転職者の68.8%が「転勤あり」を敬遠──求職者目線の考え方
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転職者の68.8%が「転勤あり」を敬遠──求職者目線の考え方

Branding, 2026.07.03 By 中村 尚人

求人票のいちばん下、待遇欄の隅に書かれた「転勤の可能性あり」。この一行を、候補者はわたしたちが思う以上によく読んでいる——そんな話をしてみたいと思います。

マイナビの最新調査では、転職希望者の68.8%が「転勤のある会社では働きたくない」と回答し、前年より3.5ポイント増えていました。募集要項では小さな一行でも、候補者にとっては応募するかどうかの分岐点になっているのかもしれません。

とはいえ、企業側の3社に2社は今も転勤の可能性を残しています。「転勤あり」を隠すのでも、慌てて全廃するのでもなく、どう見せれば良い候補者に選ばれ続けられるか。今日はそのあたりを一緒に考えてみます。

転職希望者の68.8%が「転勤のある会社では働きたくない」と回答し、前年より3.5ポイント増えた(マイナビ2026年調査)。
就業先を決めるとき転勤の有無を考慮する人は77.3%(女性は9割超)。求人票の一行が応募の分岐点になり得る。
転勤を受け入れる条件は「基本給が上がる」47.4%など。隠すより、範囲・頻度・支援を具体的に見せるほうが選ばれやすい。

「転勤あり」を避けたい人が、7割に近づいている

まず、いちばん大きな数字から見てみます。マイナビキャリアリサーチLabが2026年2月に転職希望の正社員に聞いたところ、68.8%が「転勤のある会社では働きたくない」と答えました(「働きたくない」27.8%+「どちらかと言えば働きたくない」41.0%)。前年より3.5ポイント増えていて、少しずつですが「転勤を避けたい」という気持ちが強まっている様子がうかがえます。

KEY METRIC
68.8%
転勤あり回避
転職希望者の68.8%が「転勤あり」を避けたい
前年比+3.5ポイント。さらに、就業先を決めるときに転勤の有無を「考慮する」と答えた人は77.3%にのぼり、女性は9割を超えました。転勤は”あってもなくても同じ”ではなく、多くの候補者にとって会社選びの判断材料になっています。

もうひとつ気になったのが、「将来転勤の可能性があることが理由で、転職を考えたことがある」人が39.7%いたことです。実際に転勤を命じられたわけでなくても、”いつか転勤があるかもしれない”という不確実性そのものが、人を外に向かわせる引き金になり得る。採用の入口だけでなく、いま働いている人の定着にも関わってくる話だと感じます。

KEY DATA
就業先決定時に転勤の有無を考慮する
77.3%
転勤の可能性を理由に転職を考えた
39.7%

誰が、なぜ「転勤あり」を避けるのか

「転勤を避けたい」と一口に言っても、その強さは属性で差がありました。全体68.8%に対して、女性は84.0%、20代は76.0%と高め。逆に男性は63.4%で、相対的には抵抗が弱めです。中途で若手や女性の中核人材を狙いたい会社ほど、転勤の見せ方が母集団に効いてくる、と読めそうです。

IMPACT MAP
女性84.0%
 
20代76.0%
 
全体68.8%
 
男性63.4%
 

避けたい理由のトップは「転居にお金がかかる」で47.9%、20代に絞ると57.9%まで上がります。キャリアや家庭の事情はもちろんですが、まず引っかかっているのは”生活が変わることのコスト”のようです。ここは裏を返せば、支援でカバーできる余地がある、ということでもあります。

一方で、企業側の実態も見ておきたいところです。採用担当者に聞くと、転勤の可能性がある企業は66.9%(全員が対象21.5%+一部が対象45.4%)。つまり「避けたい候補者7割」と「転勤ありの会社3社に2社」が、いまの採用市場で向かい合っている構図です。制度をすぐに変えるのは難しくても、伝え方を変えるだけで印象は動かせる、と考えてみたいと思います。

