面接・選考・定着RECRUITING JOURNAL

面接のなりすまし対策──オンライン面接で本人を確かめる3つの場面と案内文

面接のなりすまし対策──オンライン面接で本人を確かめる3つの場面と案内文

画面の向こうで経歴を語る応募者の、唇と声がわずかにずれている。9月10日、都内企業の中途採用のオンライン面接に「AIとみられる応募者」が現れたというXへの投稿が話題になったと報じられました。

面接のなりすましは、もう海外だけの話ではありません。2026年7月31日には警察庁や外務省など5つの機関が、身分を偽って仕事を得ようとする北朝鮮のIT労働者について、企業に注意を呼びかけました。そこには、面接の場で気づける兆候も並んでいます。

この記事では、なりすましの兆候と、書類・面接中・入社前の3つの場面で本人を確かめる方法、そして本人確認を伝える案内文の型をまとめます。全員に同じ手順を先に伝えておけば、候補者を疑わずに、本物の候補者の席を守れます。

面接のなりすましとは、どんな手口なのでしょうか

面接のなりすましとは、応募者本人ではない人物や、AIで作った顔や声が、本人のふりをして選考を受けることです。

手口は大きく2つに分かれます。1つは、別の人が本人の代わりに面接に出る替え玉です。もう1つは、AIで映像や声を合成し、実在しない人物や他人として振る舞うものです。

警察庁などの注意喚起によると、北朝鮮のIT労働者は仕事仲介などのオンライン・プラットフォームに、第三者から提供された身分証の画像で登録し、実際の仕事は自分たちで行っています。

採用面接に代理人を立てるケースも増えているとされ、身分を隠すためにAIを組み込んだ手法も使っていると指摘されています。

見抜けずに採用すると、被害は「合わない人を採った」では済みません。注意喚起は、社内のデータや機微情報を盗まれるおそれに加え、こうした労働者と契約して対価を払うこと自体が、法的責任を問われるおそれがあるとしています。

注意喚起が主に挙げるのは、在宅で完結しやすいIT関連の仕事です。ただ、一次面接をオンラインで行う会社が多い今、「画面の向こうが本人か」を確かめる手順は職種を問わず持っておきたいところです。

なりすましを疑う特徴として、警察庁などは何を挙げているのでしょうか

警察庁などの注意喚起は、北朝鮮のIT労働者が仕事仲介サイトなどで仕事を得ようとする際によく見られる特徴として、人を雇う・仕事を発注する側に向けて6つを挙げています。

  • プロフィールに、機械翻訳のような不自然な表現がある
  • 写真付きの身分証と顔が合わない、映像が加工・生成されたように見える
  • ビデオ会議での打ち合わせを断る
  • 相場より安い報酬で仕事を求めている
  • やり取りの相手が時間帯で変わるなど、複数人で動いている様子がある
  • 暗号資産での支払いを求める

注意喚起は「複数の特徴が当てはまる場合」に可能性がある、という書き方をしています。1つ当てはまっただけで決めつけるものではありません。また、報酬や支払いの項目は契約の場面で出るもので、面接で見えるのは主に映像と受け答えです。

文章の上手さも、手がかりになりにくくなっています。注意喚起自身が、翻訳サービスや大規模言語モデルで、説得力のあるプロフィールを作る場合もあると添えているためです。

面接の場で目に見える手がかりは、映像のほうです。冒頭の投稿では、声と口の動きのずれ、視線の不自然さ、応募先の社名を正しく読めないことなどから、投稿者がなりすましを疑ったと報じられています。

なりすましを防ぐには、どこで本人を確かめればよいのでしょうか

面接のなりすまし対策は、本人確認を面接の1回で済ませず、書類・面接中・入社前の3つの場面に分けて置くのが基本です。

  1. 書類の段階:文章の上手さより、事実の一致を見る
    氏名・連絡先・職歴の年月に食い違いがないか、作品やアカウントの名義が本人と同じかを確かめます。AIで整えた書類は読みやすいため、上手いかどうかでは判断できません。
  2. 面接中:カメラをオンにし、その場でしか答えられない問いを置く
    米FBIは、ビデオをオンにする・背景を隠させない・顔の前で手を振ってもらうといった方法を挙げていると報じられています。あわせて「そのとき、なぜその判断をしたのか」と2段目まで掘り下げると、用意した答えだけではごまかしにくくなります。
  3. 内定から入社前:身分証と、給与の振込口座の名義をそろえる
    写真付きの身分証で、面接で見た顔と氏名を照らします。注意喚起は、報酬の受け取り先に第三者の口座を出す手口も挙げているため、振込口座が本人名義かを確かめる1行を入社手続きに足しておきます。

