来週入社する中途の方を、初日に誰が迎えるか。もう決まっているでしょうか。決まっていないまま当日を迎えると、たいてい「とりあえず席に座っていてください」から始まります。
厚生労働省の調査研究では、中途入社の受け入れで「取り組んでいることはない」と答えた企業が11.4%ありました。ただ、もっと気になったのは、会社が挙げた施策と、本人が受けたと答えた施策がずれていたことのほうです。
この記事では、受け入れの前に決めておく3つと、入社日までに決める4点の埋め方を書きます。
中途採用のオンボーディングとは何をすることか
中途採用のオンボーディングとは、入社した人が職場になじみ、持っている力を出せるようになるまでを会社側が設計して支える取り組みのことです。
研修だけを指す言葉ではありません。
厚生労働省の調査研究(2025年1月〜2月実施)に回答した2,417社のうち、中途採用を実施した2,139社に、取り組んでいる施策を聞いています。
1位は「上司との面談」で55.9%でした。
2位は「導入研修」50.0%、3位は「社内の相談窓口の案内」35.9%でした。研修は2位に入りますが、1位・3位・4位はどれも人と会わせる側の施策です。
「上司との面談」は、この後に見る本人側の調査でも1位でした。
やったつもりは、本人に届いているのか
会社に聞くアンケートと、本人に聞くアンケートでは、同じ項目でも答えが揃っていませんでした。
この調査研究は、中途採用を実施した企業と、中途入社した本人の両方に、同じ施策リストを別々に聞いているのが特徴です。
「社内の相談窓口の案内」は会社側35.9%に対し、本人側は19.0%でした。「人事との面談」も27.3%に対し17.6%です。案内型の施策は、本人側で下がる傾向があります。
逆の動きもあります。「ランチ会や飲み会などの歓迎イベント」は会社側では6番目の20.9%でしたが、本人側では3番目の48.9%まで上がりました。
会社が下のほうに置いた施策のほうが、本人にはよく残っていた形です。
ただし全部がこの向きに動くわけではありません。「導入研修」は50.0%→51.1%とほぼ変わらず、「同僚とのコミュニケーションの取組み」は35.6%→26.9%と下がっています。
両方の調査に回答した企業は871社にとどまり、同じ会社同士を突き合わせた数字ではありません。人事は複数の事例を総じて、本人は自分の事例だけで答える差があると報告書も説明しています。
それでも、案内して終わる施策と、本人が体験として通る施策では、残り方が違うとは言えそうです。
最初に決める3つ
中途採用のオンボーディングで最初に決めたいのは、初日に迎える人・上司と話す日・同僚と会う場の3つです。
制度を増やす前に、人と会う予定を先に置く、という順番になります。
後ろの2つは調査の裏づけがあります。労働者側の回答で差がはっきり出ていた施策が「上司との面談」「同僚とのコミュニケーションの取組み」「チームへの参加に対する支援」だったからです。
1つ目の「初日に迎える人」は調査項目にはありません。ここはわたしたちが現場で見てきた実感として置いています。
- 初日に迎える人を、名前で決める
「人事が」「現場が」ではなく、誰が何時に迎えて30分何を話すかまで決めます。ここが空いていると、初日の記憶が「席で待っていた時間」になります。 - 上司と話す日を、入社前にカレンダーへ入れる
企業側でも本人側でも1位だった施策です。「落ち着いたら」にすると落ち着かないまま3か月が過ぎるので、初週と1か月後の2回を先に押さえてしまいます。 - 同僚と会う場を、1つだけ用意する
飲み会でなくて大丈夫です。昼を一緒に取る、朝会で5分もらう、でも構いません。会社側の回答と本人側の回答でいちばん差が開いたのが、この種の場でした(20.9%→48.9%)。
初日:迎える人〈名前〉/〈何時〉から30分で話すこと〈 〉
初週:上司との面談〈日付〉/聞くこと〈 〉
1か月:同僚と会う場〈何を・いつ〉
3か月:上司との2回目〈日付〉/確認すること〈 〉
