課題を感じている割合はどちらも7割を超えていました。ただ、1位に挙げたものが入れ替わっていました。人事の1位は「パフォーマンスが不十分」53.2%、管理職本人の1位は「負担が大きくなっている」44.9%です。

この記事では、肩書きではなく任せる範囲を示すという考え方と、面談前に埋める1枚の使い方を書きます。

管理職を外から採る会社で起きていること

管理職の中途採用に踏み切る会社の多くは、その前に社内で候補が見つからない状態を通っています。

課長・マネジャー候補の育成や選抜における課題を人事担当者500名に聞くと、1位は「課長・マネジャーになりたいという社員が減っている」で34.0%でした。

リクルートマネジメントソリューションズが2026年6月に実施した調査です。2位が「課長・マネジャー候補に向けた育成の進め方」31.6%、3位が「課長・マネジャーになる前に必要な経験を積ませること」31.6%と続きます。

同じ人事担当者への設問で、管理職候補者を増やすために実施していることを聞くと「実施していることはない」が32.8%でした。3社に1社は、候補を増やす施策を実施していないと答えています。

この状態で外に募集を出すと、社内で人が手を挙げなかったポジションを、外の人に手を挙げてもらう形になります。同じ椅子を、同じ見た目のまま出していないかは一度確かめたいところです。

人事と本人で、課題の1位が入れ替わる

管理職について課題を感じている割合は、合わせて人事担当者で71.0%、管理職層本人で78.0%でした。どちらも7割を超えていて、危機感の量そのものは揃っています。

違うのは順番です。人事担当者が挙げた1位は「管理職としてのパフォーマンスが不十分」53.2%、管理職層が挙げた1位は「仕事の増加や期待の高まりにより負担が大きい」44.9%でした。

管理職の課題1位、人事担当者はパフォーマンス不足、管理職本人は負担の大きさ

人事担当者と管理職層は別々の500名で、同じ会社の人事と管理職を突き合わせた数字ではありません。

ただ、人事担当者もこの「負担が大きくなっている」を2位に挙げています。負担の重さが見えていないわけではなく、1位に何を置くかが入れ替わっている、という差です。

同じ調査で、管理職が難しいと感じている業務の1位は「メンバーの育成・能力開発」54.0%でした。人が足りない現場ほど、育てる時間から先に削られていきます。

候補者が減っているのは、意欲の問題というより椅子の設計の問題なのだと思います。プレイヤーの仕事を抱えたまま管理を足す形になっていれば、見ている人は手を挙げません。

肩書きではなく、任せる範囲を示す

管理職の中途採用で候補者に先に示したいのは、肩書きや年収ではなく「何を任せて、何を任せないか」です。

外から来る人が知りたいのは、その椅子に座ったとき自分の一日がどうなるかだからです。課長職・メンバー6名・年収650万円までは書いてあっても、プレイヤー業務が何割残るのかは書かれていません。

ここが空いていると、候補者は自分の前職の忙しさで埋めて読みます。求人票に全部を書き込む必要はなく、面談で渡す1枚があれば足ります。書くのは、任せること・任せないこと・判断できる範囲・最初の3か月の4つだけです。

例:任せる範囲の1枚(面談で渡す)

① 任せること:〈  〉
② 任せないこと(今は他の人が持つ):〈  〉
③ 自分で決められる範囲:〈金額・人・進め方のどこまでか〉
④ 最初の3か月に期待すること:〈  〉/プレイヤー業務の割合〈 割〉

記入例(架空):営業課長・メンバー6名。① 既存顧客40社の担当配分と、四半期の数字づくり。② 新規開拓の個人目標は持ちません(今期は部長が持ちます)。③ 値引きは10%まで課長決裁。人の配置替えは課内なら相談不要。④ 最初の3か月はメンバー6名との1on1を回すところまで。プレイヤー業務は3割。

Coachers編集部の考察

人事の見立てと本人の見立てがずれたまま募集をかけると、募集要項は「力のある人を探しています」という向きになります。ただ、応募する側が見ているのは、その椅子に何が乗っているかのほうです。

求職者目線

いま課長をしていて、次を探している一人を思い浮かべてみます。その人がまず知りたいのは年収ではなく、前の会社と同じ働き方になるのかどうかだと思います。

管理職層の44.9%が負担の大きさを課題に挙げていたのは、そこが一番痛いところだからかもしれません。

わたしたちが現場でよく聞くのは、「結局プレイヤーのままでした」という転職後の声です。任せない仕事が書いてあるだけで、この不安はかなり下がる気がしています。

管理職の募集は、条件を上げるより、椅子の中身を先に見せるほうが効くことが多いように感じています。求人広告の原稿でいえば、仕事内容の欄に「任せないこと」を一行入れられるかどうかです。

わたしたちCoachersが考えるHRブランディングは、外に出す言葉と中で起きることを揃えていく仕事です。任せる範囲の1枚は、その揃え方を管理職ポジションで試すのにちょうどよい大きさだと思っています。

今日からできる3つ

  1. 募集中の管理職ポジションの「プレイヤー業務の割合」を数字で決める
    管理職層が挙げた課題の1位が負担の大きさ(44.9%)だからです。割合が空欄だと、候補者は前職の忙しさで埋めて読みます。
  2. 「任せないこと」を1つ書き出して、面談で先に伝える
    任せることだけを並べると、範囲が青天井に読めるからです。外す仕事を1つ明示するほうが、任せる範囲は具体的に伝わります。
  3. 社内で候補が挙がらなかった理由を、人事と現場で1回すり合わせる
    同じ課題感でも1位が入れ替わるからです(人事は力量53.2%・本人は負担44.9%)。ここを揃えないまま外に出すと、同じ椅子をそのまま募集することになります。

よくある質問

Q. 管理職は社内から登用するのと、中途で採るのとどちらがいいですか?

どちらが上ということはないと思います。ただ、社内で候補が挙がらない理由を先に見ておくほうが安全です。今回の調査では、人事担当者500名への設問で「課長・マネジャーになりたいという社員が減っている」が34.0%で1位、候補者を増やす施策は「実施していることはない」が32.8%でした。理由が椅子の設計にあるなら、外から採っても同じことが起きます。

Q. 求人票に「任せないこと」まで書くと、消極的に見えませんか?

逆に読まれることが多いと感じています。任せないことが書いてあるのは、範囲を決めて渡す会社だという合図になるからです。求人票に入れづらければ、面談で渡す1枚に書くだけでも十分です。

Q. プレイヤー業務の割合は、正直に高いまま伝えていいのでしょうか?

伝えたほうがいいと思います。入社後に分かることなので、隠しても早期離職に振り替わるだけです。高いなら「今は6割ですが、1年で4割まで下げる計画です」のように、現在地と行き先をセットで示すと受け取り方が変わります。

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出典

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2026」2026年8月31日公表・調査2026年6月・人事担当者500名/管理職層500名 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000198.000029286.html

中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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