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採用動画の効果、活用企業の人事65.8%が実感──差は”作った後”
採用動画を使っている企業の人事500人に聞いたところ、「効果があった」は65.8%。悪くない数字に見えます。ただ同じ調査を裏側から読むと、27.4%——3割弱は、動画を作ったのに効果を実感できていない、とも読めます。
しかも1本あたりの予算は「10万〜30万円未満」が最多。作ること自体のハードルは、ずいぶん下がりました。同じくらいの費用をかけて、実感が割れているとしたら、差はどこで生まれているのでしょう。
2026年6月に公表されたばかりの調査を手がかりに、「効果が出る動画」と「作って終わった動画」を分けている一線を、一緒に考えてみたいと思います。
出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月24〜25日実施・採用活動に動画を活用している企業の人事担当者500名
採用動画の効果、実感しているのは何割か
採用動画とは、会社の事業内容や働く人の様子、代表の考えなどを映像で伝え、求職者に自社を知ってもらうための動画のことです。求人票や採用サイトでは伝わりにくい「雰囲気」や「人」を届ける手段として、中途採用でも使われる場面が増えてきました。
では、実際に使っている企業はどう感じているのか。採用動画の制作を手がけるムビサク(アルファノート株式会社)が2026年6月に実施した調査では、動画を活用している人事担当者500名のうち、65.8%が「効果があった」と回答しています。内訳は「期待以上の効果があった」17.8%、「ある程度の効果があった」48.0%。多くは”ある程度”のほうにいる、という温度感です。
出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月・n=500
わたしたちが気になったのは、この3割弱のほうです。次に見るように、制作予算の中心帯は各社そう大きく変わりません。似た費用をかけて作っているのに、効果の実感がここまで割れている。動画を作ったこと自体は、成果を約束してくれない——今日の出発点はここです。
予算は10万〜30万円未満が最多。その予算は、どこに使われているか
同じ調査で、1本あたりの制作予算を聞いた結果がこちらです。最も多いのは「10万〜30万円未満」で25.0%。かつて採用動画といえば数百万円の企画物、というイメージがありましたが、いまはかなり景色が変わっています。
出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月・n=500/30万円未満の3つの価格帯を合わせると56.0%
30万円未満の3つの帯を合わせると56.0%。半数以上が、求人広告1〜2枠ぶんくらいの費用で動画を作っている計算になります。編集を外注しやすくなり、機材のハードルも下がったことを思えば、自然な変化だと思います。
ただ、この価格帯で実写を撮ろうとすると、撮影日の確保、出演する社員の段取り、当日の立ち会い、そして編集——費用も時間も、そのあたりで大半が埋まります。最初に削られやすいのは、たぶん撮る前の企画と構成のほうかもしれません。金額の話をしているうちに、「誰に何を伝えるか」を決める時間が、いつのまにか予定から消えている——そんな進み方に、心当たりはないでしょうか。
人事が次に撮りたいのは「企業ブランディング」──会社紹介より上位
興味深いのは、「今後活用したい動画タイプ」の結果です。定番であるはずの会社紹介・事業紹介を、企業ブランディング動画がわずかに上回りました。
出典:ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査」2026年6月・n=500
「何をしている会社か」より「どんな会社か」を伝えたい——人事の関心がそちらへ動いている、と読めます。事業内容や制度は求人票にも書けますが、空気や価値観は文字にしづらい。だからこそ動画に託したくなるのだと思います。ただ、ブランディング動画はいちばん”効果が測りにくい”種類の動画でもあります。ここに、先ほどの「わからない6.8%」がつながっているようにも見えます。
効果を分けているのは、たぶん「作った後」の3つ
効果を実感できない理由を、企画力や編集の巧拙に求めたくなります。でも実務の現場で見ていると、もう少し構造的な話に見えます。見積書に行が立つ工程——撮影、編集、ナレーション——は最後まで残り、行が立たない工程、つまり「誰に何を伝えるか」を決める時間だけが静かに削られていく。誰かが手を抜いたからではなく、見積書に載らないものは削っても金額が動かないから、というだけの話だと思います。
もうひとつは分担のかたちです。動画を作るのは制作会社、動画を置くのは求人媒体や採用サイト、応募を受けて面接するのは人事。3つが別々の担当に分かれていて、「作ったあと誰がどう使うか」で責任が切れてしまう。効果が出ないのは、担当者の力量というより、この分断のせいであることが少なくないと感じています。
採用動画のご相談をいただくとき、「どんな動画を作りましょうか」から入ると、たいてい話が広がりすぎてしまいます。逆に「候補者はこの動画を、どのページの、どの瞬間に見ますか」と聞くと、急に具体的になる。動画そのものより、候補者がたどる順番のほうが、成果を左右しているように感じています。
御社の求人を開いた候補者は、動画を見るために来たわけではありません。仕事帰りの電車で求人票をいくつか眺めていて、その流れで再生ボタンを押すかどうかを決めています。音を出せない場所で、2分の動画を最後まで見てもらえる前提は、たぶん成り立ちません。
わたしたちが現場で聞くのは、「動画は雰囲気がよかったけれど、結局この会社で自分が何をするのかは分からなかった」という声です。動画で心が動いた候補者が、そのあと何を読めるのか。そこまで用意できている会社は、まだ多くないように見えます。
今回の調査で「今後は企業ブランディング動画を」という声が最多だったのは、とても自然な流れだと思います。ただHRブランディングの観点から言えば、ブランドは1本の動画で立ち上がるものではなく、求人票の一文、スカウトの書き出し、採用サイトの見出し、そして動画が、同じことを言っているときに初めて伝わるものだと感じています。
逆に言えば、動画を作ろうとする過程は、自社の言葉を揃え直す絶好の機会でもあります。撮影の前に「うちは候補者に何を約束するのか」を書き出しておく。わたしたちCoachersも、求人広告の原稿づくりから入るときはいつも、そこから一緒に考えるようにしています。
- ムビサク(アルファノート株式会社)「採用動画の活用に関する実態調査レポート」(2026年6月24〜25日実施・n=500) https://mvsk.jp/column/research-report-20260625-recruiting-video
- HRzine「採用動画に効果があったという人事担当者は65.8%、予算は10万~30万円が最多—アルファノート調べ」 https://hrzine.jp/news/detail/7987
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