採用動画の効果、活用企業の人事65.8%が実感──差は”作った後”
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採用動画の効果、活用企業の人事65.8%が実感──差は”作った後”

Branding, 2026.07.24 By 中村 尚人

採用動画を使っている企業の人事500人に聞いたところ、「効果があった」は65.8%。悪くない数字に見えます。ただ同じ調査を裏側から読むと、27.4%——3割弱は、動画を作ったのに効果を実感できていない、とも読めます。

しかも1本あたりの予算は「10万〜30万円未満」が最多。作ること自体のハードルは、ずいぶん下がりました。同じくらいの費用をかけて、実感が割れているとしたら、差はどこで生まれているのでしょう。

2026年6月に公表されたばかりの調査を手がかりに、「効果が出る動画」と「作って終わった動画」を分けている一線を、一緒に考えてみたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
採用動画を活用している企業の人事のうち、動画に「効果があった」と答えた割合 65.8%
同じ調査で「あまり効果がなかった/全く効果がなかった」と答えた割合 27.4%
動画1本あたりの制作予算で最も多かった価格帯「10万〜30万円未満」の割合 25.0%
今後活用したい動画として最も多く挙がった「企業ブランディング動画」の割合 40.6%

出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月24〜25日実施・採用活動に動画を活用している企業の人事担当者500名

採用動画の効果、実感しているのは何割か

採用動画とは、会社の事業内容や働く人の様子、代表の考えなどを映像で伝え、求職者に自社を知ってもらうための動画のことです。求人票や採用サイトでは伝わりにくい「雰囲気」や「人」を届ける手段として、中途採用でも使われる場面が増えてきました。

では、実際に使っている企業はどう感じているのか。採用動画の制作を手がけるムビサク(アルファノート株式会社)が2026年6月に実施した調査では、動画を活用している人事担当者500名のうち、65.8%が「効果があった」と回答しています。内訳は「期待以上の効果があった」17.8%、「ある程度の効果があった」48.0%。多くは”ある程度”のほうにいる、という温度感です。

KEY METRIC / 採用動画に効果を感じた人事の割合
65.8%
「効果があった」は65.8%。一方で「あまり効果がなかった」21.6%と「全く効果がなかった」5.8%を合わせた27.4%は、効果を実感できていません。「わからない」も6.8%あり、そもそも効果を判断できていない層が一定数いることもうかがえます。

出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月・n=500

わたしたちが気になったのは、この3割弱のほうです。次に見るように、制作予算の中心帯は各社そう大きく変わりません。似た費用をかけて作っているのに、効果の実感がここまで割れている。動画を作ったこと自体は、成果を約束してくれない——今日の出発点はここです。

予算は10万〜30万円未満が最多。その予算は、どこに使われているか

同じ調査で、1本あたりの制作予算を聞いた結果がこちらです。最も多いのは「10万〜30万円未満」で25.0%。かつて採用動画といえば数百万円の企画物、というイメージがありましたが、いまはかなり景色が変わっています。

KEY DATA / 採用動画1本あたりの制作予算
10万〜30万円未満(最多) 25.0%
30万〜50万円未満 19.4%
5万〜10万円未満 17.4%
5万円未満 13.6%

出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月・n=500/30万円未満の3つの価格帯を合わせると56.0%

30万円未満の3つの帯を合わせると56.0%。半数以上が、求人広告1〜2枠ぶんくらいの費用で動画を作っている計算になります。編集を外注しやすくなり、機材のハードルも下がったことを思えば、自然な変化だと思います。

ただ、この価格帯で実写を撮ろうとすると、撮影日の確保、出演する社員の段取り、当日の立ち会い、そして編集——費用も時間も、そのあたりで大半が埋まります。最初に削られやすいのは、たぶん撮る前の企画と構成のほうかもしれません。金額の話をしているうちに、「誰に何を伝えるか」を決める時間が、いつのまにか予定から消えている——そんな進み方に、心当たりはないでしょうか。

人事が次に撮りたいのは「企業ブランディング」──会社紹介より上位

興味深いのは、「今後活用したい動画タイプ」の結果です。定番であるはずの会社紹介・事業紹介を、企業ブランディング動画がわずかに上回りました。

IMPACT MAP / 今後活用したい動画タイプ(複数回答)
企業ブランディング動画40.6%
会社紹介・事業紹介動画39.8%
代表メッセージ動画31.6%

出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月・n=500

「何をしている会社か」より「どんな会社か」を伝えたい——人事の関心がそちらへ動いている、と読めます。事業内容や制度は求人票にも書けますが、空気や価値観は文字にしづらい。だからこそ動画に託したくなるのだと思います。ただ、ブランディング動画はいちばん”効果が測りにくい”種類の動画でもあります。ここに、先ほどの「わからない6.8%」がつながっているようにも見えます。

効果を分けているのは、たぶん「作った後」の3つ

効果を実感できない理由を、企画力や編集の巧拙に求めたくなります。でも実務の現場で見ていると、もう少し構造的な話に見えます。見積書に行が立つ工程——撮影、編集、ナレーション——は最後まで残り、行が立たない工程、つまり「誰に何を伝えるか」を決める時間だけが静かに削られていく。誰かが手を抜いたからではなく、見積書に載らないものは削っても金額が動かないから、というだけの話だと思います。

