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中途採用の早期離職、1人640万円──求人情報の出し方で防ぐ
時間をかけて口説き、やっと入ってくれた中途の中核人材が、半年で「すみません」と辞めていく。採用担当者にとって、これほど骨の折れる出来事はないかもしれません。
しかも痛いのは気持ちだけではありません。エン・ジャパンの試算では、その損失は1人あたり最大640万円。そして早期離職者の38%が理由に挙げたのは、スキル不足でも相性でもなく「入社前に聞いていた情報と違った」でした。
なぜ”情報のズレ”がこれほど高くつくのか。そして、求人や面接の「見せ方」を少し変えるだけで防げるとしたら——今日は、辞めない人に選ばれる情報設計を一緒に考えてみたいと思います。
出典:エン・ジャパン「『早期離職』に関する実態調査」(『エン転職』ユーザー2,502名・2025年7〜8月実施)。損失額は同社試算。
早期離職の「本当のコスト」は、思っているより大きい
エン・ジャパンが2025年夏に『エン転職』ユーザー2,502名に行った調査では、入社から半年以内の早期離職を経験した人が31%にのぼりました。3人に1人が、一度は「入って半年で辞める」を経験している計算です。年代別でも20代32%・30代34%・40代以上30%と、若手に限った話ではありません。
同社は、年収600万円ほどの人材が6カ月で早期離職した場合の損失を試算しています。その内訳を見ると、痛みの正体が見えてきます。
出典:エン・ジャパン「『早期離職』に関する実態調査」(2025年)・同社試算
大きいのは、採用費用より「在籍中に支払った人件費(360万円)」です。つまり損失の多くは、辞めた瞬間に消えるお金ではなく、合わない人と過ごした半年間そのもの。求人広告費だけを見て「採用単価が上がった」と嘆くより、”半年で辞める確率”を下げるほうが、はるかに効く投資かもしれません。しかも賃上げと採用コストの上昇で、この金額は今はさらに膨らんでいる可能性があります(コスト構造そのものは、これからも大きくは変わらないはずです)。
辞める理由の1位は「聞いていた情報と、違った」
では、なぜ辞めるのか。早期離職の理由の1位は「入社前に聞いていた情報と違ったから」で38%。2位は「ハラスメントに遭ったから」で30%でした。ハラスメントのように職場環境そのものに根がある問題もあり、情報の見せ方だけですべてを防げるわけではありません。ただ、最多の理由が”情報のズレ”だという事実は、採用段階に打ち手が残されていることを示しています。
象徴的なのが、次の数字です。
出典:エン・ジャパン「『早期離職』に関する実態調査」(2025年・n=2,502)
ここには、採用の見せ方をめぐる逆説があります。「良いことだけ」を並べた求人は、短期的には応募を増やすかもしれません。けれど”聞いていた話と違う”という失望の種を、同時にまいてしまう。あえて大変な面も伝える——この一見ブレーキに見える情報開示が、実は640万円の損失を防ぐアクセルになる、というのが今回のデータの読みどころだと感じています。
“リアル”を魅力に変える、求人設計の4ステップ
早期離職への打ち手は、ひとつではありません。入社後のオンボーディングを手厚くする、受け入れる現場を育てる、配属や評価を見直す——どれも効きます。ただ、今回のように辞める理由の1位が「聞いていた情報と違った」なら、いちばん手前で効くのは入口の一手。それが、採用の世界で「RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)」と呼ばれる、良い面も大変な面も含めた”ありのままの仕事像”を先に見せる考え方です。難しく構える必要はありません。今の求人や面接に、次の4ステップを足すだけでも十分に効きます。
「早期離職を防ぐ」と聞くと、入社後のフォローや制度の話に向かいがちです。もちろんそれも大切ですが、今回のデータが指し示すのは、もっと手前——求人や面接という”入口”で、期待値をどうすり合わせるか、という論点でした。合わない人を惹きつけてしまう求人は、応募数という短期の成果と引き換えに、640万円の損失リスクを未来に積み立てているのかもしれません。
もう一つ、見落としやすい論点があります。早期離職が”宙に浮きやすい”のは、責任の線の引き方にも一因がある気がします。採用のゴールが「入社数」に置かれていると、入社した瞬間に人事の役割は一区切り。あとは現場に委ねられ、うまくいかなくても人事は「採ったのに」、現場は「採ってもらったのに」と、どちらの数字でもなくなる。ちなみに欧米では、採用の主役は配属先の管理職(hiring manager)で、人事は伴走役、という違いがよく語られます。裏を返せば、求人や面接の段階から現場を少し引き込み、”最初の半年”を人事と現場の共同ゴールにするだけで、埋められる隙間があるのかもしれません。
御社の求人を開いた候補者は、実はもう身構えています。「どうせ良いことしか書いていないだろう」と。だからこそ、大変な面が1つでも正直に書いてある求人に出会うと、この会社は信用できそうだと、逆に前のめりになります。
わたしたちが採用支援の現場で候補者と話していても、彼らが本当に知りたいのは「入社後、自分がどう働き、何につまずくのか」という具体像です。そこが想像できないまま入社を決めた人ほど、半年後に「思っていたのと違った」とつぶやくのを、何度も見てきました。
求人原稿や採用サイトの言葉を、「盛る」から「解像度を上げる」へ。HRブランディングとは、良く見せる技術ではなく、”らしさ”を正確に伝えて合う人とつながる営みだと、わたしたちは考えています。大変な面まで含めて選んでもらえた人は、入社後の景色に驚きません。
わたしたちCoachers自身も、日々”どこまで正直に、でも魅力的に伝えるか”を悩みながら手を動かしています。だからこそ、一緒に考えていけたらと思っています。
- エン・ジャパン株式会社「『早期離職』に関する実態調査ー『エン転職』ユーザーアンケートー」(2025年) https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/42845.html
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