企業がAIを使って選考することを、若い応募者の多くがまだ決めかねています。賛成でも反対でもなく、「どちらともいえない」が最多でした。
連合が2026年4月に15〜29歳の1,000人へ聞いた調査では、その割合は43.5%。理由には「どこまでAIに頼った面接を行うのか不明」という声もありました。
この記事では、採用でAIを使うときのリスクを3つに分け、応募者の判断材料になる「AIの使い方の説明」を、選考案内に足す説明文の型と記入例で置きます。
AI採用のリスクとは?3つに分けて考える
AI採用のリスクとは、採用の作業や判断にAIを使うことで起きうる困りごとです。大きく「判断の偏り」「個人情報の扱い」「応募者の不信」の3つに分けられます。
1つ目は判断の偏りです。AIは、学んだデータや指示の書き方の影響を受けます。過去の採用に偏りがあれば、それを引き継いだまま人を絞り込むおそれがあります。
2つ目は個人情報の扱いです。個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、生成AIに個人情報を入れる場合は、利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。
同じ注意喚起では、本人の同意を得ずに入力した個人データが回答の出力以外に使われる場合、法律違反になる可能性があるとしています。そのため、入力したデータを機械学習に使わないかを確かめるよう求めています。
3つ目は応募者の不信です。前の2つは社内で防ぐリスクですが、これは応募者の受け止め方で決まります。どこでAIを使っているかが見えないと、応募者は判断のしようがありません。次の節で数字を見ます。
応募者はAIを使った選考をどう見ているか
企業がAIを使って選考することについて、15〜29歳の43.5%が「どちらともいえない」と答えています。連合が2026年4月、最近3年以内に採用試験を受けた1,000人に聞いた調査です。

よい印象とよくない印象は、ほぼ同じ割合で並びました。
「よい印象」は29.4%、「よくない印象」は27.1%です。AIを使った選考が公平な評価につながるかも、「つながると思う」39.5%、「つながらないと思う」20.0%に対し、「どちらともいえない」が40.5%で最も多くなりました。
「AI面接を受けたことがある」人は20.6%でした。経験のない人が多いぶん、判断の材料が少ないとも読めます。
決めかねている人の自由回答からの抜粋には、「どこまでAIに頼った面接を行うのか不明」「どこまでAIが介入しているかによる」「AIは使うか使わないかではなく、どう使うかが問題」といった声があります。
少なくとも一部の応募者は、AIを使うかどうかより、どこで・どこまで使うのかを気にしていると読めます。
応募者にAIの使い方をどう伝えるか
応募者にAIの使い方を伝えるときは、「どの工程で使うか」「合否は誰が決めるか」「応募書類をどう扱うか」の3点を、選考案内の1段落にまとめます。
この3点は、1つ目の節のリスクにそのまま対応しています。合否を人が決めると書けば判断の偏りへの答えになり、書類の扱いを書けば個人情報への答えになります。
裏返すと、社内で決まっていないことは書けません。書こうとして手が止まる箇所が、まだ線を引けていない場所です。社内の使い方メモの作り方は採用のAI活用、ツールより先に決める3つにまとめています。
置き場所は、面接日程の案内や一次選考の連絡など、AIを使う工程の前に届く連絡が向いています。求人票に書くより、その場で読まれやすいからです。
①当社は〈選考の工程〉でAIを使っています。②AIが行うのは〈作業の中身〉です。③合否は〈誰が・何を見て〉決めます。④応募書類は〈扱い方〉。⑤ご不明な点は〈問い合わせ先〉までお寄せください。
記入例(架空の文面):当社は一次選考の日程調整と、面接メモの要約にAIを使っています。書類と面接の合否は、応募書類と面接の結果をもとに、配属先の課長と人事の2名が決めます。応募書類は、AIの学習に使われない設定のツールでのみ扱います。ご不明な点は採用担当までお寄せください。
AI採用のリスクというと、ツールの精度や法律の話に目が向きがちです。ただ今回の調査で最も多かったのは、反対ではなく「決めかねている」人でした。
組織心理学には「手続き的公正」という考え方があります。結果だけでなく、決め方に納得できるかでも受け止めが変わる、という考え方です。AIの使い方の説明は、この決め方を見せる役目を持ちます。
この説明文は、選考案内の一段にすぎません。求人票で興味を持ち、応募し、面接で人と話し、内定を受けるまでの流れの中で、「この会社は自分を見てくれるか」を確かめる接点の一つです。
案内に「人が決めます」と書き、面接で実際に人が向き合って、はじめて効きます。
面接日程の案内を受け取った一人の候補者を考えます。先の調査で決めかねた人の中には、「どこまでAIに頼った面接を行うのか不明」と答えた人もいました。
何も書かれていなければ、その候補者は分からない部分を自分で想像するしかありません。「合否は人が決めます」の一文があるだけで、面接に臨む気持ちは変わるのではないでしょうか。
AIを使うこと自体を隠す必要はありません。使っている場所と、人が見る場所を分けて伝える。それがいちばん小さく始められるリスク対策です。
今日からできる3つ
- 採用でAIに触れている工程を、1枚に書き出す
求人票の下書き、日程調整、面接メモの要約など、担当者が個人で使っている作業も含めて並べます。説明文は、使っている場所が分からないと書けないからです。 - 応募者の情報を入れている生成AIツールの学習設定を確かめる
入力したデータが機械学習に使われない設定かを、ツールの設定画面や規約で確認します。個人情報保護委員会の注意喚起が、まさにこの確認を求めています。 - 次に送る選考案内に、AIの説明を1段落足す
上の例の型を埋めて、次の面接日程の案内から入れます。43.5%の決めかねている層に、判断の材料を渡す一番早い方法です。
よくある質問
Q. AI採用のリスクには何がある?
大きく「判断の偏り」「個人情報の扱い」「応募者の不信」の3つです。前の2つは社内のルールで防ぎ、3つ目はAIの使い方を応募者に説明することで小さくできます。
Q. 応募書類を生成AIに入力してもいい?
個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、利用目的の範囲内かを十分に確認すること、入力したデータが機械学習に使われないかを確かめることを求めています。入力する前に、ツールの設定と規約を確認してください。
Q. AIを選考に使っていることは応募者に伝えるべき?
伝えることをおすすめします。2026年の調査では、AIを使った選考に15〜29歳の43.5%が「どちらともいえない」と回答しました。使う工程と、合否を誰が決めるかを書くと判断の材料になります。
あわせて読みたい

採用のAI活用、ツールより先に決める3つ──体制がそろう企業は日本で9.7%

AI面接のデメリット1位は「会社の雰囲気が分からない」30.0%──経験者90名調査

構造化面接とは──面接官によって評価が割れる会社が、最初に決める2つ
出典
日本労働組合総連合会(連合)「就職差別に関する調査2026」2026年5月21日公表・調査2026年4月10〜15日・最近3年以内に採用試験を受けた全国の15〜29歳の男女 n=1,000(連合調べ) jtuc-rengo.or.jp
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」2023年6月2日 ppc.go.jp