もうひとつは分担のかたちです。動画を作るのは制作会社、動画を置くのは求人媒体や採用サイト、応募を受けて面接するのは人事。3つが別々の担当に分かれていて、「作ったあと誰がどう使うか」で責任が切れてしまう。効果が出ないのは、担当者の力量というより、この分断のせいであることが少なくないと感じています。

1
誰の、どの迷いに効かせるかを1行で決める
「30代の営業経験者が、転職先として検討する段階で抱く”現場の年齢層が見えない”という不安」くらいまで絞ってみます。迷いが特定されていない動画は、誰の迷いも解かないまま終わりやすいためです。
2
候補者が実際に通る導線に置く
求人票の本文、スカウト文面、採用サイトの最初の画面。候補者は動画を探しに来るのではなく、求人を読んでいる途中で出会います。見られる場所になければ、出来の良し悪し以前の話になってしまいます。
3
見終わった直後の”次の1枚”を用意する
動画で興味が高まった瞬間が、いちばん詳しく読んでもらえるタイミングです。社員インタビューでも仕事の1日でも構いません。動画を締めくくりではなく入口として設計すると、効果は測りやすくもなります。
C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

採用動画のご相談をいただくとき、「どんな動画を作りましょうか」から入ると、たいてい話が広がりすぎてしまいます。逆に「候補者はこの動画を、どのページの、どの瞬間に見ますか」と聞くと、急に具体的になる。動画そのものより、候補者がたどる順番のほうが、成果を左右しているように感じています。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

御社の求人を開いた候補者は、動画を見るために来たわけではありません。仕事帰りの電車で求人票をいくつか眺めていて、その流れで再生ボタンを押すかどうかを決めています。音を出せない場所で、2分の動画を最後まで見てもらえる前提は、たぶん成り立ちません。

わたしたちが現場で聞くのは、「動画は雰囲気がよかったけれど、結局この会社で自分が何をするのかは分からなかった」という声です。動画で心が動いた候補者が、そのあと何を読めるのか。そこまで用意できている会社は、まだ多くないように見えます。

※統計ではなく、採用支援の現場で候補者から聞いてきた話にもとづく描写です。

今回の調査で「今後は企業ブランディング動画を」という声が最多だったのは、とても自然な流れだと思います。ただHRブランディングの観点から言えば、ブランドは1本の動画で立ち上がるものではなく、求人票の一文、スカウトの書き出し、採用サイトの見出し、そして動画が、同じことを言っているときに初めて伝わるものだと感じています。

逆に言えば、動画を作ろうとする過程は、自社の言葉を揃え直す絶好の機会でもあります。撮影の前に「うちは候補者に何を約束するのか」を書き出しておく。わたしたちCoachersも、求人広告の原稿づくりから入るときはいつも、そこから一緒に考えるようにしています。

ACTIONS / 今日からできる3つ
いまある動画のURLが、どこに貼られているか棚卸しする
求人票・スカウト文面・採用サイト・会社サイト。候補者が通る導線に無ければ、内容の議論をする前に機会そのものが生まれません。「置き忘れ」は意外と多い盲点です。
動画で解きたい「候補者の迷い」を1つだけ書き出す
今回の調査では次に撮りたい動画として企業ブランディングが40.6%と最多でしたが、抽象度が高いテーマほど、狙う迷いを1つに絞ったほうが伝わります。全部を伝える動画は、たいてい何も残りません。
見終わった候補者に読んでほしいページを1枚決める
動画は締めくくりではなく入口、と考え方を裏返してみます。次の1枚を決めておくと、「動画を見た人が何人そこへ進んだか」という形で効果も追えるようになります。
FAQ / よくある質問
Q. 採用動画は、どのくらいの予算から作れますか?
今回の調査では、1本あたりの制作予算は「10万〜30万円未満」が25.0%で最多でした。30万円未満の価格帯を合わせると56.0%で、半数以上がこの水準です。数百万円の企画物でなければ作れない、という時代ではなくなってきています。ただ実写の場合、この予算は撮影と編集でおおむね埋まります。金額の目安そのものより、その予算のうち「誰に何を伝えるか」を決める時間をどれだけ残せるかで見てみると、判断しやすいかもしれません。
Q. 採用動画の効果は、どうやって測ればいいですか?
応募数だけで測ろうとすると、動画単体の貢献はどうしても見えにくくなります。動画の次に見てほしいページを決めておき、そこへの遷移で見る、面接で動画の話題が出た回数を数える、といった測り方のほうが現実的です。今回の調査でも「効果がわからない」が6.8%あり、測る設計が後回しになりやすいことがうかがえます。
Q. 中途採用でも動画は効きますか?
在職中の候補者は、限られた時間で何社も見比べています。だからこそ「長く作り込む」より、1分前後で、その職種の現場が具体的に見えるほうが向いている場面が多いと感じています。新卒向けの会社紹介動画をそのまま流用すると、中途の候補者が知りたい「配属先の実際」が抜けがちなので、そこだけは分けて考えてみてください。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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