採用広報の”きれいごと”を求職者34.2%が敬遠──具体と正直で伝える書き方
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採用広報の”きれいごと”を求職者34.2%が敬遠──具体と正直で伝える書き方

Branding, 2026.07.13 By 中村 尚人

 

「アットホームで風通しがよく、若手も活躍中」——自社の求人ページや採用サイトにある、こんな一文。候補者はこれをどう読んでいると思いますか。

もしかすると、読んだ瞬間に「たぶん、いいことしか書いていない」と、静かにタブを閉じられているかもしれません。2026年1月の求職者調査では、応募や内定承諾を見送った理由に「定型的できれいごとのように感じた」が34.2%も挙がっていました。

候補者が生成AIやクチコミで裏を取る時代、飾った言葉はむしろ不信を生むのかもしれません。では、何をどう書けば「信じて応募したい」と思ってもらえるのか。わたしたちCoachersも日々悩みながら、一緒に考えてみたいと思います。

2026年1月の求職者調査では、応募や内定承諾を見送った理由に「定型的できれいごとのよう」34.2%「抽象的で魅力が伝わりづらい」29.6%が並んだ。
求職者の72.8%はSNS・クチコミで裏を取り、7割超が生成AIにも下調べを頼む。飾った言葉ほど「実態がわからない」(46.1%)と見なされやすい。
抽象語を具体的な”場面”に翻訳し、大変さも正直に添えるほど、候補者は安心して次の一歩を踏み出しやすくなる。

なぜ”きれいごと”は逆効果になるのか

株式会社ファングリーが2026年1月に実施した「採用広報に関する意識調査」(2025年1月以降に就職・転職活動をした全国の求職者412名が対象)では、応募や内定承諾を見送った理由が、次のように並びました。数字を見ると、候補者は”内容の薄さ”を意外なほど正確に見抜いているのが分かります。

IMPACT MAP
応募・内定承諾を見送った理由(複数回答/n=412)
実態がわからない46.1%
内容が定型的で、きれいごとのように感じた34.2%
抽象的な言葉が多く、魅力が伝わりづらい29.6%

1位の「実態がわからない」(46.1%)は、裏を返せば具体的な情報が足りていないということ。そして2位・3位の「定型的できれいごと」(34.2%)「抽象的で魅力が伝わりづらい」(29.6%)は、言葉そのものの中身の薄さを指しています。つまり、応募を止めているのは”魅力がないこと”ではなく、”魅力が伝わっていないこと”かもしれない、というわけです。

背景には、候補者の情報行動の変化があります。同じ調査では、72.8%がSNS・クチコミサイトで裏取りをし、7割超が生成AIの回答も参考にしていました。整った言葉を並べるほど、候補者は「他の情報源で本当かどうか確かめよう」と身構える。飾りは、いまや”照合される前提”の時代に入っています。

抽象的な言葉が多く、魅力が伝わりづらい——応募や内定承諾を見送った理由の、第3位(29.6%)。
— 「採用広報に関する意識調査2026」株式会社ファングリー調べ

同じ職場でも、書き方でここまで変わる

では「具体的に、正直に」とは、実際どういう文章なのでしょうか。同じ職場を紹介する2つの求人文を並べてみます。左は多くの企業で見かける定型文、右はそれを”場面”に翻訳し、大変さも一言添えたものです。

COMPARISON
BEFORE ── 定型的な言葉
「アットホームで風通しの良い職場。若手も活躍中で、やりがいのある仕事です」
どの会社にも当てはまり、何も残らない。読み手は「実態は結局わからない」と受け取ってしまう。
AFTER ── 具体と正直
「少人数なので、入社3か月で自分の担当顧客を持てます。裁量が大きい分、最初は判断に迷う場面も。先輩が週1の1on1で伴走します」
場面が目に浮かび、大変さも隠さない。だからこそ「ここでなら働けそう」と信じてもらえる。

ポイントは、右側が特別に”良い会社”を書いているわけではない、という点です。事実は同じ。違うのは、抽象語を具体的な場面に置き換え、都合の悪いことも一文だけ正直に添えたこと。この小さな差が、「照合しても崩れない情報」として候補者に届きます。ちなみに同じ調査では、企業に発信してほしい情報として「社風」を挙げた人が40.3%。社風こそ、抽象語で終わらせず”場面”で語りたいテーマです。

“きれいごと”を具体に翻訳する4ステップ

とはいえ、いきなり全文を書き直すのは大変です。まずは1つの求人票、1ページからで十分。次の順番で見直すと、抽象的な言葉が少しずつ”場面”に変わっていきます。

STAGE FLOW
STAGE 1現場の”当たり前”を棚卸しする
実際の一日の流れ、任される範囲、支援体制などを現場社員に聞き、まず事実を集める。人事の想像ではなく、一次情報から始めるのがコツ。
STAGE 2抽象語を「場面」に翻訳する
「風通しがいい」なら、実際にそう感じた場面(例:新人の提案が朝会で採用された)に置き換える。読み手が映像を思い描ける粒度まで下ろす。
STAGE 3いいことだけにしない(正直に補う)
向き不向きや、最初につまずきやすい点も一文だけ添える。入社後ギャップの予防になり、かえって「信頼できる会社」という印象につながる。
STAGE 4候補者の”知りたい順”に並べ替える
仕事内容 → 働き方 → 一緒に働く人 → 条件、の順に情報を配置し直す。候補者が最初に確かめたいことから答える構成にする。

4つとも、特別な予算や制作会社がなくても、今日から手を動かせることばかりです。大事なのは完璧に書き切ることより、「これは自社にしか書けない一文か?」と一度立ち止まる習慣かもしれません。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

生成AIが整った文章をいくらでも量産できる時代になって、逆説的に価値が上がったのは「AIには書けない一文」だと感じています。具体的な場面、少しの正直さ、その会社ならではの手ざわり——候補者が”照合”を前提に読むようになったからこそ、飾りのない情報が信頼の通貨になっていく気がします。

この他にも、例えば採用サイトに関する統計を眺めていると、「内容が薄いと志望度が下がる」といった内容もよく目にします。定型文の薄さを見破られたり、実際はそんなことなくても薄くなってしまうのはNG。

これはまさにHRブランディングの入口の話でもあります。求人広告の原稿を一行見直すだけでも、「誰にでも当てはまる言葉」を「自社にしか書けない場面」に変えられる。その積み重ねが、他社との違いをつくっていくのだと思います。

ACTIONS
抽象語を1つ、”場面”に書き換える
求人票の「風通しがいい」「アットホーム」などを、実際にそう感じた具体的な場面の一文に置き換えてみる。
“大変さ”を一行だけ正直に足す
向き不向きや最初の壁を一文添えるだけで、入社後ギャップの予防と、読み手からの信頼を同時に得やすくなる。
社員に「入社前に知りたかったこと」を聞く
一次情報を集め、候補者の”知りたい順”(仕事内容→働き方→人→条件)に情報を並べ替える材料にする。

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