「転勤あり」でも選ばれる、見せ方のヒント

大事なのは、転勤を”避ける”より”具体化する”ことかもしれません。募集要項でよく見る「全国転勤の可能性あり」は、候補者からすると範囲も頻度もわからない不安の塊に見えます。逆に、どのエリアで・どのくらいの頻度で・どんな支援があるのかまで書かれていれば、同じ「転勤あり」でも受け止め方はずいぶん変わります。実際、転勤を受け入れる条件として挙がったのは、次のような項目でした。

FAQ
Q
求人票に「転勤あり」と書くと、応募は減ってしまいますか?
A
伏せるより、条件とセットで正直に示すほうが結果的に信頼されやすいと感じます。就業先を決めるとき転勤を考慮する人は77.3%。書かずに入社後へ持ち越すと、早期離職やミスマッチにつながりかねません。範囲・頻度・支援まで具体化するのがポイントです。
 
Q
「転勤なし」にしないと、もう採れないのでしょうか?
A
必ずしもそうではなさそうです。受け入れる条件は「基本給が上がる」47.4%、「毎月の手当が充実」44.7%、「転居費用の支援」35.8%が上位。対価や支援があれば受け入れる層もいます。全廃より、支援の明示やエリア限定勤務などの選択肢提示が現実的かもしれません。
 
Q
とくに転勤を避けるのは、どんな層ですか?
A
女性84.0%、20代76.0%が全体(68.8%)より高めでした。20代は「転居にお金がかかる」57.9%と経済面の懸念が強く、若手・女性の中核人材を狙うなら、金銭・生活面の支援を前面に出す設計が効きそうです。
 

ちなみに、企業が転勤制度を残す目的のトップは「人員調整」で48.7%、取り入れている施策のトップは「リモートワーク」53.8%でした。目的をリモートや異動ルールの工夫で代替できないかを一度点検してみると、「そもそもこの職種に全国転勤は必要だっけ?」という問いに戻れることもあります。制度そのものと、求人での見せ方。この二つは分けて考えると整理しやすい気がしています。

C
Coachers編集部
HRブランディングの観点から

転勤の話は、突き詰めると「候補者は不確実なものを嫌う」というシンプルな心理に行き着く気がしています。避けられているのは”転勤”そのものというより、範囲も頻度も支援も見えない”わからなさ”のほう。候補者が生成AIや口コミで念入りに企業研究をする今、曖昧な一行はマイナスに解釈されがちです。

ここはHRブランディングの視点がそのまま効く場面だと感じます。求人原稿で「転勤の可能性あり」を、エリア・頻度・手当・転居支援・本人希望の考慮といった具体に開いていくだけでも、”隠しごとのない会社”という印象は伝わります。同じ条件でも、正直に設計された募集要項は、それ自体が誠実さのメッセージになります。

わたしたちCoachers自身も、制度を変える前にまず”見せ方”から手をつけられないかを考えるようにしています。転勤は多くの会社にとってすぐ廃止できるものではありません。だからこそ、伝え方の解像度を上げることが、いちばん早く着手できて、いちばん候補者に届く一手なのかもしれません。

ACTIONS
「転勤の可能性あり」を具体に開く
エリア・頻度・対象範囲・本人希望の考慮まで、募集要項に一段くわしく書き足してみる。曖昧な一行が、候補者には最大の不安に見えている。
 
支援メニューを言葉にして載せる
転居費用の負担、赴任手当、住宅補助などがあれば求人に明記。「基本給が上がる」47.4%など、受け入れの条件は待遇の見せ方で応えられる部分がある。
 
「その転勤、本当に必要か」を職種ごとに点検
制度の目的が「人員調整」なら、リモートやエリア限定勤務で代替できないかを職種単位で検討。募集条件の選択肢が増えれば、母集団も広がる。

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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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