「うちもSNSをやったほうがいいのだろうか」。そう考えたとき、まず頭に浮かぶのはフォロワー数ではないでしょうか。何万人も集めている会社の事例ばかりが目に入るので、始める前から無理だと感じてしまう。
ところが、東証プライム上場企業の採用専用Instagramを1社ずつ数えた調査では、フォロワー数の中央値は373人でした。半分以上は500人にも届いていません。SNS採用を「集める場所」として見ていた前提のほうが、少しずれているのかもしれません。
20.8%
373人
57.9%
3.13%
出典:アンドブースター株式会社「採用Instagram活用実態調査 2026」2026年8月26日公表。東証プライム市場上場の全1,551社を対象にした全数調査で、新卒採用でのInstagram活用を調べたもの。同社は「検索で到達できなかったアカウントは捕捉できていない可能性があり、確認できた範囲の数値」と注記しています。
SNS採用をしている会社はどれくらいあるのか
東証プライム市場に上場する全1,551社を1社ずつ確認した調査では、採用専用のInstagramアカウントを持っていた企業は323社、全体の20.8%でした。アンドブースター株式会社が2026年8月に実施した全数調査です。
ここでいう「採用専用」は、企業広報やブランド用のアカウントとは別に、採用のためだけに独立して運用しているアカウントを指しています。会社の公式アカウントで採用情報も流している、という兼用のケースは含まれていません。
アンドブースター「採用Instagram活用実態調査 2026」東証プライム上場全1,551社
採用広報が「求人媒体に出す」から「自社で発信する」へ広がってきたとはいえ、専用のアカウントまで立てている会社は、上場企業でもまだ少数派です。中小企業で「うちは出遅れている」と感じる必要は、たぶんそこまでありません。
フォロワー中央値373人をどう読むか
採用専用Instagramのフォロワー数は、中央値で373人でした。57.9%のアカウントは500人に届いていません。それでいて、エンゲージメント率は3.13%を保っています。
数万人のフォロワーを抱える企業広報のアカウントと比べると、桁が2つ違います。同じSNSなのに、なぜここまで差が出るのでしょうか。
担当者の投稿が下手だから、ではないように思います。採用専用アカウントは、その会社への就職を考えている人しかフォローしないという構造を持っているからです。届く相手の母数が、そもそも違います。
これは、SNS採用がうまくいっていない会社の責任ではなく、役割の置き方の話だと思っています。母集団を広げる仕事と、興味を持った人の気持ちを固める仕事は、別物です。
前者を求人媒体や求人票が担い、後者を採用サイトやSNSが担う。そう分けて考えると、フォロワー数が伸びないことは、ほとんど問題ではなくなります。
中途採用でSNSをどこに置くか
中途採用でSNSを使うなら、応募を集める入口ではなく、応募を迷っている人が会社を確かめる場所として置くほうが、実態に合っているように思います。前の章の構造が、そのまま中途でも当てはまるためです。
なお、この調査が見ているのは新卒採用でのInstagram活用です。中途の求職者にそのまま当てはめられる数字ではない点は、先にお断りしておきます。
では、どのSNSを選ぶか。上場企業の採用サイトに掲載されていたSNS導線のうち、採用専用と判別できたアカウント数は次のようになっています。
アンドブースター「採用Instagram活用実態調査 2026」/採用サイトのSNS導線から判別できた件数
Instagramが149件で、2番手のXの2.7倍近くあります。ただ、これは新卒採用の話であり、なにより「どこで発信するか」より先に決まっていることがあります。
確かめに来た人が最初に開くのは、たいてい採用サイトです。そこが数年前のまま止まっていると、SNSをどれだけ更新しても、印象は上書きされにくくなります。
順番としては、求人票と採用サイトを整えたうえで、そこに人を戻せる導線としてSNSを1つ置く。全部を同時に始めなくても、それで十分に回り始めるように感じています。
SNS採用の相談をいただくとき、話がフォロワー数から始まることがよくあります。ただ今回の数字を見ると、上場企業ですら中央値373人でした。数を目標にした瞬間、投稿が採用と関係のない話に寄っていってしまうのは、たぶんこのあたりに理由があります。
御社の求人票を読んで、少し気になった一人の候補者を思い浮かべてみてください。その足で会社名を検索して、採用サイトを開いて、アカウントがあれば数件だけスクロールする。おそらく1〜2分の出来事です。
わたしたちが現場でよく聞くのは、「働いている人の顔が見えて安心した」という声のほうです。フォロワー数を見て応募を決めた、という話は、正直あまり聞いたことがありません。候補者が見ているのは規模ではなく、ここにいる人たちの様子なのかもしれません。
わたしたちCoachersも、採用サイトや採用動画をつくるとき、「この会社で働く人がどう見えるか」に時間をかけます。HRブランディングという言い方をしていますが、やっているのは会社の実像を持ち帰れる形にすることに近いと思っています。
SNSはその一部で、全部ではありません。手前の求人票と採用サイトが整っていれば、SNSは無理なく続けられる規模で十分に働いてくれます。
- アンドブースター株式会社「採用Instagram活用実態調査 2026」2026年8月26日公表(HRog掲載) https://hrog.net/news/136581/



