採用計画の立て方──中小企業の59.6%が予定人数を採れない、下期の4手順
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採用計画の立て方──中小企業の59.6%が予定人数を採れない、下期の4手順

Branding, 2026.08.20 By 中村 尚人

「来期は何人採るか」——採用計画をつくるとき、まずその数字から書き始める会社は多いかもしれません。わたしたちCoachersも、計画書の一行目はいつも人数でした。

ただ、リクルートワークス研究所が2025年10〜11月に行った調査では、上半期に必要な人数を確保できなかった企業が56.6%。従業員5〜299人に絞ると59.6%でした。外れていたのは、人数の読みではなかったのかもしれません。

KEY DATA/ この記事の数字
SMALL / 2025H1
59.6%
中小・未確保
ALL / 2025H1
56.6%
全体・未確保
D.I. / FY2026
13.8pt
中途採用D.I.

出典:リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2026年度見通し、2025年度上半期実績 正規社員)」(2025年10〜11月調査・2026年2月公表)。確保状況は2025年度上半期に中途採用を実施した企業 n=3,387(従業員5〜299人は n=1,591)。D.I.は2026年度に中途採用数が「増える」-「減る」の差(n=4,071)。

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採用計画は、どこでずれるのでしょうか

採用計画がずれる原因の多くは、採用人数の読み違いではありません。その人数に届くまでに何人減るかが、計画に入っていないことのほうが多いです。

リクルートワークス研究所の調査では、2025年度上半期に中途採用を実施した企業のうち、必要な人数を「確保できなかった」と答えたのは56.6%でした。

  KEY METRIC / 従業員5〜299人企業
59.6%
同じ調査を従業員規模で割ると、5〜299人の企業では59.6%が「確保できなかった」と答えています。一方、5,000人以上の企業では「確保できた」47.7%が「確保できなかった」46.5%をわずかに上回りました。規模が小さいほど、計画と実績の差が開いています。

リクルートワークス研究所「中途採用実態調査」(2026年2月公表)/上半期に中途採用を実施した企業 n=3,387

業種で見ると、医療・福祉66.3%、建設業62.6%、運輸業62.1%が「確保できなかった」と答えています。

一方で、採用を増やしたい気持ち自体は落ちていません。2026年度の中途採用D.I.(「増える」-「減る」)は13.8ポイントで、5年連続のプラスです。

ただ前年度の17.5ポイントからは3.7ポイント下がりました。増やしたいけれど、勢いは少し落ち着いた——そんな数字に見えます。

増やす計画は立つ、けれど半分以上が届かない。この間にあるのが、選考の途中で人が減っていく歩留まりです。

応募→書類通過→面接通過→内定→承諾と、段階ごとに細くなっていく形は、採用ファネルと呼ばれます。名前がつくと、計画の中で扱いやすくなります。

計画に人数だけを書くと、このファネルの細り方が見えません。逆に言えば、細り方さえ分かれば、必要な応募数は計算できます。

採用計画の立て方──4つの手順

中途採用の計画は、次の4つに分けると組み立てやすくなります。順番が大切で、3と4を先に決めると、1と2があとから帳尻合わせになりがちです。

1
必要人数を「欠員」と「増員」に分ける
退職で空く席と、事業計画で増やす席は、求める人も入社してほしい時期も違います。最初に分けておくと、あとの要件づくりで迷いません。
2
歩留まりから、必要な応募数を逆算する
直近1年の応募数・書類通過・面接通過・内定・承諾の実数を並べ、各段階の通過率を出します。採用人数をその通過率で割り戻すと、必要な応募数が出ます。
3
要件を「必須」と「歓迎」に割る
逆算した応募数に届きそうにないときは、まずここを見ます。必須を3つまでに絞り、残りを歓迎へ移すだけで、入口の広さは変わります。
4
手法と予算を、逆算した応募数に合わせる
「予算がこれだけあるからこの媒体」ではなく、「応募が◯件必要だから、この媒体でこの枠」の順に決めます。媒体側との会話も具体的になります。
  EXAMPLE / 採用人数の逆算

手順2の逆算は、紙1枚で足ります。下の型に、直近1年の自社の数字を入れてみてください。

採用したい人数〈 〉名 ÷ 承諾率〈 〉% ÷ 面接通過率〈 〉% ÷ 書類通過率〈 〉% = 必要な応募数〈 〉
記入例1|機械器具製造業・製造オペレーター/10月入社2名
2名 ÷ 承諾率50% ÷ 面接通過率30% ÷ 書類通過率25% = 必要な応募数 約54件
記入例2|サービス業・法人営業/1名
1名 ÷ 承諾率60% ÷ 面接通過率40% ÷ 書類通過率40% = 必要な応募数 約11件

