正社員の有効求人倍率は1.00倍。ハローワークに登録している求職者1人に対して、正社員の求人が1件ある計算です。数字だけを見れば、奪い合いというほどではありません。ところが同じ月、ハローワークに出た正社員求人のうち実際に採用が決まったのは8.2%でした。
求人の数は足りている。なのに、12件に1件しか決まらない。この差が何を意味するのか、そして採用に人手を割けない会社が先に手を入れるならどこなのかを、一緒に見ていきたいと思います。
1.00倍
8.2%
86.7%
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」2026年8月28日公表。ハローワークにおける求人・求職の集計で、民間の求人媒体や人材紹介は含みません。
正社員の有効求人倍率は1.00倍
2026年7月の正社員の有効求人倍率は1.00倍でした。ハローワークに登録している求職者1人に対して、正社員の求人が1件ある計算です(厚生労働省・季節調整値)。
前年同月は1.02倍だったので、0.02ポイントの低下にとどまります。パートタイムを含む全体の有効求人倍率は1.18倍で、こちらは前月と同水準でした。
ここで一度、言葉を確かめておきたいと思います。有効求人倍率とは、その月に有効な求人数を、仕事を探している人の数で割った数字です。1.00倍は「1人に1件」。奪い合いというより、数の上ではちょうど釣り合っている状態です。
ひとつ補足を。厚生労働省はこの正社員の倍率について、分母の求職者に契約社員などを希望する人も含まれるため、厳密な意味での正社員有効求人倍率より低めに出ると注記しています。実態はもう少し高い可能性がある、という前提で読んでおきたいところです。
それなのに、多くの会社が「採れない」と感じています。この体感と数字のずれは、どこから来ているのでしょうか。
決まったのは100件のうち8件
同じ2026年7月、ハローワークに出た正社員の新規求人のうち実際に採用が決まった割合(充足率)は8.2%でした。前年同月の8.8%から、0.6ポイント下がっています。
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」充足率=就職件数÷新規求人数
パートタイムを含めた全体では10.6%(前年同月10.9%)でした。正社員のほうが、決まりにくい。しかもその差は、前年より少しだけ開いています。
つまり足りていないのは、求人の数ではないのかもしれません。求人と求職者が出会って、双方が納得して決まる確率のほうが下がっている。倍率は市場の広さを、充足率は歩留まりを見ている指標で、両方を並べて初めて景色がつながります。
なお、これはハローワークに出た求人に限った集計です。民間の求人媒体や人材紹介の成約は含まれていないので、市場全体の歩留まりそのものではない点は、押さえておきたいところです。
求人の86.7%は99人以下の会社から
2026年7月にハローワークへ出た新規求人826,561人分のうち、従業員99人以下の企業が出したものが86.7%を占めます。29人以下だけで63.3%です。
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」規模別・新規求人数826,561人分の構成比
この構成比は、採用が苦しい理由の見え方を少し変えてくれます。「うちは知名度がないから」と考えたくなりますが、同じ画面に並んでいるのは大企業ではありません。ほぼ全部が、自社と同じくらいの規模の会社です。
だとすれば、差がつくのは規模でも知名度でもなく、1件の求人をどう書き、どう運ぶかのほうになります。ここは希望のある話だと感じています。
もうひとつ、前年同月比を見ると、29人以下の求人は1.9%減っています。一方で300〜499人規模は6.3%増でした。小さい会社の求人だけが少し細っている、という動きです。
決まらない求人を直す3ステップ
充足率を上げるためにまずやりたいのは、求人を増やすことではなく、いま出している求人がどの段で止まっているかを数えることだと考えています。応募がないのか、面接まで来るのに決まらないのか。止まる場所が違えば、効く手も変わります。
この順番には、ひとつ効く理由があります。求人の件数を増やす打ち手は、充足率が変わらないままだと対応の手間だけが先に増えるからです。少人数で採用を回している会社ほど、1件あたりの確率を上げるほうが軽く済みます。
充足率という指標は、企業側から見れば「決まらなかった率」です。ただ、同じ数字を反対側から見ると、まったく違うものが見えてきます。決まらなかった9割超は、誰にも見られなかったのではなく、見られたうえで選ばれなかった求人でもあるからです。
御社の求人を開いた一人の候補者は、その求人を単体では読んでいません。同じ画面に、同じくらいの規模で、似た条件の会社が何十件も並んでいます。候補者がしているのは選択ではなく、まず絞り込みなのだろうと思います。
わたしたちが現場で聞くのも、「決め手があったから応募した」より「読んでいて、ここは分かる気がしたから残した」に近い言い方です。だとすれば求人票に必要なのは、目を引く一言よりも、読み飛ばされない具体なのかもしれません。仕事の一日の流れ、誰と組むのか、任せたい範囲。そういう情報が1行あるかないかで、絞り込みの網を通れるかが変わってくる気がしています。
わたしたちは、こうした積み重ねをHRブランディングと呼んでいます。大きなキャンペーンの話ではなく、求人広告の原稿1本に、その会社にしか書けない具体がどれだけ入っているか。充足率のような数字は、その積み重ねが薄いところから静かに下がっていくのだと感じています。
とはいえ、わたしたちCoachers自身も採用する側です。忙しい月に求人票を使い回してしまう気持ちも、よく分かります。だからこそ全部ではなく、まず1件から見直すのが現実的だと思っています。
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」(2026年8月28日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75707.html
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」報道発表資料(第1表・第2表・第3表-1) https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001741194.pdf



