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試用期間を求人票にどう書くか──候補者が身構える3点と、伝わる直し方
求人票の、ずいぶん下のほう。仕事内容でも給与でもなく、条件欄にぽつんと置かれた「試用期間3ヶ月」という一行があります。書いた側は事務的に埋めただけの欄かもしれません。でも、応募ボタンを押す直前の候補者が、いちばん何度も読み返しているのは、案外この一行だったりします。
「3ヶ月って、その間は何が違うんだろう」「給与は下がるのかな」「そもそも、落とされることがあるのか」。書いていないことは、たいてい悪いほうに想像されます。いま働いている会社を辞めて移ってくる人なら、なおさらです。
試用期間は、法律上どう位置づけられているのでしょうか。そして求人票には、どこまで書けばいいのでしょうか。隠すのでも脅すのでもない書き方を、一緒に整理してみたいと思います。
試用期間は、会社が見極めるための期間なのでしょうか
試用期間とは、採用した人が自社で働いていけるかを一定期間かけて確かめる制度で、多くの会社が3ヶ月から6ヶ月ほどで設定しています。ただ、ここでよく起きるすれ違いがあります。会社側は「見極める期間」と捉えているのに対し、法的な位置づけはもう少し違うところにあります。
労働法の議論では、試用期間つきの採用は「解約権留保付労働契約」という言葉で説明されることが多くあります。少し硬い言葉ですが、意味はシンプルで、労働契約はもう始まっていて、会社に留保されているのは解約する権利のほうだ、という整理です。つまり「まだ正式に入社していないお試し期間」ではなく、すでに入社している人に対して、例外的な余地が残されている状態、というほうが近い。この名前をひとつ知っているだけで、試用期間の設計は少し変わってくる気がしています。
この双方向性に気づくと、試用期間の運用は「落とすかどうかを決める3ヶ月」から「お互いに確かめ合う3ヶ月」に変わります。そして求人票に書くべきことも、自然と変わってきます。会社が何を見るかだけでなく、その間に会社が何を提供するのかを、同じ分量で書けるようになるからです。
求人票の試用期間欄には、どこまで書けばいいのでしょうか
求人票で試用期間に触れるとき、最低限そろえたいのは「期間」「その間の労働条件」「本採用後との違い」の3点です。これは書いたほうが親切、という次元の話ではありません。職業安定法にもとづく労働条件等の明示ルールでは、試用期間中の労働条件が本採用後と異なる場合、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示することが求められています。給与や待遇に差をつけているのに求人票が本採用後の条件だけを載せている状態は、ルールの面からも見直したいところです。
加えて2024年4月からは、すべての労働者について「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりました。試用期間の話と直接は重なりませんが、入社前に伝える情報の解像度を上げる方向に、ルール全体が動いていることは押さえておきたいと思います。求人票を「募集の告知」ではなく「入社前の説明資料」として作り直す、という感覚に近いかもしれません。
なお「差があるなら隠したほうが応募は増えるのでは」と迷う場面もあると思います。ただ、入社後に知らされた条件差は、そのまま早期離職の理由になりやすい。入口で減る応募より、入社後に失う一人のほうが、たいてい高くつきます。採用にかけた費用も、受け入れた現場の時間も、まとめて戻ってこないからです。
今日から直せる3ステップ
大がかりな見直しは要りません。自社の求人票を1枚開いて、条件欄まで下がるところから始められます。順番はこの3つです。
求人票の条件欄は、いちばん後回しにされやすい場所だと感じています。仕事内容や募集背景には何度も手を入れるのに、試用期間の行だけは何年も前のテンプレートのまま、ということは珍しくありません。わたしたちCoachersも、原稿を書く仕事をしていながら、条件欄の一行に候補者がどれだけ時間をかけているかを、つい見落としそうになります。
御社の求人票を開いて、条件欄までスクロールした一人の候補者を想像してみます。その人はいま働いていて、辞めるかどうかを決めかねています。「試用期間3ヶ月」の一行を読んだとき頭をよぎるのは、たぶん制度の話ではなく生活の話です。前の会社を辞めた後で、この3ヶ月に何かあったらどうなるのか。そこに答えが書いていなければ、応募は「もう少し考えよう」に変わるかもしれません。
わたしたちが現場でよく聞くのは、面接の終盤に遠慮がちに「試用期間中って、条件は変わりますか」と尋ねられる場面です。聞けた人はまだいいほうで、聞けないまま候補から外している人のほうが、おそらく多いのだと思います。求人票に一文あるだけで、その質問をしなくて済む人が増えるのではないでしょうか。
わたしたちがHRブランディングという言葉で考えているのは、こういう細部の話でもあります。立派なメッセージを掲げることより、条件欄の一行に誠実さが出ているかどうか。求人広告の原稿を見直すとき、いちばん反応が変わるのは、キャッチコピーではなく条件欄だったりします。
試用期間は、会社が相手を試す期間であると同時に、候補者から会社が試されている期間でもあります。どちらの視線も入っている求人票は、読んだときの手ざわりが少し違う。まずは1枚、条件欄まで下がって読み返してみませんか。
- 厚生労働省「平成29年職業安定法の改正について」(リーフレット「労働者を募集する企業の皆様へ」2018年1月1日施行) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497.html
- 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
- 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
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