リファレンスチェックの依頼は通った。推薦者との電話も30分もらえた。それなのに、聞けたのは「真面目な方でしたよ」の一言だけだった。
原因の多くは推薦者ではなく、質問の側にあります。「どんな方でしたか」と広く聞けば、答えも広く丸くなります。しかも厚生労働省が採用選考で配慮を求める14事項のうち、家族や思想にかかわる話題は、雑談のつもりの一問に紛れ込みやすいものです。
この記事では、推薦者に送る質問票8問の型と、面接メモから質問を書き換える手順、聞かないと決めておく項目を整理します。
リファレンスチェックでは、何を聞けばよいのでしょうか
リファレンスチェックの質問は、面接で確かめきれなかった「仕事ぶり」に絞るのが基本です。
リファレンスチェックとは、候補者本人の同意を得たうえで、前職の上司や同僚に一緒に働いたときの様子を聞く手続きです。書類と面接では本人の言葉しか聞けないため、それを第三者の目で補う役割があります。
だからこそ、質問は面接の続きとして作ります。「どんな人でしたか」から入ると、推薦者は失礼のない言葉を選び、評価は無難な一般論に寄ります。
聞くべきなのは、面接メモに「本人はこう言っていた、でも確かめられていない」と残った箇所です。そこに具体的な場面を添えて聞くと、推薦者も記憶をたどって答えやすくなります。
推薦者に聞いてはいけないことは、何でしょうか
推薦者への質問でも、厚生労働省が「採用選考時に配慮すべき事項」に挙げる、本人に責任のない事項と思想・信条にかかわる事項は聞きません。
14事項は、本人に責任のない事項(本籍・家族・住宅・生活環境)、本来自由であるべき事項(宗教・支持政党・思想・尊敬する人物・愛読書など)、採用選考の方法(身元調査の実施など)の3つに分かれています。
このうち質問の話題として避けるのは、前の2つにあたる11事項です。3つ目は選考のやり方の話で、本人の同意を得ずに身辺を調べることなどを指します。リファレンスチェックは同意を得て、仕事ぶりに限って聞く点で線を引きます。
面接では気をつけていても、推薦者との会話では気がゆるみがちです。とくに次のような一問は、雑談のつもりで口に出やすいので、質問票から外しておきます。
- ご家族の状況や、家庭の事情で休むことがあったか
- どのあたりに住んでいて、どんな暮らしぶりか
- 支持している政党や、信仰している宗教
- 職場でどんな本を読んでいたか、尊敬している人は誰か
- 労働組合での活動歴
もう1つの注意は、同意の取り方です。前の勤め先が持つ人事の記録を外に出すことは、個人情報保護法のもとでは原則として本人の同意が前提になります。
候補者には「誰に・何を・何のために聞くか」を先に伝え、同意を書面かメールで残しておきます。聞く範囲を仕事ぶりに絞っておけば、この説明も短く済みます。
リファレンスチェックの質問票は、どう組めばよいのでしょうか
リファレンスチェックの質問票は、関係の確認・仕事の進め方・強みと伸びしろ・受け入れと再会の意向、の4つの枠に2問ずつで組むと過不足が出にくくなります。
最初の2問で、推薦者が候補者をどの距離から見ていたかを確かめます。直属の上司と、隣の部署の同僚とでは、同じ「優秀でした」でも重みが違うためです。
真ん中の4問は、面接で見た評価軸と同じ言葉で聞きます。面接で「周りを巻き込む力」を見たなら、推薦者にも同じ力が出た場面を聞く。軸がそろうと、面接官の評価と突き合わせられます。
最後の2問は、受け入れ方のヒントと推薦者の本音を聞く問いです。「もう一度一緒に働きたいか」への答えの速さや言葉選びは、それまでの答えより多くを語ることがあります。
【関係】①〈候補者〉さんとは、どんな立場で、いつからいつまで一緒に働きましたか。②一緒に担当した仕事を1つ教えてください。
【進め方】③〈面接で本人が語った場面〉のとき、〈候補者〉さんが最初にしたことは何でしたか。④予定どおりに進まなかったとき、どう動いていましたか。
【強みと伸びしろ】⑤周りが〈候補者〉さんを頼りにしていたのは、どんな場面でしたか。⑥もう一段伸びるとしたら、どこだと思いますか。
【受け入れと再会】⑦新しい職場で力を出すために、上司が気をつけるとよいことは何ですか。⑧機会があれば、また一緒に働きたいと思いますか。その理由も教えてください。
書き換えの記入例(架空):面接メモ「前職で5名のチームを立ち上げから任された」→ 質問③を「5名のチームを任されたとき、〈候補者〉さんが最初の1か月で決めたことは何でしたか」に変える。
リファレンスチェックは、合否の最後に置く「身辺の確認」と受け取られがちです。けれど中身は、面接で使った評価軸を、別の人の記憶で答え合わせする作業です。構造化面接の延長線上にある、と考えると質問の作り方が定まります。
また、入社後の受け入れにも使えます。質問⑦の答えは、配属先の上司に渡す引き継ぎメモの一行目になります。
前の上司に連絡がいくと聞いた候補者は、何を聞かれるのか分からないことに不安を覚えるかもしれません。質問票を先に本人にも見せておけば、「疑われている」ではなく「きちんと見てもらえる」と受け取る人もいるはずです。
聞く範囲を仕事ぶりに絞り、それを先に開示する。その2つがそろうと、リファレンスチェックは選考の最後の関門から、会社の誠実さを伝える接点に変わります。
今日からできる3つ
- 面接メモに「未確認」の印を付ける
本人の言葉だけで裏づけのない箇所に印を付け、それを質問③〜⑥に書き換えます。印のない質問は、推薦者の時間を使うだけの一般論になりがちです。 - 14事項に触れる質問を質問票から消す
家族・住まい・思想・宗教・愛読書に触れる問いがないか、送る前に一度読み返します。口頭で聞く場合も、質問票にない問いは足さないと決めておくと防げます。 - 質問票を候補者にも先に見せる
同意をもらうときに、推薦者へ送る質問票を添えます。聞く範囲が見えると、候補者も推薦者を選びやすくなり、依頼も切り出しやすくなるはずです。
よくある質問
Q. リファレンスチェックでは何を質問すればよいですか?
面接で確かめきれなかった仕事ぶりに絞ります。関係の確認・仕事の進め方・強みと伸びしろ・受け入れと再会の意向、の4つの枠に2問ずつ置くと、過不足が出にくくなります。
Q. リファレンスチェックで聞いてはいけないことはありますか?
厚生労働省が採用選考で配慮を求める14事項のうち、本人に責任のない事項と思想・信条にかかわる事項(本籍・家族・住宅・生活環境・宗教・支持政党・思想・尊敬する人物・愛読書・労働組合の活動など)は、推薦者への質問でも聞きません。
Q. 候補者の同意は必要ですか?
前の勤め先が持つ人事の情報を外に出すことは、個人情報保護法のもとでは原則として本人の同意が前提です。誰に・何を・何のために聞くかを伝え、同意を書面かメールで残します。
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出典
厚生労働省「公正な採用選考をめざして──採用選考時に配慮すべき事項」 mhlw.go.jp
個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」第三者提供の制限の原則 ppc.go.jp



