面接官が3人いれば、質問も3通りになる。中途採用の面接では、珍しくない光景です。
質問がそろわないと、面接官ごとに確かめた中身が変わり、評価を比べられません。そのすき間には、仕事と関係のない質問も入り込みやすくなります。実際に、連合の2026年4月の調査では、15〜29歳の36.9%が面接で「家族に関すること」を聞かれていました。
この記事では、面接官の質問を中途採用向けにそろえるための、経験を確かめる5問の記入例、深掘りの一言、聞かない質問の線引きをまとめます。質問表1枚で、面接官が変わっても同じ中身を確かめられます。
面接官の質問は、なぜ人によってばらつくのか?
面接官の質問がばらつくのは、その面接で何を確かめるかを決めないまま、質問を面接官に任せているからです。
現場の面接官は、ふだん自分の仕事を抱えています。準備の時間が取れないと、聞き慣れた質問や、その場の印象から出た質問に頼りがちです。
中途採用でそろえたいのは、候補者が過去に何をしてきたかを聞く質問です。行動質問とは、候補者が実際にとった行動を、場面と結果まで聞く質問のことです。
同じ行動質問を、全員に同じ順番で聞く。構造化面接の考え方では、この形が評価のぶれを小さくする基本とされています。
中途採用の面接官は、何を質問すればいいのか?
中途採用の面接官が聞く質問は、次の5つにそろえると、面接官が変わっても同じ中身を確かめられます。
- 直近の仕事の範囲を聞く
何を、どの規模で、誰と担当していたかを数字で聞きます。職務経歴書の「担当」「リーダー」は会社ごとに意味が違い、聞かないと中身がそろいません。 - 自分で判断した場面を聞く
成果の中で、本人が決めたことを1つ挙げてもらいます。ここを聞かないと、チームの成果と本人の力を分けられません。 - うまくいかなかった経験を聞く
失敗の原因と、その後に変えたことを聞きます。入社後に壁に当たったとき、どう立て直す人かが見えます。 - 自社の仕事と重なる経験を聞く
先に自社の仕事を具体的に説明してから、似た経験を聞きます。説明を抜くと、候補者は何に寄せて答えればいいか分かりません。 - 候補者からの質問を受ける
仕事や条件で確かめたいことを聞いてもらいます。中途の候補者にとって面接は、会社を見極める場でもあるためです。
質問を決めても、答えが「チームで頑張りました」で止まると、経験は確かめられません。面接官には、深掘りの一言も一緒に渡します。
- 具体的には、いつの、どの案件ですか
- そのとき、ご自身は何をしましたか
- 結果は、数字で言うとどのくらいですか
- もう一度やるなら、何を変えますか
下は、法人営業の一次面接で、面接官に渡す質問表の記入例です。
① 仕事の範囲:直近3年で担当した取引先の数と、いちばん大きかった取引の金額を教えてください。
② 自分の判断:その取引で、ご自身が決めたことを1つ挙げてください。ほかにどんな選択肢がありましたか。
③ うまくいかなかった経験:失注した案件を1つ教えてください。原因は何で、次に何を変えましたか。
④ 自社との重なり:当社の商材は、検討から契約まで半年ほどかかります。似た長さの商談を進めた経験はありますか。
⑤ 候補者からの質問:仕事の中身や条件で、確かめておきたいことは何ですか。
架空の会社の記入例です。①〜④には、上の「深掘りの一言」を1つずつ足して使います。
面接官が聞かない質問は何か?
面接官が聞かない質問は、本籍や家族、尊敬する人物など、仕事の適性や能力と関係のない事柄です。厚生労働省は「採用選考時に配慮すべき事項」の中で、こうした事柄を把握しないよう求めています。
それでも面接の場では聞かれています。連合の調査で、面接で質問されたことがあるものの上位は次のとおりです。

新卒と中途の両方の採用試験を含む、15〜29歳の回答です。
家族、本籍地や出生地、尊敬する人物は、いずれも厚労省の配慮すべき事項に入っています。雑談のつもりの一言でも、候補者には選考の質問として届きます。
連合は、性別も含めた上位の項目をいずれも「応募者の適性や能力と関係のないもの」と位置づけています。転勤や残業のように仕事の条件にかかわる話は、可否を聞く前に、求人票と面接で会社から先に伝えます。
条件を伝えたうえで「確かめておきたいことはありますか」と聞けば、すり合わせは候補者の側から始まります。
質問がばらつくのは、面接官一人ひとりの力量の問題ではありません。何を確かめる面接かを決めずに渡している、仕組みの問題です。質問表を1枚渡すだけで、面接官を責めずに直せます。
面接の質問は、求人票、応募、面接、内定、入社と続く候補者体験の真ん中にあります。求人票に書いた仕事内容と、面接で聞かれる中身がつながっていれば、候補者は会社が自分の何を見ているかを理解できます。
面接評価シートの項目を同じ5つで並べておけば、二次面接は一次の続きから始められます。
わたしたちが現場で見てきた限り、中途の候補者は面接のあとに「何を聞かれたか」を振り返り、会社が自分の経験をどう見たかを読み取ろうとします。経験を具体的に聞かれた面接は、見てもらえたという手応えになるのかもしれません。
候補者にとって面接官の質問は、会社が何を大事にしているかを知る手がかりの一つになります。
反対に、家族や出身地を聞かれた候補者は、仕事以外の何かで選ばれていると受け取るかもしれません。同じ調査では、家族に関することを「面接官が聞いてはいけない」と考える人が35.1%いました。
質問をそろえることは、評価をそろえることであり、会社の姿勢を候補者に見せることでもあります。
今日からできる3つ
- 次の面接の前に、質問を5つ書いて面接官に渡す
仕事の範囲・自分の判断・うまくいかなかった経験・自社との重なり・候補者からの質問の5つです。同じ質問をそろえると、候補者どうしを同じ物差しで比べられます。 - 面接で使う質問から、厚労省の配慮事項に当たるものを外す
出身地や家族、尊敬する人物など、場をほぐす定番の話題を点検します。悪気のない一言でも、候補者には選考の質問として届きます。 - 転勤や残業などの条件は、面接の前半で会社から伝える
「できますか」と聞かれると、候補者は「はい」以外を答えにくくなります。先に伝えてから質問を受けるほうが、本音のすり合わせになります。
よくある質問
Q. 中途採用の面接で、面接官は何問くらい質問を用意すればいいですか?
確かめたい経験に絞り、5問前後を目安にします。1問ごとに深掘りの一言を足すと答えが長くなるため、5問でも面接の時間は十分に埋まります。
Q. 面接官ごとに質問を変えてもいいですか?
一次と二次で確かめる経験を分けるのはかまいません。同じ段の面接では、全員に同じ質問を同じ順番で聞くと、候補者どうしを比べられます。
Q. 出身地や家族の話を、雑談として聞くのもよくないですか?
厚生労働省の「採用選考時に配慮すべき事項」には、本籍・出生地や家族に関することが含まれます。雑談でも面接の場では避け、場をほぐすときは当日の面接の流れを説明するなど、私的な事柄に触れない話題にします。
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出典
連合(日本労働組合総連合会)「就職差別に関する調査2026」2026年5月21日公表・調査2026年4月10〜15日・最近3年以内に採用試験(新卒・中途)を受けた15〜29歳 n=1,000(連合調べ) jtuc-rengo.or.jp
厚生労働省「公正な採用選考をめざして」採用選考時に配慮すべき事項 kouseisaiyou.mhlw.go.jp



