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採用業務のAI活用、導入企業の53.3%は工数が減らず──AIと人の線の引き直し方
スカウトの文面は、AIが3分で書いてくれるようになりました。求人原稿のたたき台も、面接の質問案も。それなのに、今週の退勤時間は先月とあまり変わっていない——もしそう感じているとしたら、それはご自身の使い方が下手だから、ではないかもしれません。
株式会社TalentXが2026年4月に実施した調査(従業員500名以上の企業の人事担当者213名)では、採用にAIを導入した企業のうち、導入後も工数が「変わらない、もしくは増えた」と答えた人事担当者が53.3%にのぼりました。半数が減らせている一方で、半数は減っていない。この差はどこから生まれているのでしょうか。
同じ調査には、もう一つ気になる数字があります。候補者の側も、企業のAIの使い方を見ている、という結果です。今日は「AIと人のあいだに、どこで線を引くか」を、採用担当者の実務と候補者の目線の両方から一緒に考えてみたいと思います。
58.3%
53.3%
67.9%
59.8%
出典:株式会社TalentX「採用活動におけるAI活用に関する実態調査 2026」(2026年4月28日実施・人事担当者213名/中途採用候補者221名)
なぜ、採用にAIを入れても工数が減らないのでしょうか
結論から言えば、ツールの性能よりも「どこを任せるかが決まっていない」ことのほうが大きく効いているようです。同じ調査では、AIと人の役割分担が不明確な企業が67.9%、AI活用の投資対効果(ROI)を定量的に把握していない企業が51.3%。任せる範囲も、効いたかどうかの物差しも、決めないまま走り出している企業が多数派だった、という結果でした。
出典:TalentX「採用活動におけるAI活用に関する実態調査 2026」(2026年4月28日実施・人事担当者213名)
工数が減らない状態を、担当者のスキル不足として語られてしまうことがあります。けれど67.9%という数字を見ると、これは個人の習熟の話というより、「誰が何を担当するか」という設計が空白のまま道具だけが増えた構造の問題に見えてきます。線が引かれていないと、AIが出したものを人が全部見直すことになり、結局チェック工数が上乗せされる。減らないのは当然かもしれません。
なお、この調査の対象は従業員500名以上の企業です。数十名規模の会社ではそもそも採用担当が一人ということも多く、事情はそのまま重なりません。ただ「線を引かないまま導入すると、二重チェックが生まれる」という構図は、規模が小さいほど一人に集中しやすい話でもあります。
AIに任せる仕事と、人が担う仕事は、どこで線を引けばよいのでしょうか
ひとつの引き方は、「時間を削るために使う」のか「候補者の理解を深めるために使う」のかで分けてみることです。前者は自動化、後者は人の力の拡張(オーグメンテーション)と呼ばれることがあります。同じツールでも、どちらの目的に置くかで、生まれるものがかなり変わってきます。
大事なのは、線を引いたうえで「浮いた時間の行き先」を先に決めておくことだと感じています。行き先を決めずに削ると、時間は他の業務にすっと吸い込まれ、採用体験は何も変わりません。逆に「一次面接の前に15分だけ電話する」のような使い道を先に決めておくと、削減がそのまま候補者への手当てに変わります。
候補者は、企業のAI活用をどう受け止めているのでしょうか
同じ調査では、転職を検討している中途採用候補者221名にも聞いています。工数削減のためだけのAI活用が見えると志望度が下がると答えた候補者は59.8%。一方で「自分を深く理解した対話」を期待する候補者は40.1%でした。AIそのものを嫌っているのではなく、「自分は処理されている」と感じる瞬間に気持ちが離れる、という読み方ができそうです。
この感覚は、以前ご紹介したAI面接に対する転職者の反応(1次はOK・最終は人と)とも重なります。効率化そのものへの拒否感ではなく、「どの場面で人が出てくるか」を候補者は見ている。線引きは社内の業務設計であると同時に、候補者から見える会社の姿勢でもあるようです。
わたしたちCoachersも、原稿のたたき台づくりや情報整理でAIを日常的に使っています。そのうえで感じているのは、AIが得意なのは「整えること」で、苦手なのは「その会社にしかない具体を持ってくること」だということです。具体は、現場に聞きにいかないと出てきません。
受信箱に、今週3通目のスカウトが届いています。どれも文章はきれいで、どれも自分の経歴に触れているようで触れていない。そんななかで一通だけ、担当プロジェクトの名前と「ここが弊社の◯◯と重なると思いました」の一文が入っていたら、返信するのはおそらくその一通です。候補者が見ているのはAIを使ったかどうかではなく、自分のことを読んだ形跡があるかどうかなのかもしれません。
面接でも同じことが起きている気がしています。準備された質問がなめらかに流れていくほど、「自分でなくてもよかったのでは」という感覚が残る。逆に、経歴の一行に引っかかって深掘りしてもらえた面接は、志望度が上がったという声をよく聞きます。AIで浮かせた時間の使いどころは、たぶんここにあります。
HRブランディングの視点で見ると、AIの導入は「効率化の話」であると同時に「会社の見え方の話」でもあります。求人原稿にしても、AIが整えた一般的な言葉だけで埋まっている会社と、現場の具体が一行入っている会社では、候補者が受け取る誠実さの量がまるで違ってきます。
だからこそ、線を引くときの問いは「どこまで自動化できるか」ではなく、「どこに人が出るか」から始めるほうがよさそうです。忙しい採用担当の方ほど前者から考えたくなりますし、わたしたちも例外ではありません。それでも、後者から決めたほうが結果的に候補者に届くものが残る——そんなふうに感じています。
- 株式会社TalentX「<AIネイティブ採用調査2026>採用AIを導入する企業の約53.3%が「機能していない」実態、採用力を高める鍵は「候補者体験」」(2026年6月18日公開/調査は2026年4月28日実施・人事担当者213名・中途採用候補者221名) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000036924.html
- 株式会社TalentX ニュースリリース(同調査の自社掲載ページ) https://talentx.co.jp/news/p260618
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