採用オウンドメディア、運用企業の4割が「何を発信するか」で迷う──選ばれる始め方
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採用オウンドメディア、運用企業の4割が「何を発信するか」で迷う──選ばれる始め方

Branding, 2026.07.05 By 中村 尚人

「採用サイトはあるのに、なぜか他社と同じに見えてしまう」——そんなモヤモヤを感じたことはありませんか。実は、採用オウンドメディアを始めた企業がまずつまずくのは、デザインでもネタ切れでもなく、もっと手前の「何を発信すればいいのか」という一点でした。

採用に関わる人事・経営者640人に聞いた調査(TalentXが2024年に実施)では、運用企業の40.7%が「何を発信していいかわからない」と答えています。少し前の調査ですが、この“発信の迷子”は、いまも多くの現場で耳にする悩みです。

では、何から書けばいいのでしょうか。今日は「選ばれる発信」の入口を、わたしたちCoachersも同じ採用の当事者として、一緒に整理してみたいと思います。

採用オウンドメディアを運用する企業は57.9%、検討中を含めると8割超で、“発信して選ばれる”採用は珍しくなくなっています(TalentX・2024年調査)。

一方で運用企業の課題は「マーケノウハウがない51.9%」「何を発信していいかわからない40.7%」「ペルソナが定まらない34.5%」で、つまずくのはネタや技術より“誰に何を”の設計です。

発信のネタは「採りたい1人」が転職時に不安に思うことから逆算すると出てきます——特別な話より、日常の一次情報が候補者に響きます。

つまずくのは「ネタ」ではなく「誰に何を」だった

採用オウンドメディアとは、自社で運営し、社員インタビューや仕事の実態など“求人票に載らない情報”を継続的に発信する採用メディアのことです。募集要項が中心の採用サイトに対して、働く姿や価値観を伝え、「この会社で働くイメージ」を持ってもらう役割が中心にあります。

TalentXが採用に関わる人事・経営者640人に聞いた調査(2024年実施)では、すでに57.9%が運用中で、検討中の25.1%を合わせると8割を超えます。少し前の数字なので、生成AIで発信のハードルが下がったいまは、この割合はさらに上がっていそうです。“やっている会社”はもう珍しくありません。ではみんな順調かというと、そうでもないようです。運用企業が挙げた課題の上位は、次の3つでした。

IMPACT MAP
マーケティングのノウハウがない51.9%
何を発信していいかわからない40.7%
ペルソナ(誰に届けるか)の定義がわからない34.5%

並べてみると、上位はどれも「操作」や「制作」の話ではなく、“誰に、何を伝えるか”という設計の悩みだと分かります。この設計のつまずきは、ツールがどれだけ進化しても残る、時期を問わず普遍的な部分かもしれません。同じ調査で運用の目的を聞くと、「自社の認知度向上(59.5%)」「競合との差別化(51.4%)」「エントリー数の増加(48.3%)」が上位でした。目的ははっきりしているのに、その入口の「何を書くか」でつまずいている——ここに、選ばれる発信のヒントがありそうです。

「何を発信するか」を決める4ステップ

「何を書けばいいかわからない」の正体は、たいてい“対象が広すぎる”ことにあります。全員に向けて書こうとすると、当たり障りのない一般論になってしまう。だからこそ、順番は「誰に」から始めるのがおすすめです。無理のない4ステップにしてみました。

STAGE FLOW
STAGE 1「採りたい1人」を実在の社員に重ねる
抽象的なペルソナより、実在する社員を1人思い浮かべるほうが言葉が出ます。「この人みたいな人に来てほしい」を起点に、その人が転職時に何を不安に思ったかを書き出してみます。

STAGE 2その人の“知りたい”から逆算してネタを出す
仕事の一日、一緒に働く人、評価のされ方、入社後のギャップ——求人票に書ききれない一次情報を社内から集めます。ネタ探しより「不安の逆算」だと考えると、5つ10つと出てきます。

STAGE 3背伸びせず“自社の言葉”で正直に書く
良い面だけでなく、大変さも一言添えます。候補者は生成AIや口コミで裏取りする時代なので、盛った情報はかえって信頼を削ります。正直さそのものが、他社との差になります。

STAGE 4小さく出して、反応を見ながら続ける
完璧な記事を毎週出す必要はありません。月1本でも、応募者に「どこを見て応募したか」を聞き、響いた切り口を増やしていくほうが続きます。継続そのものが認知になります。

4つ並べると大がかりに見えるかもしれませんが、要は「誰に→何を→正直に→少しずつ」の順番です。特別な制作チームがなくても、STAGE 1と2を紙1枚で書き出すだけで、「何を発信するか」の霧はだいぶ晴れてきます。

採用オウンドメディア、よくある3つの疑問

FAQ
Q
採用オウンドメディアとは?普通の採用サイトと何が違うの?

A
採用オウンドメディアとは、自社で運営し、社員の姿や仕事の実態など“求人票に載らない情報”を継続的に発信する採用メディアのことです。募集要項が中心の採用サイトに対し、働くイメージや価値観を伝えて「この会社で働く自分」を想像してもらう役割が中心です。両者は対立せず、採用サイトを土台に発信を足していくイメージが近いです。

Q
何から発信すればいい?ネタが思いつきません。

A
まずは「採りたい1人」が転職時に不安に思うことから逆算すると、ネタは出てきます。仕事の一日、一緒に働く人、評価のされ方、入社後のギャップ……。特別な出来事より、日常の一次情報のほうが候補者には響きやすいです。

Q
一人担当・小さな会社でも続けられますか?

A
完璧な記事を毎週出す必要はありません。月1本でも、応募者が知りたい順に少しずつ増やすほうが続きます。まずは求人原稿や既存の採用サイトに一段落足すところからでも、十分に第一歩になります。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

同じ調査では、運用企業の約94%が「もっと早く始めればよかった」と答えています。採用オウンドメディアの支援を手がけるTalentXの調査なので、その分は少し割り引いて読む必要はありますが、現場で聞く実感とも大きくはズレていない気がしています。ただ、この数字が示すのは「早く始めた者勝ち」というより、発信を続けた会社が候補者の記憶に残っていく、という順序なのかもしれません。

HRブランディングの観点で見ると、発信の目的は“うまく見せる”ことではなく、“正しく伝わる”ことです。候補者が生成AIや口コミで裏取りする時代には、盛った情報はむしろ信頼を削ってしまう。求人原稿の一行を、「誰に向けた言葉か」まで具体にするだけでも、伝わり方は変わってくると感じています。

発信は、特別なネタがある会社だけのものではありません。日々の仕事や、一緒に働く人の話こそ、他社が真似できない一次情報です。わたしたちCoachersも、自分たちの言葉で語ることの難しさと大切さを、日々感じながら手を動かしています。

ACTIONS
「採りたい1人」を実在の社員に重ねる
採用したい人物像を、実在する社員1人の顔で具体化してみる。抽象的なペルソナより、ぐっと言葉が出てきます。

発信ネタを“不安の逆算”で5つ書き出す
その1人が転職時に不安に思うこと(仕事の実態・人・評価・入社後)から、記事ネタを5つメモしてみる。

まず求人原稿か採用サイトに一段落足す
新しいメディアを立ち上げる前に、既存の原稿へ「働く環境が伝わる一段落」を足すところから始めてみる。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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