有効求人倍率1.17倍、でも新規求人は13カ月連続減──二極化する採用市場の読み方
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有効求人倍率1.17倍、でも新規求人は13カ月連続減──二極化する採用市場の読み方

Branding, 2026.07.02 By 中村 尚人

「有効求人倍率が下がったらしい」というニュースを見て、”少しは採用が楽になるのかな”と感じた方は少なくないかもしれません。わたしたちCoachersも、数字だけを見ると同じように受け取りそうになります。

でも2026年5月の数字を丁寧に読むと、少し違う景色が見えてきます。有効求人倍率は1.17倍と依然として高い水準を保つ一方で、新規求人はなんと13カ月連続で減り続けているのです。

「求人倍率が下がった=採用しやすくなった」とは、どうやら言い切れない。この数字の裏で何が起きているのか、そして中途採用の現場で何ができるのか、一緒に読み解いてみたいと思います。

2026年5月の有効求人倍率は1.17倍(前月比−0.01pt)と高止まりし、完全失業率も2.5%と低水準のまま。全体としては依然「人を採りにくい」市場が続いています。
一方で新規求人は前年同月比8.9%減13カ月連続の減少。企業が求人を絞る局面で、1件あたりの求人の「魅せ方」が結果を左右しやすくなっています。
職種別では一般事務0.29倍・営業2.18倍・建築技術者6.14倍(4月・常用除パート)と二極化が鮮明。数を打つ採用から、限られた枠で”選ばれる”採用への転換が問われています。

有効求人倍率1.17倍は「採用が楽になった」サインなのか

結論から言えば、「楽になった」とは言い切れない、というのが実態に近そうです。有効求人倍率とは、ハローワークに寄せられた求人数を求職者数で割った指標で、1倍を超えれば「求職者より求人のほうが多い=売り手市場」を意味します。5月の1.17倍は前月から0.01ポイント下がったとはいえ、1倍を大きく上回る水準が続いています。完全失業率も2.5%で横ばい。全体像としては、まだまだ人を採りにくい環境です。

KEY DATA
有効求人倍率(2026年5月)
1.17
前月比 −0.01pt・2カ月ぶり低下
新規求人(前年同月比)
−8.9%
13カ月連続の減少
完全失業率(2026年5月)
2.5%
前月比 横ばい

注目したいのは、倍率の小さな低下が「求職者が増えたから」ではなく、企業側が新規求人を絞ったからという側面です。新規求人は前年同月比で8.9%減り、これで13カ月連続の減少。物価高騰や省人化の流れのなかで、企業が募集そのものを慎重にしている姿が浮かびます。応募が集まりやすくなったというより、市場全体が”様子見”に入っていると読むほうが自然かもしれません。

「平均1.17倍」の裏で進む、職種の二極化

全体の倍率は、あくまで多くの職種をならした平均値です。実際には、職種によって採用のしやすさは驚くほど違います。2026年4月の職種別(常用・除パート)を見ると、その差がはっきりします。数字が大きいほど「1人の求職者を多くの企業で取り合っている」状態です。

IMPACT MAP
建築・土木・測量技術者6.14倍
 
介護サービス3.22倍
 
営業2.18倍
 
情報処理・通信技術者1.47倍
 
一般事務0.29倍
 
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年4月分)」常用(除パート)。バーは最大値6.14倍を100%とした相対表示。

一般事務のように1人の枠に3〜4人が応募する職種もあれば、建築技術者や営業のように1人を数社で奪い合う職種もある。同じ「中途採用」でも、置かれている状況はまるで違います。だからこそ、「平均1.17倍」を自社の実感にそのまま当てはめると、打ち手を見誤りかねません。まず自社が採りたい職種は、集まりやすい側なのか、取り合う側なのか——ここを見極めることが出発点になりそうです。