3つの場面すべてで、確かめる内容は候補者全員に同じにします。怪しいと感じた人にだけ求めると、面接官の印象で扱いが変わり、候補者にも不公平に映ります。そのためには、面接の案内の段階で先に伝えておくのが確実です。

例:面接の案内に足す本人確認の一文

型:①〈面接の形式と時間〉は、カメラをオンにしてご参加ください。②〈背景についてのお願い〉。③〈最終面接か内定時〉に、〈写真付きの本人確認書類〉をご提示いただきます。④これは、すべての応募者の方にお願いしている手続きです。

記入例(架空):一次面接(Web・45分)は、カメラをオンにしてご参加ください。背景ぼかしはお使いいただけますが、冒頭の1分だけ解除をお願いします。最終面接(本社・渋谷)の受付で、運転免許証などの写真付き本人確認書類をご提示ください。これは、すべての応募者の方にお願いしている手続きです。

※マイナンバーカードの場合は表面だけを確かめ、裏面(個人番号)は見ない・写さないようにします。

Coachers編集部の考察

なりすまし対策というと、面接官の「見抜く目」の話になりがちです。けれど目に頼る設計では、見抜けなかったときにその面接官1人の責任になってしまいます。

安全管理には「スイスチーズモデル」という考え方があります。穴のあいた板も、何枚か重ねれば穴が一直線にそろわない限り事故は通り抜けない、というものです。書類・面接中・入社前に確認を分けて置くのは、この板を重ねることにあたります。

求職者目線

面接の途中で突然「手を顔の前で振ってください」と言われた候補者は、自分が疑われていると感じるかもしれません。案内の段階で「全員にお願いしている手続き」と書いてあれば、同じお願いでも、きちんとした会社の手順として受け止めやすくなるはずです。

本人確認は、候補者を疑うための手続きではありません。本物の候補者が座るはずの席を守るための手続きです。そう位置づけて先に伝えることが、選考の信頼を上げる一手になります。

今日からできる3つ

  1. 面接の案内メールに、本人確認の一文を足す
    カメラをオンにすることと、身分証を見せてもらう場面を先に書いておきます。先に知らせておけば、正直な候補者にとっては手続きの1つになり、当日にお願いしても角が立ちにくくなります。
  2. 面接官のメモに「2段目のなぜ」を1問足す
    「そのとき最初に何をしましたか」に続けて「なぜその順番にしたのですか」と聞く1問を用意します。定型の質問はAIでもそれらしく答えられますが、当時の判断の理由は、用意した答えだけでは続きにくいためです。
  3. 入社手続きの書類に、名義の照合欄を1行足す
    身分証の氏名・面接で見た顔・給与の振込口座の名義がそろっているかを、チェック欄1行で確かめます。第三者の口座を受け取り先に出す手口は、入社後では気づきにくいからです。

よくある質問

Q. 面接のなりすましは、どう見抜けばよいですか?

声と口の動きのずれ、視線の不自然さ、ビデオ会議を断る、身分証と顔が合わないといった兆候が手がかりです。1つの兆候で決めつけず、書類・面接中・入社前の3つの場面に分けて本人を確かめます。

Q. オンライン面接でカメラをオンにしてもらったり、身分証を見せてもらったりしてよいですか?

面接の案内の段階で、すべての応募者に同じ手続きとして伝えておくと、候補者も受け止めやすくなります。身分証で確かめるのは氏名と顔写真の照合に絞り、マイナンバーカードの場合は裏面(個人番号)を見ない・写さないようにします。

Q. なりすましは、IT職の採用だけの問題ですか?

警察庁などの注意喚起が主に挙げるのはIT関連の仕事ですが、AIで顔や声を合成する手口は職種を選びません。一次面接をオンラインで行っている会社は、職種を問わず本人確認の手順を持っておくと安心です。

採用の盲点を5分で見つける自己診断(5領域×25問)

採用活動チェックシートを受け取る

選考の流れのどこで本人を確かめるかを決めるところから、相談する

あわせて読みたい

出典

警察庁・国家サイバー統括室・外務省・財務省・経済産業省「北朝鮮IT労働者に関する各国・企業等に対する注意喚起」(仮訳)2026年7月31日 npa.go.jp

ITmedia ビジネスオンライン「『AIなりすまし面接』が現実に 求められる『構造化面接』と採用リテラシー」2026年9月18日 itmedia.co.jp

中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

THANK YOU FOR READING.記事一覧に戻る ↗
ABOUT HR PLAYBOOK

「いい採用」を、
もっと世の中に。

採用に、ひとつの正解はない。
だからこそ、考えるヒントと実践の工夫を。
企業の採用と組織づくりに向き合うCoachersが、
人と組織の「次の一手」をお届けします。

私たちについて
LET’S THINK
TOGETHER.

自社の採用について、
一緒に考えてみませんか。

Coachersに相談する