記入例(架空):初日:迎える人 田中課長/9時30分から30分で「最初の3か月で任せる範囲」を話す。初週:上司との面談 4月10日/聞くこと「聞ける人が見つかったか」。1か月:営業2課の昼を一緒に取る(5月の第1週)。3か月:上司との2回目 7月6日/確認すること「求人票と実際の担当件数のズレ」。
受け入れが薄くなるのは、担当者の熱意が足りないからではないと思っています。多くの会社で、採用は人事の仕事、入社後は現場の仕事、と責任が入社日でいったん切れる作りになっているからです。
初日に席へ案内されただけで一日が終わった人は、面接で聞いた話をひとつずつ答え合わせしながら最初の数週間を過ごします。本人側の回答で歓迎イベントが3番目まで上がってきたのは、答え合わせの相手が要るからかもしれません。
わたしたちが現場でよく聞くのは、「聞いていいことなのか分からなくて、そのままにした」という声です。相談窓口を案内したかどうかより、聞ける相手が名前で分かっているかのほうが効いている気がしています。
この入社日で切れる線を1本つなぐだけで、選考中に伝えた話と入社後の景色が揃いはじめます。求人広告の原稿を書くときに「この一文は初日に誰が引き受けるのか」まで決めておくと、あとの手戻りがぐっと減ります。
わたしたちCoachersが考えるHRブランディングは、外に出す言葉と中で起きることを揃えていく仕事です。この4点のメモは、その揃え方のいちばん安い入口だと思っています。
今日からできる3つ
- 次に入社する人の「初日に迎える人」を名前で決める
案内したつもりが本人に残りにくいのは、案内が仕組みの話で、記憶に残るのが人だからだと思います。役割ではなく名前まで決めるのが分かれ目です。 - 上司との面談を、入社前にカレンダーへ2回入れる
企業側55.9%・本人側52.8%と、どちらの調査でも1位だった施策だからです。予定に入っていないものは、忙しい月にいちばん先に消えます。 - 入社日までに決める4点を、採用担当から上司へ渡す形にする
採用は人事・入社後は現場、と責任が入社日で切れる作りが原因になりやすいからです。紙が1枚あるだけで、線が1本つながります。
よくある質問
Q. 中途採用のオンボーディングは、どのくらいの期間を見ればいいですか?
最初の3か月を目安に置く会社が多いです。中途採用でも即戦力だからすぐ活躍できるわけではないという声が、厚生労働省の同調査研究のヒアリングでも挙がっています。初日・初週・1か月・3か月の4つの点だけ先に決めておくと、期間の話が具体的になります。
Q. 人手も予算もないのですが、何から始めればいいですか?
研修や制度を作る前に、上司との面談を予定に入れるところからで大丈夫です。企業側でも本人側でも1位だった施策で、費用はかかりません。同じ調査研究では、受け入れ施策に取り組んでいないと答えた企業も11.4%ありました。
Q. 歓迎ランチや飲み会は、やったほうがいいのでしょうか?
形は問わないと思います。本人側の調査で「ランチ会や飲み会などの歓迎イベント」を受けたと答えた割合は48.9%で、会社側が施策として挙げた20.9%より高く出ていました。お酒の場である必要はなく、同僚と話す時間が1回あることのほうが要点だと感じています。
あわせて読みたい
オンボーディング7割超が「標準化は離職防止に効く」──属人化を抜け出す4ステップ
入社後ギャップは新入社員の約8割が実感──26%は1ヵ月以内に離職、防ぐ3ステップ
試用期間を求人票にどう書くか──候補者が身構える3点と、伝わる直し方
出典
厚生労働省「中途採用・経験者採用者が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究 結果報告書」2025年3月・調査2025年1月16日〜2月14日・企業アンケート有効回収2,417社/中途採用・経験者採用者アンケート2,079人 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001489721.pdf