記入例は書き方を示すための架空の数字です。通過率が分からない欄は、まず「不明」と書いておくだけでも、次に何を測ればいいかがはっきりします。

1名あたりに必要な応募数は、記入例1で約27件、記入例2で約11件。同じ「1名採用」でも2倍以上の開きが出ます。

人数だけの計画では、この差が最後まで見えません。だから「今年は運が悪かった」という総括になりがちなのだと思います。

立てた計画は、求人票のどこに出るのでしょうか

採用計画のうち候補者の目に触れるのは、計画書ではなく求人票の数行です。とくに手順3で必須要件をどこまで絞ったかは、応募条件の欄にそのまま出ます。

  COMPARISON / 同じ条件、置き場所だけ変える
BEFORE
全部を「必須」に入れる
【必須】同職種3年以上/普通自動車免許/CAD経験/マネジメント経験/宅建
5つ全部を満たす人だけが「自分のことだ」と読みます。
AFTER
必須3つ・残りは「歓迎」へ
【必須】同職種3年以上/普通自動車免許/CAD経験
【歓迎】マネジメント経験/宅建
手前の層まで「応募していい」と読めます。

条件を薄くする話ではありません。書いてある内容は同じで、置き場所を変えただけです。

採用計画の巧拙は、こうして一枚の求人票に集約されて候補者に届きます。計画書そのものは、誰にも読まれません。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

求人原稿のご相談をいただくとき、最初に見せていただくのは求人票ですが、そのうしろにはたいてい採用計画があります。

そして「何人採る」は決まっているのに「何件応募が要る」は決まっていない、というのが、いちばんよく出会う形です。

CANDIDATE VIEW | 求職者目線

御社の求人を開いた候補者は、採用計画の存在を知りません。見えているのは、応募条件の欄に並んだ数行だけです。

その数行を読んで、5つのうち4つは当てはまるけれど1つ足りない、と分かったとき、多くの人は応募ボタンを押しません。「必須」と書かれた条件は、足りなければ落ちる条件として読まれます

わたしたちが現場でよく聞くのは、「応募が来ないので条件をひとつ歓迎に移したら、しばらく前から見ていたらしい人が応募してきた」という話です。

その人は最初から市場にいて、押していなかっただけなのかもしれません。だとすれば手順3は、計画の中でいちばん安く動かせる場所だと思います。

何を必須とするかを決める作業は、HRブランディングの入口でもあると感じています。どんな人と働きたいかの表明が、そのまま条件欄に出るからです。

求人広告の原稿を書こうとして「うちは結局どこを譲れないんだったか」で手が止まる。そこから採用計画が整い始めることは、実際によくあります。

なお、この調査が見ているのは2025年度の上半期です。2026年のいまは数字が動いているかもしれません。ただ「歩留まりが入っていない計画はずれる」という部分は、時期を問わず変わらないところだと思っています。

ACTIONS / 今日からできる3つ
直近1年の選考実数を、5つの箱に並べる
応募・書類通過・面接通過・内定・承諾の実数を書き出します。感覚で置いた目標は翌年に検証できませんが、通過率は次の計画にそのまま使えます。
必須要件を3つまでに削り、残りを「歓迎」に移す
必須(Must)と歓迎(Want)に割るだけで、条件欄の見え方が変わります。条件を捨てるのではなく置き場所を変える作業なので、現場の合意も取りやすいはずです。
媒体の商談に「必要応募数」を持っていく
予算ではなく件数で話すと、提案の中身が変わります。逆算の紙1枚があるだけで、枠の大きさの根拠を相手と共有できます。
FAQ / よくある質問
Q. 採用計画はいつ立てるのがよいですか?
中途採用は内定から入社まで1〜2か月かかることが多いので、入社してほしい月の3〜4か月ほど前に枠を決めておくと動きやすいです。10月入社を狙うなら、いまが見直しの時期にあたります。
Q. 採用人数はどう決めればいいですか?
事業計画で増やす席(増員)と、退職で空く席(欠員)を分けて出すと決めやすくなります。欠員は過去の退職者数から、増員は事業計画から引くと、社内で根拠を説明しやすくなります。
Q. 中小企業でも採用計画書は必要ですか?
分厚い書類は要りません。必要人数・必要応募数・必須要件3つ・使う媒体、この4つが1枚に載っていれば計画として働きます。むしろ規模が小さい会社ほど計画と実績の差は開きやすく、従業員5〜299人の企業では59.6%が必要な人数を確保できなかったと答えています。
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REFERENCES
中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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