「数を打つ採用」から「選ばれる採用」へ

企業が求人を絞り、職種によっては候補者を取り合う——この局面で効きにくくなるのが、「とにかく多くの媒体に出して母数で勝負する」という数の発想です。求人枠が減れば、同じ職種の求人はむしろ密集し、平凡な原稿は埋もれやすくなります。いま問われているのは、限られた1件を、どれだけ”選ばれる”ものにできるかです。

COMPARISON
これまで:数で回す
母数で勝負する採用
できるだけ多くの媒体に出稿し、応募の総数で確率を上げる。求人が豊富で候補者も動いていた時期には有効でした。求人枠が絞られ同職種が密集すると、平凡な原稿は埋もれ、費用対効果が下がりやすくなります。
これから:質で選ばれる
魅力で選ばれる採用
「誰に、何を届けるか」を絞り込み、求人原稿と採用サイトでなぜここで働くのかを言語化する。取り合う職種でも候補者の第一想起に入り、集まりやすい職種でも”来てほしい人”に届きやすくなります。

これは「出稿をやめよう」という話ではありません。出す前に魅せ方を整えるだけで、同じ予算でも届き方が変わる、という順番の問題です。数字が示す市場の変化は、奇しくも「魅力づけに投資する価値が上がっている」というメッセージにも読めます。

よくある疑問(FAQ)

FAQ
Q
有効求人倍率が下がると、中途採用は楽になりますか?
A
一概には言えません。2026年5月の有効求人倍率は1.17倍と1倍を大きく超え、依然として人を採りにくい売り手市場が続いています。倍率の小さな低下は企業が新規求人を絞った(13カ月連続減)ことの反映という面もあり、採用のしやすさが改善したとは限りません。
 
Q
職種によって採用のしやすさはどれくらい違いますか?
A
大きく異なります。2026年4月の職種別(常用・除パート)では、一般事務が0.29倍と応募が集まりやすい一方、営業は2.18倍、建築・土木・測量技術者は6.14倍と、専門職や現場職ほど1人を多くの企業で取り合う構図です。「平均1.17倍」は職種差をならした数字にすぎません。
 
Q
新規求人が減っているのに、なぜ採用は難しいままなのですか?
A
求人数が減っても、動く候補者(特に中核人材)が同じように増えるわけではないためです。求人を絞る企業が増えると、限られた候補者を「どの求人が魅力的か」で奪い合う構図が強まり、原稿や採用サイトでの魅せ方の差が結果を左右しやすくなります。
 

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

今回の数字を眺めていて感じたのは、「マクロの1つの数字だけを見ると、判断を誤りやすい」ということでした。有効求人倍率も新規求人数も、それ単体では”追い風”にも”向かい風”にも読めてしまう。大事なのは、自社が採りたい職種という解像度まで数字を落として見ることかもしれません。

そして、求人が絞られ職種で二極化するほど、効いてくるのがHRブランディング・採用ブランディングの発想だと感じています。候補者からすれば、選択肢が減ったわけではありません。むしろ「どこを選ぶか」を、これまで以上にシビアに見比べています。求人広告の原稿を一段見直すだけでも、「なぜこの会社なのか」の伝わり方は変わります。数を足す前に、いまある1件の言葉を磨く——遠回りに見えて、二極化の時代には近道になりやすい気がしています。

わたしたちCoachers自身も採用に向き合う一社として、「倍率が下がったから」と気を緩めず、届けたい人に届く魅せ方を地道に整えていきたいと思っています。

ACTIONS
採りたい職種の”倍率感”を確認する
自社が採用したい職種が、事務のように集まりやすい側か、営業・専門職のように取り合う側かを一度整理する。母集団が集まる前提か、奪い合う前提かで打ち手はまるで変わります。
 
出稿を増やす前に、求人1件を読み返す
いま出している求人原稿や採用ページが「なぜここで働くのか」に答えているか、候補者の目線で読み直す。数を足す前に、1件の言葉の質を上げるほうが先かもしれません。
 
「倍率が下がった=楽」ではないと目線合わせ
依頼元や現場と、市場の前提を共有しておく。数字の受け取り方がずれたまま採用計画を立てると、期待値のギャップが後で効いてきます。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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